ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

下ネタとギャグ満載の『新竹取物語』、ちょっと異色のアドベンチャー

パッケージには、かぐや姫たちが描かれています。グラフィックを担当したのは、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』にも名前が登場する、富沢千夏さんです。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、“リレーショナル・アドベンチャー・ロマン”と銘打たれたクロスメディアソフトの『新竹取物語』を取り上げます。

 アドベンチャーゲーム全盛期には、数多くのタイトルがリリースされました。単語探しを難しくしたものやコマンド選択式を採用した作品など各ソフトハウスが工夫を凝らす中、“道中に取った行動で得点をつけていき、その点数でクリアまでの腕前(?)を競う”という斬新なシステムで話題を呼んだのが、ビクター音楽産業株式会社のゲーム開発部門ブランド・クロスメディアソフトから発売された『新竹取物語』です。原作者は松本みつぐさん、プログラマがSPRING FIELD、画面デザイナーは富沢千夏さん、サウンドを美羅亜樹さんが担当していました。

ゲームだけでなく、広告もユニークな構成になっていました。高得点を得るための秘訣として、セイコさんとの会話が重要というヒントが書かれたものもあります。

 マニュアルにはストーリーが記されていない代わりに、以下のような文面が掲載されています。「このアドベンチャー・ゲーム『新竹取物語』は、5人のスタッフを中心に、構想から13カ月かけて制作された、日本で始めての本格的な作品です。グラフィック画面だけでも、6カ月を費やした意気込みを感じていただけると思います。(中略)約80個のあなたの行動や条件に対する情報を常に把握しながらゲームは進行していきます。経験度、健康状態、性別、レベルなどの相互の条件により、ストーリーは変化していきます。(中略)このような考え方から、「リレーショナル・アドベンチャー・ロマン」と名付けました」との記述を読むと、スタッフ一同が本作に並々ならぬ自信を持っていたことがうかがえます。

最初の場面では道が左右に分かれていますが、右は簡単なものの得点が稼げず、左は少々難しい代わりに得点を得られるというルートだったりします。また、この場面にも仕掛けが……。

 プレイヤーの目的は、かぐや姫を見つけること。道中は、特定の場面以外は謎を解かなくてもサクサク進むことができるため、初プレイでもあっさりかぐや姫に出会えるかもしれません。ユニークなのは、マニュアルにもあるように、プレイ中の行動一つ一つに点数がつけられている部分です。謎を放置してもかぐや姫に出会うことは可能なのですが、それでは100点に至らないことも……。さまざまな場面に挑戦し、それらを要領よくクリアすることが高得点を得るためのコツです。これにより、一度目は低得点だったとしても、二度目三度目とプレイ回数を重ねるごとに高得点を得るためのクリア方法を学ぶため、結果として“エンディングを迎えたらプレイ終了で二度は遊ばない”となっていた、既存のアドベンチャーゲームとの差別化に成功していました。

なぜか最初に渡されるアイテムがムチとロウソクだったり、ツバメとしてセイコちゃんと大人な会話ができたり、草原でヘビに噛まれるとおち×ち×が腫れる(笑)など、下ネタギャグが各所に仕込まれていました。

 システムは、当時としては一般的なコマンド入力方式を採用していますが、コマンドの入力方法をゲームスタート時にカタカナ・ローマ字・英語から選択できるようになっていました。ローマ字を選ぶと、入力が“GINKOU HAIRU”というようにカタカナ入力をそのまま打ち込めるため、思った以上に楽です。また、移動もカーソルキーで行うことができましたが、用いられた描画方法が少々遅いライン&ペイントだったため、画面を表示し終わるまで若干ながら待たされてしまうのが惜しかったところでした。

起動直後には、文字の入力方法とゲームの難易度を3種類から選べます。入力方法でローマ字を選択すると、ゲーム中は写真右のような感じでコマンドを打ち込んでいきます。

 ストーリーは、あちこちにおバカなお色気シーンが用意されていたりしたので、当時中高生だった人ならば面白おかしくプレイ出来たかと思います。しかし下ネタだけでなく、難易度としても歯ごたえある内容になっていたことが、当時としては高評価された理由だったのではないでしょうか。

 この後、クロスメディアソフトは続編として『新玉取物語』をリリースすることになります。

ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち 連載一覧