ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

難易度が大幅にアップした王子の冒険譚『キャッスルエクセレント』

パッケージのイラストは、前作と同じくめるへんめーかーさんが担当しています。今回はお姫様が大きく描かれ、妖精がいなくなっています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、1985年4月に発売された『ザ・キャッスル』の続編となる、難易度が大幅に上昇した『キャッスルエクセレント』となります。

広告は、最初に登場したFM-7版の発売日が書かれたバージョンと、マルガリータ姫の部分から機種名や日程が消えて“新発売”の記述になったバージョンなどがありました。

 固定画面のパズルゲームというのは、派手な動きはないものの思考力が試されるということもあり、パソコンゲームの初期からさまざまな作品が登場していました。1985年4月下旬に登場した『ザ・キャッスル』も、そんなタイトルの1本でしたが、少々違っていたのは100部屋を含めたパズルとして1部屋ずつをクリアしていかなければならない、というところです。それでも、それなりの数のユーザーからクリア報告が届いたということで、これを受けて難易度を大幅にアップした続編として1985年11月15日に発売されたのが、今回取り上げた『キャッスルエクセレント』です。

 今作は、「迷路全体を非常に複雑なパズルとして作りました。どうぞ、アスキーからの挑戦を受けてください」とマニュアルには書いてあるほど高難易度を謳っていました。雑誌「月刊LOGiN」1986年2月号に掲載されたレビューコーナーには、1週間かかって16部屋しかクリアできなかったとまで記されていたことからも、その難しさが分かるというものです。

 そんな本作のストーリーは前作とほぼ同じではあるものの、『ザ・キャッスル』の記事では記述していなかったので、ここに記載しておきます。

最初の部屋ですが、マップが見えているにもかかわらず、取るには果てしなく遠い道のりをたどる必要があります。その前に挫折してしまう人も!? 2枚目の写真のように、何とか上の部屋から降りてくることができれば、あなたもキャッスル初心者クリア!

 これは、この世がまだ剣と魔法の力で動かされ、男には愛の証として知恵と勇気が求められていた頃の話である。多くの民から敬われ、そして慕われていたマルガリータ姫が、グロッケン城に住む魔王メフィストに連れ去られてしまった。彼女を救おうとして若者たちがこの城の中に入ったのだが、そこには魔王の手下達や数多くの仕掛けが待ち受けており、誰1人として帰ってくる者はいなかった。

 そんなある日、隣国の王子ラファエルがこの街へやって来た。彼は決して大男でも、武にたけているわけでもないのだが、全身の勇気を奮い起こし魔王の城に挑もうというのだ。古くからの伝説によると、この城の中にはお姫様だけでなく、森の妖精達もとらえられているという。妖精達さえ味方にすることができれば、このチビでひ弱な王子にもマルガリータ姫を助けるチャンスが得られるかもしれないのだが……。果たしてラファエル王子はマルガリータ姫を助けることができるのであろうか。

トゲのような障害物は、ほんの少しでも触れればミスになります。エレベーターに潰されてしまってもダメなので、あちこちで慎重な操作が要求されますが、筆者が今回使用したFM-7版は5キーを押さないと王子が止まらないため、それも相まって最高難易度になっていました。

 プレイヤーは前作と同じく王子ラファエルを操作し、お城のどこかに捕らわれているマルガリータ姫を助けるのが目的です。城は全部で100の部屋からなり、各部屋を分けている扉を開けるには同じ色のカギが必要となります。王子は最初、5つの命を持っていますが、魔王の手下達に襲われたりエレベーターに挟まれたりすると命が1つ減り、すべての命を失うとゲームオーバーになるのでした。なお、お城の中には取ると得点になる宝物があちこちに落ちていて、1万点を超えるごとに王子の命が1つ増えます。

 王子はテンキーの4と6で左右に、BREAKキーでジャンプ、そして5キーで止まります。BREAKキーを押しっぱなしにしておくと、滞空時間の長いジャンプに、すぐに離せば小ジャンプになるので、これを上手に利用して各部屋を攻略していきましょう。

マップを取ると、画面情報に王子の現在地が表示されるようになります。それを目安にして、ノートなどに各部屋ごとの地図をしっかりと書き留めていくのが大事です。今ならば、スマホで撮影したものをパソコン上で並べていけば手っ取り早いでしょう。

 本作は100部屋もあるため、すぐにクリアすることはできないということで、ゲーム途中にセーブする機能がついていました。ただし、「この機能を悪用するとゲームが簡単になってしまいます」とマニュアルに書かれていて、難しそうな場面でセーブしておき、失敗したらロードしてやり直しということができないよう、セーブ時には「ペナルティとして王子の命が1減ってしまいます」という仕様になっていました。もちろん、残りの命が1つの時はセーブできないので、その場合は泣く泣く電源を切るか、1万点を超えるまでプレイしてセーブするかのどちらかを選ぶしかありません。

水中に入るには、酸素ボンベを取らなければなりません。するとBGMが変化し、その間は水に潜っていても平気な時間になります。もたもたしていると時間切れで溺れてしまうので、水中での行動はより素早く……。

 システムは前作と同じなのですが、100の部屋が複雑に絡み合ったパズルになっているため、現時点でうまくいっていても先に進んだ結果、失敗だったということが判明したりして、心が折れてしまうこともしばしば起きます。それでも「いつかはマルガリータ姫を助けて製作者の鼻を明かしてやる!」という意気込みがあった人だけが、無事にクリアできたのではないでしょうか。

 ちなみに、お膝元の雑誌「月刊LOGiN」にすら「半年たった今でもまだ前作が解けないという人は、やっぱりこの“エクセレント”は買わない方が身のためかもしれません」と、身内から「買わない方が」とまで書かれてしまったわりには、フリマサイトなどでは時々見かけるので、それなりの本数が出たのかもしれません。今ならばプロジェクトEGGにて配信も行われているので、のんびりじっくりマッピングをしながらプレイすれば、もしかするとクリアできるかも?

マニュアルには、赤羽美智恵さんによる暖かみのあるイラストが描かれているのですが、2つ折りでもすべてを開いた状態でも成り立つ絵になっていました。また、86年春にはキャッスルの登場人物達が活躍するRPGのような『キャッスルII』を発売する予定と書かれていましたが、残念ながら現在までリリースされていません。

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