ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

ブローダーバンドのピンボール『David's Midnight Magic』、システムソフトが国産PCに移植

青地に、目立つオレンジのロゴとバック地、そして盤面から飛び出すボールが印象的なイラストです。オリジナル版の作者・David Snider氏の名前も記されていて、そこからつけられたタイトルというのもわかります。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、システムソフトから発売されていたソフト『David's Midnight Magic(以下ミッドナイト・マジック)』です。

 アメリカのゲームセンターで目立つ筐体と言えば、ピンボール台があります。硬貨を投入し、限られた球数の中でスコアをどこまで伸ばせるかに挑戦するのですが、このピンボールの魅力を「スクリーン上に本物以上のリアルさで再現した(パッケージより)」のが『ミッドナイト・マジック』です。『チョップリフター』や『ロードランナー』と同じくブローダーバンドソフトウェアのタイトルで、システムソフトが国産PCへと移植しました。

1983年11月号の雑誌広告でブローダーバンドソフト3作品移植の告知を行い、12月号では『ロードランナー』、1月号にて『チョップリフター』、そして2月号に掲載した広告が、この『ミッドナイト・マジック』でした。

 本作のルールは単純明快で、右下のプランジャーから打ち出されたボールを上下段それぞれに1組ずつあるフリッパーで落とさないように打ち返し、高得点を狙うというものです。通常のピンボールゲームは下段左右にフリッパーがあるのですが、『ミッドナイト・マジック』では上段にも設置されていて、2カ所でボールをさばくことになります。

 盤面上部の左側にある“ボール溜まり”と呼ばれる部分には、入ったボールがストックされます。ここに3個ボールが入るとすべての珠が開放され、マルチボールプレイがスタート! ピンボールをプレイしている中で最も慌ただしく、そして最も興奮する時間となります。まずはそれを狙うのが、順当な攻略手順でしょう。

フィールドは非常にシンプルで、中央部分で上下に分かれています。画面上部でプレイするのが高得点の秘訣なので、下半分にボールが来た時は、左上のランプレーンを通すか、上側フリッパーの間を通して上半分に戻すことを狙いましょう。

 左上に見えるランプレーンの赤い点は上を通ると得点がプラスされるほか、ボーナスポイントが+1となります。また、各所に設置されている緑や赤といった板状のオブジェクトも、すべて倒すとボーナスが追加されるので、そこでボーナスポイントを稼ぐのも重要に。貯めたボーナスポイントは、落球時にポイント数×1,000点がスコアに加わるため、なかなかバカにはなりません。

 さらに、実機ではキャビネット部分だけをゆがめるハギングや、台を奥に突くナッジングなどの動作でボールの軌跡を少しだけ変えることができますが、それと似たようなシステムとして本作には“TILTキー”が設定されています。スペースキーを“チョン”と叩くことでフィールドがわずかに揺れ、ボールに勢いが付いたり向きが変わることができました。しかし、押しすぎると実機と同じく“TILT”となってしまい、そのボールでの遊技が終了に……。まさに諸刃の剣ですが、実際は使いこなすのが非常に難しいテクニックなので、実機で効果的に実行できればピンボール上級者といえるかもしれません。

左上のボール溜まりにボールを3つ貯めるか、または上部フリッパーの左側、その下にある穴に矢印が表示されている時にボールを入れるなどの条件を満たすとマルチボール開始です。闇雲にフリッパーを操作してもうまくいかないので、1つのボールをホールドしつつほかのフリッパーでボールを跳ね返す、といったテクニックを駆使する必要があります。

 初心者はフリッパーを滅茶苦茶に操作したり、ボールが落ちてくる時に焦って両方のフリッパーを上げるダブルフリップをやらかしますが、ボールの動きをよく見て対応するフリッパーだけを操作するようにすれば、一気に点数が跳ね上がるはずです。それができるようになったら、フリッパーの根元でボールをキープするホールドなどのテクニックを練習してマスターしていけば、よりピンボールが面白くなっていくかと思います。

通常のソフトは、テープからのロード中は特に動きの無い画面しか表示されなかったりするなかで、ロード中に1文字ずつ出現するPC-8001用『マリオブラザーズ』や、テープの“ガガガ”音と共にタイトルが描画されるPC-8001mkII用『ロードランナー』などと共に、ここに載せた“テープからのデータロード中に動くタイトル画面”に当時は驚かされました。

 本作は、登場したのが1984年と言うこともあり、フィールドに配置されたギミックはあまり多くなく、またボールの挙動もリアルそのものというわけにはなっていません。それでも、この時代にリリースされたピンボールゲームとしては十二分に面白く、左フリッパー操作キーの“Z”と、右フリッパー操作キーの“_”が遊びすぎて大変な事になった! という話を耳にするほどにはヒットしたようでした。

 システムソフトはこの時代にブローダーバンド作品を3作移植しましたが、残りの1本となる『チョップリフター』については、近いうちに取り上げたいと思います。

実機でのロード開始からプレイ中までを、動画にしてみました。テープからのロードですが、途中をカットしたため、あっという間にゲームが始まっています。しかし、実際は5分程度のロード時間があります。ロード中に表示されている、動くタイトル文字はこのような感じでした。

ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち 連載一覧