ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

コンテストで最優秀賞を獲得、マジカル ズゥのアドベンチャー『黄金の墓』

マジカル ズゥらしい縞模様のパッケージに、タイトルとイメージイラストが描かれています。裏面には、画面写真が掲載されています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、マジカル ズゥが開催したコンテストで最優秀作品を受賞したアドベンチャーゲーム『黄金の墓』です。発売は1983年。

 1980年代前半、アドベンチャーゲームがブームになり始めると、いくつかのソフトハウスはアイデアを社外に求めてコンテストを開くようになります。そのうちの一つが「ストラットフォードコンピューターセンター株式会社 ホビー事業部」でした。それまでは教育目的のソフトをメインに発売しつつ、ごく少数ながらアクションゲームなどもリリースしていた同事業部でしたが、ブランド名として“マジカル ズゥ”を打ち出し、それと83年3月に「アドヴェンチャーゲーム・コンテスト」を開催します。

左がコンテスト開始広告で、右が発表広告です。最優秀賞をゲットした『黄金の墓』はPC-6001版がオリジナルで、後にPC-8801やFM-7、X1といった御三家とMSX、さらにはSMC-777にも移植されました。

 ここでは『ツタンカーメンの謎』『ピラミッドの謎』『ムー大陸の謎』『インカ帝国の謎』の4タイトルに対応する内容のアドベンチャーゲーム、またはその他のゲームを応募していました。その結果、最優秀作品として選ばれたのが『黄金の墓』でした。募集時の『ツタンカーメンの謎』で使用されていたイラストが『黄金の墓』でもそのまま使われていることから、ゲーム内容に合わせてタイトルが若干変更されたようです。元はPC-6001版ということなので、今回使用しているのもPC-6001用テープ版としました。

 マニュアルには、「サラリーマンの主人公がある日、帰り道に謎の占い師に出会います。そこで驚くべき話を聞かされて自宅に戻ると、突然窓を割って手紙が届くのです。そこには、エジプトのピラミッドのことなどが書かれていました。手紙を読んだ主人公は一路、エジプトへと旅立ちます……。」とストーリーが書かれているのですが、実際のゲームは主人公が会社から自宅アパートへ帰るところからスタートします。

 システムは、この時期定番のコマンド入力式ですが、英語ではなくひらがな(他機種はカタカナ)での入力となります。基本的には名詞+動詞と打ち込むのですが、所々で返事を求められたり、動詞のみでも先へ進むことがあるので、想像以上にコマンドで悩まされることが多いです。

 また、占い師に出会ったときに画面に描かれている剣が“短剣”や“ナイフ”ではなく、一度“みる”をしないと正しい名詞が分からないなど、単語探しで行き詰まることもしばしばありました。それを差し引いても、この時期に発売されたアドベンチャーゲームとしてはストーリーが面白く、適度な難易度だったと言えるのではないでしょうか。

最初のシーンです。ここでは返事を要求されていますので、“はい”“いいえ”で答えます。テープ版のスタートはここですが、ディスク版ではエジプトから始まります。ちなみに、ディスク版が発売されたのはPC-88、PC-60、X1、MSX、SMC-777でした。
『黄金の墓』には水とパワーとお金というパラメータが用意されていて、コマンドを実行するたびに少しずつ消費されていきます。一定値を下回ると、画面の左右に描かれている8mmフィルムの巻き取り穴を模した模様が青と赤で交互に描かれ、ピンチを教えてくれます。

 グラフィックが荒いと思う人もいるかもしれませんが、実はPC-6001より高解像度を扱える機種でも同じように描かれています。作り手側としては、アップルのゲームっぽさを醸し出したかったのかもしれません。描画速度に関してはPC-6001版はライン&ペイント方式なので少々遅いですが、他機種版では一気に描かれるなど快適になっています。

紆余曲折を経て何とかエジプトへと辿り付くと、そこにはピラミッドとスフィンクスの姿が。ここからがゲームの本番です。ちなみにPC-6001版ということで、液晶テレビにビデオ出力した時の画面も合わせて掲載してみました。

 『黄金の墓』『ムー大陸の謎』などで知名度を上げたマジカル ズゥは、この後にRPG『ザ・スクリーマー』を発売し、ユーザーの心に残るソフトハウスの一つとなっていきます。

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