ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

ロングセラーとなったハドソンソフトの『野球狂』

この時期のハドソンソフトとしてはお馴染みの、全機種共通のパッケージが使われています。異なるのは、タイトル左側に貼られた機種シールのみでした。月面らしき地面のクレーターに公式ボールがすっぽりと入っていて、左上には選手の下半身が描かれるという不思議な構図になっています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、この時期にハドソンソフトがシリーズ作品としてリリースしていた「**狂」の中の1本、『野球狂』を取り上げます。

詳細な発売日は不明でしたが、月刊『ログイン』1984年11月号のソフトランキング記事ページ内に、神戸のお店で「8月売上」という表記の元でランクインしていました。そこから考えると、リリースされたのは1984年7月から8月にかけてのようです。この後、月刊『ログイン』での売上ランキングに1年以上掲載されるロングセラー商品となりました。

 いつの時代も野球を題材としたゲームは一定の人気があるようで、マイコン・パソコンが市場へ登場すると、タイミングを同じくしてさまざまな野球ゲームが発売されました。1980年代前半の野球ゲームは、どちらかというとシミュレーション要素が強めの作品が多かった印象がありましたが、そんな中で1984年初夏にハドソンソフトから発売された大ヒット野球ゲームが、今回取り上げた『野球狂』です。野球ゲームなのでストーリーなどはありませんが、マニュアルをめくると「部屋はホーム・グラウンド」と題した以下のような導入メッセージが書かれていました。

 まるで、テレビの野球中継みたい! 選手も審判も本当の試合みたいに動く、こんなゲームは初めてだ。手順は簡単。まず、自分の好きなチームの選手それぞれの打率や守備率などのデータを入力。次に、対戦チームのデータも同じように入力。チームは、プロ野球でも高校野球でも、もちろん草野球だってOK。ものぐさ人間にもコンピュータにデータが入っているので、即プレイOK。あとは、選手がデータ通りに動いてくれるので、コンピュータ同士戦わせたり、コンピュータと自分で対戦したり、友だちと2人で試合をしたり、遊び方はさまざま。僕だけのオールスター戦なんて組み立ててみたら、きっと面白いと思うよ。

広告では、「ジャイアンツのかたきは、僕がうつ。」とのキャッチコピーで掲載されていました。月刊『マイコンBASICマガジン』1984年12月号には、「作者自身が「野球狂」を<広告>します。」と題して、どのような感じで本作を制作したのかを語っています。プログラマは川口佳之さんで、北海道北見柏陽高校出身の21歳(広告掲載時)とのことでした。

 ゲームが起動すると、画面には1PLAYER(1人用)、2PLAYERS(2人用)、COMPUTER(観戦用)、EDITORの4種類のメニューが表示されます。1人用は相手をコンピュータが担当し、2人用なら人間vs人間で、それぞれ対戦が楽しめるだけでなく、COMPUTERを選べば見ているだけでゲームが進んでいきました。

 タイトル画面でEDITORを選択すると、自分の好きなように選手データを変更して楽しむことができます。名前や打率、守備率、守備位置など、設定は自由自在。変更する際に資料として使えるよう、プロ野球10球団の選手データが書かれた紙が同梱されていました。そのデータを参考に入力するもヨシ、理想のデータを打ち込んでしまうのもアリ。もちろん、最初からオールセントラルとオールパシフィックチームのデータが入っているので、面倒くさい場合はいきなりゲームを始めることも可能でした。

パッケージ内には、当時のセパ両球団から10チームの選手データが記された紙が同梱されていました。なぜ、パ・リーグの近鉄バファローズ(当時)と阪急ブレーブス(当時)が掲載されていないのかは不明です。名前を見てみると、クロマティやサダオカ、コマツ、ワカマツ、マユミ、レオンなどの懐かしい名前が見られます。ゲームの操作方法はマニュアルに詳しく書かれていて、ほぼテンキーだけで完結するようになっていました。

 試合が始まると、コンピュータがランダムに先攻と後攻を決めて表示します。攻撃側が使用するのはスペースキーと、テンキーの4、6、8のみ。スペースキーは、押し方でスイングとバスター、バントが出るようになっています。また、出塁したときにはテンキーの4、6、8を押すことで盗塁もできました。打者の立ち位置を変更したりはできませんので、基本的にはピッチャーの投げるボールをベストタイミングでスイングすればOKという、非常にシンプルなバッティングとなっています。

タイトル画面はシンプルですが、PC-8001mkII版やPC-8801版でサウンドボードを搭載していると、PSGでオープニングミュージックが奏でられました。BGMが流れるだけで、いきなり面白く思えてしまうのも当時の不思議でした。

 守備側は、主にピッチャーとしてのプレイとなりました。投球は、テンキーの5を除く1から9までがそれぞれ球種と早さに対応していて、1度押すと球種を、そして2度目に押したときに早さが選ばれボールが投げられます。現実では、ピッチャーによって球種が決まっていたりしますが、ゲーム内ではどんな選手でもストレート・フォーク・カーブ・シュートを投げることができました。なお、ランナーが出た場合はテンキーを2度押さずリターンキーを叩くことで、牽制球を投げることもできました。こうして回を重ね、最終回が終われば試合終了です。同点の場合でも延長戦は行われず、引き分けとして処理されました。

プレイヤーの攻撃時には、相手ピッチャーが投げてくる球種を見極め、タイミング良くスペースキーでバットを振ります。送りバントなどもできますので、リアル感もマシマシでした。7回になるとLUCKY7と表示されたり、ホームランが出れば電光掲示板に贅沢な演出が表示されます。

 X1やFM-7といったPSG音源を搭載している機種では、オープニングやホームラン時にちょっとしたBGMが流れますが、PC-8801シリーズやPC-8001mkIIでもGSX-8800またはPC-8801-10を拡張スロットに搭載すれば、同じように曲を効くことができました。

守備時には、主にピッチャーを操作することになります。塁にランナーを出してしまったときは、牽制球で刺せばOK。守備はオートで行われますが、ボールをキャッチした後にどこへ投げるかの指示を出さないと、相手のランナーが走り放題に!?

 『野球狂』はこの当時としては大ヒットとなり、発売から1年ちょっとほど月刊『ログイン』の売上ランキングに掲載されています。そのためか現在でもオークションやフリマサイトでよく見かけますので、機会があればぜひ遊んでみてください。1984年のプロ野球で活躍していた選手達の名前を見て、思わず懐かしい気持ちになれるかもしれません。

タイトル画面でEDITORを選択すると、このようなエディット画面に入ります。ここで選手名や守備位置などを変更することができるほか、そのデータをカセットテープやフロッピーディスクに保存することもできました。この2枚が、ソフトに収録されているセパ両チームの初期データです。

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