ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

二人同時プレイが楽しめるハイパーアクションRPG『九玉伝』

ちんねんが妖怪たちの中を走っている様子が描かれたパッケージイラストになります。なぜか、相方の“そんねん”の姿が見あたらないのが可愛そうなところです(笑)。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、テクノソフトがハイパーアクションRPGと銘打って発売したタイトル『九玉伝』です。

 テクノソフトと言えば、初期は『2001年宇宙の旅』や『ウォーク・ワン』、その後に『プラズマライン』『サンダーフォース』などをリリースした有名なソフトハウスですが、RPG全盛期の1986年11月に発売したのがハイパーアクションRPG『九玉伝』です。最初に登場したのは、FM77AVの機能を活かした高速スクロールがウリのFM77AV版で、今回取り上げたPC-8801mkIISR版は、その後に市場に出回りました。

「見たかこの色! このスクロール!」というキャッチコピーが書かれていた『九玉伝』の広告です。最初にFM77AV版、PC-8801mkIISR版、X1版が発売され、後にPC-9801版、MZ-2500版、MSX2版が登場したのが分かります。

 九玉伝とは、日本古事に記されてあった謎の伝説。「人の世と開く了解をさえぎる九つの玉。この九玉の封印がとけたとき人の世に魑魅魍魎がはびこるだろう。」その封印が悪霊界の王・龍鬼によって破られてしまい、人の世には伝説通りに妖怪や魔物が徘徊し始める。そんななか、満福寺で立派な坊主になるための修行中だった二人の小坊主兄弟“ちんねん”と“そんねん”が村へ使いに出ると、悪霊界から出てきた妖怪どものために村は大騒ぎだった。そこで二人は九玉の封印を元通りにすべく旅立ったのだが……。

 本作は、パソコンゲームとしては珍しい二人同時プレイが楽しめる点が特徴でした。その場合はプレイヤー1はちんねんを、プレイヤー2はそんねんを、それぞれ操作します。画面内にはお墓や家などがあるので、障害物を避けつつ出現する妖怪などに攻撃を当てて倒し、マップ内を探索しました。2人プレイの時は障害物に引っかかりやすかったり、お店や地下入口に片方が入るだけではダメなので、なるべく2人で一緒に行動することが望まれます。

ステージ1は、寿村から始まります。ただ単に歩き回るだけでも広いのですが、さらに各所に仕掛けが施されているため、探索は見た目以上に苦労します。テンキーの2468で、それぞれの方向にアイテムを撃てますが、キーを2つ同時押しすれば斜め方向へも攻撃可能です。一反木綿やカラカサオバケ、カラス天狗など、さまざまな妖怪たちが登場します。

 “ちんねん”“そんねん”の攻撃方法は、基本は標準で装備している数珠でした。これを発射して妖怪たちを倒すと時々アイテムを落としていくので、それらを回収すれば更に有利な戦いを繰り広げていくことができるようになります。ゲット出来るアイテムには、数珠を8方向に撃てるように鳴る八方弾や、使うと地下洞窟を明るく照らしてくれるちょうちん、妖怪が一定時間動けなくなるホラ貝など、さまざまな種類がありました。これらの力を借りつつ、広大なマップを探索していくことになります。なお、八方弾などの攻撃アイテムは一定時間で切れてしまうので、あまり調子に乗っていると痛い目に遭うことも……。

妖怪を倒すと、さまざまなアイテムを落としていくことがあります。お金は商店で買い物をする際に、他のアイテムは通常の数珠以上の強さを発揮することも。

 妖怪達を退治しアイテムを回収していくと、主人公達は少しずつ成長していきます。攻撃キーを連打していればダメージを受けることもほとんどなく妖怪を倒せますので、そういう意味での難易度は低いかもしれません。ただし、各ステージともにマップがとんでもなく広大なので(画面数に換算すると、全部で1000以上!)、そういう意味ではなかなかに手強い相手でした。もちろん、先のステージへ進めば数珠1発で倒せない相手も出現するので、その場合は攻撃キーを連打する必要があります。あまり酷使すると、キーを壊してしまうことになるので注意しましょう(笑)。

さまざまな場所にある地下への入口を入ると、洞窟内に。真っ暗なので、ちょうちんを使うと明るくなります。所によってはヒントがもらえたり、お店屋さんだったり?

 ステージは寿村からスタートして悪霊山、緑ヶ原と進んでいくのですが、フィールドがスクロールするためにマッピングがしづらいうえ、広すぎて書くのが難しいのが悩ましいところです。しかも、“特定の墓石”に“特定の方向からぶつかる”と墓石がずれて入り口が現れたり、何の気なしに民家に突撃すると地下洞窟へと移動するなど、謎の隠し方も80年代らしいものでした。今ならば、スマートフォンで録画しながらプレイすれば、ある程度苦労を軽減できそうです。

一見、何でもなさそうに見える墓石が、こちらから押すと右の写真のようにずれて入口が現れたりするので、見えるものすべてが疑わしくなってきます(笑)。

 そんな難局を乗り越えて先へ進むとボスと出会いますので、それを倒して玉を回収すれば1ステージクリアとなります。九玉伝というくらいですから玉は9つあるわけですが、マップの広さを考えるとそれはそれはもう、とても長い時間遊べるゲームとなっていました。当時は筆者を含めクリアしたという話を聞かなかったのですが、収録されているボリュームはたっぷりなので、夏から秋の夜長に遊ぶにはちょうど良いかもしれません。ちなみに、今回使用したPC-8801mkIISR版をプレイしていて気がついたのですが、インターネット上で見られるFM77AV版のマップとは地形が違っていました。どうやらPC-8801mkIISR版で進めて行く場合は、自力でマッピングする必要がありそうです。

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