ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

グラフィックを省いてゲーム内容をグレードアップしたPC-8001版『幻魔大戦』

大友克洋氏が手がけたイラストが、パッケージに使われています。裏面には、ゲーム中で使われる画面写真が掲載されています……が、“この画面はFM-7でとったもので、機種によっては画面が異なります。”との注意書きがありました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、1983年3月12日に映画封切りと同時にポニカから発売されたロールプレイングアドベンチャー『幻魔大戦』を取り上げました。

当時の広告では「角川映画のメッセージをPONYCAソフトが受け止めた。日本初!映画封切と同時発売」とのキャッチコピーを謳っていました。プログラムに関しては「BASIC+マシン語」と書かれているのですが、マニュアルに“使用言語:BASIC”と記されていたのを見て、ちょっとガッカリしたものです(笑)。

 1980年代、数多くのマイコン・パソコンが市場へと送り出されると、多数のソフトも登場します。アーケードゲームを勝手に移植したものからオリジナル作品まで、その種類は千差万別でしたが、“日本初!映画封切と同時発売”とのキャッチコピーで1983年3月12日にポニカから発売されたのが、映画『幻魔大戦』を元にして作られたパソコン版『幻魔大戦』です。

 当時の月刊誌『ログイン』1983年5月号では、本作の紹介文として「映画の公開にあわせて、文庫本やレコード、ビデオ・カセットがそれぞれ連動する角川商法に、今度はゲームソフトが加わったわけだ(後略)」と、辛辣な書き方をしていました(笑)。なお、本作はFM-7やPC-8801、MZ-1200など多機種でリリースされていますが、それらのプログラミングを行ったのは元ログイン誌編集長の高橋ピョン太氏こと、高橋義信氏です。そんな本作のストーリーは、以下のように書かれていました。

タイトル画面に続いて、諸注意と題した文章が表示されていきます。機種のスペックを考えればやむを得ないのですが、書いておかないと怒る人がいたのかもしれません?

 宇宙規模の敵である“幻魔”の魔の手が銀河系に伸び始めた現代、トランシルバニアの王女ルナ姫は宇宙の善意識とも言えるフロイによって選ばれ、幻魔と戦う任を受ける。彼女の力により、それまで平凡な高校生だった東丈は、超能力が使えるサイオニクス戦士・サイオニクサーとして覚醒。さらに、全世界でも次々とサイオニクサーが誕生する。幻魔は彼らを死へと追いやるためにサイオニクサー狩りを行い、各地で戦いが発生。その戦闘はついに、ハルマゲドンへと向かう……

 プレイヤーはサイオニクス戦士たち全員を脱落させることなく、富士山での決戦に集結させるようゲームを進めていきます。基本的な物語は映画版とほぼ同じで、マニュアルにも「このゲームのストーリーは、角川映画「幻魔大戦」にもとづいています。映画のストーリーを、ひとつのヒントとお考え下さい。なお、平井和正原作の「幻魔大戦」は角川文庫より発売されています」と書かれていました。

ゲーム中のメイン画面です。画面は左上にパーティを組んでいるキャラクター達のステータスが表示され、その右側には敵や登場人物のデータが記されるなど、ちょっとしたRPGテイストを醸し出していました。

 今回使用しているのはPC-8001版ですが、ロードが終了するとタイトルが表示された後、言い訳の文章から入るのが斬新なところです(笑)要約すると、「他機種のようなグラフィックは表示出来ませんが、そのぶん他の要素で面白くなっています」という説明なのですが、そもそもグラフィック面での表現が難しい機種へと移植してくれただけでも、当時としては有難いことでした。

 ゲームジャンルはアドベンチャーですが、基本的には“誰が戦うか”と、“はい・いいえをyかnで答える”だけで進んでいきます。極端な言い方をすれば、後の時代に登場するサウンドノベルやビジュアルノベルの、サウンド・ビジュアルが無いバージョンとも表現出来るかもしれません。2カ所のみ、数値を入力しなければならないシーンがあるのですが、そこは記憶力がものを言うので、登場人物のその時点でのパラメータを憶えておく必要があります。

ゲーム中には、このような感じで質問が飛んできます。y/nで答えたり、戦うキャラクターの番号を入力するだけなのですが、どちらを選んでもゲームオーバーになる時は、かなり手前まで戻ってやり直す必要がありました。ゲームの途中経過をセーブしたりロードすることで出来ないので、エンディングまで進むためには正解の手順をメモっておく必要があります。

 ストーリーは、戦う人物に誰を選んだのか?選択肢にyとnのどちらで答えたか?によって分岐が発生し、それぞれのツリーに沿った物語が展開していきました。もちろん、選択肢によってはゲームオーバーになる未来しか存在しない場合もありましたので、映画を観てヒントを得るか、何度もプレイして間違いルートを地道に潰していかなければなりません。

 時々、敵の幻魔と戦わなければならないシーンも出てきますが、そこでダメージを受けてしまうと最終決戦直前でゲームオーバーになってしまうので、それも避ける必要があります。とはいえ、そのあたりには乱数も関わってくるので、実際は運を天に任せて見守るしか無いわけですが……一度最後までの手順を憶えてしまえば簡単にクリア出来るので、ダメージを受けた場合はすぐにゲームオーバーになってやり直すのが、エンディングへの近道となります。

選択肢で正しい方を選ぶと、このような感じでステータスがアップすることがあります。このあたりを模して、ジャンルに“ロールプレイングアドベンチャーゲーム”を付けたのかもしれません。

 本作発売から約1カ月後の1983年4月2日午後9時から、フジテレビ系列の『ゴールデン洋画劇場』にて映画『ハッピーブッシュマン』が放映されるということもあり、ポニカは広告で“ゲームを解くカギは映画にある!”と打ち出し、『幻魔大戦』と共に『ブッシュマン』もプッシュしていました。以後、ポニカは映画を元にしたゲームを、この2作品以外にも数多くリリースしていくことになります。

最終シーンの開始直後には、こんな質問も。nと答えると“デハ モウ ヤメマショウ!”と表示されてゲームオーバーに……

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