ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

ギルに助け出されたカイがパソコンでも大活躍!『ザ・リターン・オブ・イシター』

パッケージにはギルとカイをメインとしたイラストが描かれています。このパッケージは他機種版も同じで、MSX2版のみ別デザインを採用していました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、SPSから発売された『ザ・リターン・オブ・イシター』のPC-8801mkIISRシリーズ対応版を取り上げています。

 ゲームセンターで稼働しているタイトルを、自宅パソコンで遊べれば……そのようなニーズは、80年代後半になっても途切れることはありませんでした。数多くのアーケードゲームがパソコンへと移植されましたが、今回取り上げた『ザ・リターン・オブ・イシター』も、そんなソフトの1つです。ベースとなっているのは、本作発売の1年前にアーケードでリリースされた『ザ・リターン・オブ・イシター』。これを、将棋ソフト『棋太平』やX68000版『グラディウス』などでお馴染みのSPSが移植しました。

広告は、パッケージ裏面をほぼそのまま流用したものでした。もしかすると、広告を流用したのがパッケージ裏面かもしれませんが(笑)。

 システムはアーケード版と同じで、プレイヤーはカイとギルを操作し、ステージのどこかにある鍵を回収してフロアのドアを開けて進み、最終的には塔からの脱出を目指します。本作は、アーケードゲームとしては珍しいアクションRPGを採用していました。カイやギルは敵を倒すことで経験値を入手して、それが次回プレイ時に反映されてキャラクターが成長する仕組みです。そのため、ゲームセンターでも最初からプレイを始めて1コインでクリアするのは不可能で、最速2コインが必要でした。もっとも、それが出来るのはかなりの腕前のプレイヤーで、通常の遊び方では何十コインも必要とするため、それが自宅で無限にプレイ出来るのが嬉しかったのを憶えています。

基本的にはカイを操作し、敵を倒して経験値を稼ぎつつ先へと進んでいきます。レベルアップすると新たな呪文を憶えますが、それが反映されるのは次回以降のプレイになります。カイのMPは表示されませんが、ギルのHPは画面右で確認することができるので、常に気を配っておきたいところです。

 移植ものというと“どれだけアーケード版に忠実か”という部分が注目されますが、アーケード版の画面や色味などを頑張って再現しているのは、写真から見て取れます。画面レイアウトはアーケード版から若干変わっていますが、そこはプレイに支障の無い部分なので、あまり問題ではないでしょう。総じて、当時としてはかなり満足のいく移植度だったのではないでしょうか。肝心のゲーム性は、処理の都合で敵の動きが時々スローになることはあるもののハードスペックを考えれば上出来で、BGMもアーケード版までとはいかないまでも透明感のある楽曲が十分に再現されていました。

ゲームオーバーになると、アーケード版と同じくパスワードが表示されます。これを間違えずにメモしておかないと、次回にプレイデータを持ち越すことができなくなってしまう事態に。

 アーケード版では、カイは左側でギルは右側のコントローラで操作しましたが、パソコン版はテンキーでカイを、フルキーの“W・A・X・D”でギルを操ります。カイの呪文選択はテンキーの3で行い(フルキーのCでもOK)、テンキーの1で使用することができる(フルキーのZまたはスペースキーもOK)ため、慣れれば片手での操作も問題ありません。後半に進むとギルが活躍する機会も多くなりますが、アーケード版と違ってお金のことを気にすることなくプレイ出来るパソコン版なら、ギルを酷使しまくってから“LAST GAME CONTINUE”を選べば、カイもギルもドンドンレベルアップさせることが出来ます。

左がゲーム開始直後の攻撃呪文で、右がプレイを重ねて育てたカイの攻撃呪文です。こうしてカイをレベルアップさせていかないと、塔から出るのは至難の業でしょう。

 実際にプレイしてみるとキャラクターを育てるのに時間がかかるため、アーケード版として稼働させるよりは自宅で遊べるパソコン向けソフトとしてリリースするのが良かったタイトルではと、今更ながら思いました。アーケード版は後に長時間プレイ者が続出したため、インカムの都合で現役稼働時間はあまり長くなかったとのことです。筆者の友人も、自力でキャラクターを育てることなく最強パスワードを入手し、それを使ってクリアまで遊んでいましたので、さもありなんという感じでした……。

タイトル画面に続いて、本作のストーリーがアーケード版と同じように流れます。残念ながら、アーケード版にあったギルやカイのアクション解説は省かれています。

ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち 連載一覧