ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

たった1機のヘリで敵帝国に立ち向かうMSX版『バンゲリングベイ』

正方形パッケージを採用した『ロードランナー』などと同じく、この頃のMSX向けソニー製品ソフト共通の、商品棚にぶら下げられるフックの付いたものになっています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、1984年にソニーから発売された有名なシューティングゲーム『バンゲリングベイ』を取り上げました。

ブローダーボンド社から発売されていた3作品を順番に発売したので、広告もその流れで『ロードランナー』→『バンゲリングベイ』→『チョップリフター』と約1年に渡り掲載されました。『バンゲリングベイ』の広告では、「高得点をあげた人に、ソニーから名誉のメダルが与えられる」という企画も行われています。

 ソニーといえば、最初に発売していたパソコン・SMCシリーズ向けにブローダーボンド社のタイトルを販売していましたが、MSXへと舵を切るとそちらへもソフトをリリースするようになります。MSX向けとして最初に登場したのは1984年11月21日発売の『ロードランナー』ですが、1985年7月21日に市場へと送り出されたのが2番目の『バンゲリングベイ』でした。

 このときの宣伝文句は「あのロードランナーをつくった、ブローダーボンド社の大作、バンゲリングベイ。MSXになって、ソニーから誕生」でした。そのため、それに倣って今回の記事では“ブローダーボンド社”記述としています。なお、この後の9月21日には3本目『チョップリフター』も発売されていました。

 そんな本作のストーリーは、マニュアルによると以下のようになっています。

空母から発艦して、敵の秘密工場を破壊に向かいます。道中には高射砲やホワイトジェットなどが行く手を阻むので、バルカン砲で応戦して可能な限り破壊していきましょう。

 199X年、長い間その軍事力をたくわえて世界征服の野望をいだいていたバンゲリング帝国は、太平洋のバンゲリング湾にある島々の秘密工場で、ついに最終兵器を完成させようとしていた。この情報をいち早くキャッチした国連は、第1工作部隊の君に特命を与えた。それは、最新型の特殊武装「サンダーヘリ」を駆使して、帝国軍の秘密工場を全滅させ、最終兵器の完成を食い止めること…。

 そして今、君はただ1人、空母から出撃した。敵からの激しい対空砲火、ミサイルの嵐に機体がゆれ、手にしたスティックも汗ばんできた。バルカン砲で敵戦闘機を撃ち落とし、10キロ爆弾の雨で工場をたたきつぶせ!!栄光の勲章を目ざし、帝国の野望を打ちくだくまで、戦え!

フィールドは100画面分ととにかく広いため、最初のうちは全体マップを頭に叩き込むのが最優先となります。プレイ回数を重ねるごとに、脳内地図が完成して移動の精度も上がっていくでしょう。

 プレイヤーは自機のサンダーヘリを操作し、島に設置されている秘密工場をすべて破壊するのが目的となります。自機がヘリのため操作方法が少々特殊で、ジョイスティックまたはカーソルキーの上で前進・スピードアップ、下で後退・スピードダウン。左なら左旋回で、右は右旋回となっていました。

 ジョイスティックのボタン1またはスペースキーは、艦上で静止しているときに押すと着艦、ジョイスティックまたはカーソルキーの上を押しながら叩けば発艦に、飛行中に小刻みに押せばバルカン、1秒以上押し続けてから放すと10キロ爆弾を投下します。

 プレイフィールドは、見えている部分を1画面として、合計で100画面分の広さがありました。上下左右は繋がっているので、地球のような球体に浮かんでいる島々のどこかに、秘密工場などが配置されているということになります。その秘密工場は、爆弾を大量に落とすと破壊することが出来るのですが、ゲームスタート直後は数発で壊せるものの、時間経過と共に耐久度がアップしていくため、ダラダラ攻略していると破壊がより困難になっていくのでした。

