ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

滑らか縦スクロールアクション『空間浮遊都市ゼノン』

主人公機が、ゼノン内を進んでいく姿が描かれたパッケージイラストとなっています。裏面には、ストーリーを一部抜粋したものと、画面写真が掲載されていました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、マイコンソフトから発売された呉英二さん作のアクションゲーム『空間浮遊都市ゼノン』となります。

広告には、パッケージのイラストがそのまま流用されています。使用されている画面写真やストーリーの説明部分はパッケージ裏と同じなので、同一素材でページが作られたようです。

 1980年代前半は、パソコン雑誌を発売していた出版社がオリジナルソフトを募集し、審査の後にそれを誌面に掲載するというコンテストを行っていました。そのうちの1冊に、電波新聞社が発売していた雑誌・月刊『マイコン』があります。その誌上で募集が行われた、“第1回マイコンソフトウエアコンテスト”に、『ファーストクイーン』や『エプシロン3』などでお馴染みの呉英二さんが応募した作品が、今回取り上げた『空間浮遊都市ゼノン』です。

 本作はプログラムリストが、1983年11月18日に発売された月刊『マイコン』12月号に掲載されて、同タイミングでテープサービスが始まりました。それらを考えると、発売日は雑誌刊行日と同じ1983年11月18日で問題ないかと思われます。また、パッケージ内にはロード方法と操作方法が書かれた紙だけが同梱されていて、ストーリーはパッケージ裏に掲載記事からの抜粋という形で一部しか書かれていないため、大まかに要約したものを以下に記載しました。

縦にスクロールする画面を舞台に、敵にやられないよう進んでいくのが目的となります。壁の中には入ることができるので、そこを利用して進むのも手です。

 超近代化指定都市、コンピュータ・シティNo.105ゼノンで事故発生との一報が、チーフの耳に届く。ゼノンは、完全組織化・完全合理化を目指した空間浮遊都市で、これにより住人1千万人のうち8割以上が死亡したという。事故はマザーコンピュータによって仕組まれたもので、目的は人間の抹殺。そう話すチーフの言葉に耳を傾けるのは、ダン・ニキ・サガの3人の戦士たち。彼らはチーフの命により、マザーコンピュータを破壊すべく金属製の戦闘スーツに身を包みゼノンへと出撃した。

 設計図によると、ゼノンは有事の際を想定して完全武装が可能な都市として建設されたとのこと。そのため、窓に見えている場所からミサイルが飛んでくるということは当たり前で、警備用のロボットも今や当たり前のように襲いかかってくるという。それを見越してのスーツ装備だったが、敵はそれを貫通してダメージを与える、自分たちと同じ銃・ニードルガンで攻撃してきた。

 ニキがミサイルの餌食になり、親友を失ったダンは敵に突っ込み、戦闘ロボット2台を道連れに奈落へと落ちていく。最後に残ったサガは冷静に、確実にマザーコンピュータへと近づいていくが、敵が設置した高電圧球によって力尽きてしまう。その模様を本部で見ていたチーフは嘆きながらも、あなたに最後の望みを託した。

敵はトリッキーな動きをしてくるわけではありませんが、数が多く弾幕も激しいので、避けるのも苦労します。自機のニードルガンは、弾速は速いものの1発しか撃てないので、なるべく狙っていきたいところです。

 プレイヤーは主人公としてゼノンに乗り込み、最深部に位置するマザーコンピュータを破壊するのが目的となります。自機の移動はテンキーの2、4、6、8でそれぞれ前後左右に、2つを同時に押せば斜めにも動きます。スペースキーを押すと自機の向いている方向にニードルガンを発射するのですが、画面内には1発しか出せません。

 攻撃方向には少々クセがあり、2や8を押しながら4または6も入力することで、右上や右下、左上や左下に移動しつつもニードルガンを撃つ方向は正面をキープしたままにできます。さらに、自機は右手にニードルガンを装備しているので、上手に狙うことで敵弾をすれすれで避けつつも攻撃を当てることが可能でした。これら2つのテクニックを駆使できなければ、マザーコンピュータにたどり着くことはできないでしょう。

自機は右手にニードルガンを装備しているので、左側の敵に対しては有利に戦うことができます。反対に、右側の敵を狙うときは自機の身体が半分ほど敵の射線上に晒されるので、非常に危険です。

 左右の建物内は穴の部分から入ることができて、そこから窓に設置されているミサイルを破壊することができます。ただし、スクロールに潰されてしまえばミスになるので、その前に脱出しなければなりません。敵は、あらかじめ設置されている黒い通信ステーションや四角形の交通管制機などのほか、戦闘ロボットや壁にぶつかって跳ね返りながら襲ってくる浮遊監視器などが次々と現れ、プレイヤー機を攻撃してきます。挙動は大人しいのですが、一度に多数の敵が出現するときなどは、倒す順番を間違えると簡単に追い詰められてしまうので、プレイヤーの腕が試されるのでした。

 中央に穴の空いたアーチをくぐるとエリアの一区切りとなり、以降はミスをするとその場所からのやり直しとなります。また、初期設定ハイスコアである2万点を超えると自機が1機追加されるので、なんとしてもその点数は超えたいところ。

道中には地面に穴のようなものが空いている場所もあり、そこからはみ出るとミスになります。また、青い構造物は1キャラ以内に入ると電気を発してきて、その影響を受けると自機は爆発してしまうことに。

 PC-8801というマシンでもスムーズにスクロールするのが、当時としては非常に驚いたのを覚えています。同時期にはエニックス(当時)から『アルフォス』がリリースされていますが、それと比べても遜色のない滑らかさと言えるのではないでしょうか。

 今回取り上げたのはPC-8801版ですが、後にPC-8801mkIISR対応版が発売されたほか、「ZENON II」を冠した続編『ガンマー5』も発売されていますので、そちらもまた別の機会に取り上げたいと思います。

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