この戦艦は、時間経過と共に少しずつパーツが揃っていき、完成すると出航してしまいます。そうなるとホーミングミサイルで自機を狙ってくるため、攻略がかなり困難に……爆弾を余らせて戻るくらいなら、行きがけ(帰りがけ)の駄賃で建造中の戦艦に落としていくのが手です。

 道中には、自機を見つけると高射砲を撃ってくる駆逐艦や戦車、ホーミングミサイルで攻撃してくる砲台に敵戦闘機のホワイトジェットなどがいるため、一筋縄ではいきません。そういった敵は、自機に装備しているバルカン砲で返り討ちにすることが可能です。ただし、敵がドックで生産している戦艦だけは別格。ゲーム開始と共に建造が始まり、時間経過と共に少しずつ完成に近づいていくので、見つけ次第爆撃して進行を止めないと後で大変なことに……。しかも、何度破壊しても一定時間後には建造が再開されるうえに、戦艦撃破のためにばかり爆弾を使っていると肝心の秘密工場破壊が捗らず、結果的にドンドン攻略が厳しくなっていくのでした。

 自機のサンダーヘリは攻撃を受けるとダメージが溜まっていきますが、これが100%になると数秒後に墜落してストックが1機減ってしまいます。自機のストックは5機用意されていますが、全部失うとゲームオーバーに。ダメージが100%になる前に空母に着艦すれば0に戻せますが、その空母が敵爆撃機・ブラックジェットの攻撃で沈没させられてしまうとストックもろとも海の藻屑になるため、プレイヤーは孤立無援のなかで戦うことになってしまいます。以降、ダメージを回復させる手段はなくなり、現在操作している機が墜落した時点でゲームオーバーでした。

 ゲーム終了時、スコアが15,000点以上であれば得点とおおよそのプレイ時間が表示され、さらに40,000点以上を獲得していた場合はプレイヤーの名前を入力できます。しかも、MSXにブラザーのHR-6X/ソニーのSMI-7020かSMI-720かPRN-T24が接続されていれば、表彰状を印刷することも可能でした。

秘密工場は、最初は煙を出して稼働していますが、爆弾を落とすすと煙が止まり、更に攻撃を加えると爆発! 画面下部に「Congratulation」のメッセージが表示されます。これを6回繰り返せば、見事クリアに。

 実際にプレイしてみると、まずはヘリの操作方法で戸惑ってしまうかと思います。それに慣れても、自機に搭載できる爆弾の数が一度に9発なので、秘密工場を爆撃しては爆弾を補給に空母に戻り、その間には戦艦が完成しないようにこちらも破壊するなど、素早く脳内で計画を立てて行動する必要がありました。

 戦艦は完成してしまうとホーミングミサイルをバンバン撃ってくるので手強く、100画面分の広さがあるマップは思った以上に広大で、全体地図を脳内に構築できないとターゲット探しで迷子になることもあるなど、非常に歯ごたえのある難易度に仕上がっています。

 6つの秘密工場を破壊してしまえばそれでクリアなので、ボリュームの面では物足りなさを感じるかもしれません。しかし、そこに至るまでの試行錯誤が面白く、2度目以降は点数効率を考えたプレイが楽しめるなど、思った以上に良く出来ていると言えるかもしれません。数も豊富に出回ったようで、フリマアプリやオークションサイトなどでもそこそこ見かけるので、気になった人は是非とも手に入れてプレイしてみてください。

画面下に時々表示されるメッセージは、空母がブラックジェットに攻撃されているときには「SOS」、敵戦艦の完成が間近に迫っていると「CAUTION」、そして自機が爆発する数秒前には「DANGER」とそれぞれ表示されます。作戦遂行のためには、これらを見逃さないことも重要です。

 ちなみに、本作はタイトル画面で2人プレイを選ぶと2人で楽しめますが、片方のサンダーヘリが墜落した時点でプレイヤーが交代になるだけで、1Pと2Pで分かれて戦うという仕組みにはなっていませんでした。

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