ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

ミリカの美しいCGに心躍らせた『ザース 人工頭脳オリオンの奪還』

パッケージには、主人公のザースと共に、仲間のトラルドが描かれています。ゲーム中、トラルドの顔グラフィックが描かれることはほとんどありませんので、貴重なイラストと言えます

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、登場人物の一人であるミリカが突出して有名だった名作アドベンチャーゲーム『ザース 人工頭脳オリオンの奪還』(1984年発売)を取り上げました。

 1980年代前半、『ミステリーハウス』をはじめとしたアドベンチャーゲームが、大ブームとなります。最初は宝探しが多かったアドベンチャーゲームも、時が経つにつれ推理ものやホラーものなど多様化していきましたが、今回取り上げた『ザース』は、SFアニメサスペンスアドベンチャーと銘打たれたジャンルを採用していました。

 手がけたのは、当時高校3年生だった7人が集まったグループ“ジャンドラ”。監督を務めた杉江正氏は、エニックスの第2回ホビープログラムコンテストにて『不思議の旅』が入選し、同社から発売されていました。

当時の広告。『ザース』発売直後は、思った以上に大きなスペースを割いて紹介されていました。その後も、“ヒットチャート急上昇中”などのキャッチと共に掲載されています

 21世紀末、アメリカが開発した最終兵器システム・オリオンを操った科学者により地上に核攻撃がもたらされ、生き残った人間はコールドスリープに入ります。時が経ち、放射能が安全レベルに落ちて人々が目覚めたところから物語は始まります。主人公ザースの住む村にある日、一人の少女が逃げてきます。ミリカと名乗った彼女は、自分が住むアスタ村の住人が大勢さらわれてしまったので助けて欲しいと語り、ザース、トラルド、ランドの3人が向かうことになります。ところがその夜、3人の住む村も攻撃を受け、生き残ったのはザースとトラルドの二人だけになってしまうのでした。

 このような導入から始まる『ザース』ですが、パッケージ裏には“ミリカの願いは地球の平和”と書かれていて、そこには有名なグラフィックと共に本作のストーリーがより大まかに綴られています。

ゲームスタート時にストーリーを見るモードを選択すると、最初に物語を画像と共に説明してくれます。CGの大きさはほどほどですが、かなり高いクオリティで描かれているのがわかります
最後に登場する少女が、有名なミリカです

 今回取り上げたのはMSX版ですが、俗に言う御三家ハードと比べて解像度などに関しては分が悪いにも関わらず、パッケージ裏に“MSXのハードの限界を超えた美しいグラフィック!!”と書かれているように、非常に美しいCGでストーリーが展開されていきます。MSXを軽くしか知らない人ほど、この綺麗なCGには驚かされるのではないでしょうか。他のシーンで描かれるグラフィックも、従来のMSX用アドベンチャーゲームと比べて美しい仕上がりになっています。また描画速度も他機種と比べて非常に速く、ストレスをほとんど感じません。

物語が進むと、このような美しいグラフィックも見ることが出来ます。ちなみにゲーム終盤には、あっと驚くストーリー展開も待っています。

 ゲームシステムは名詞+動詞と打ち込むコマンド入力式を採用していて、さらに対応語句も思った以上に豊富なので、遊びの部分もそれなりに用意されているのがユニークなところでしょう。また、途中で仲間がヒントを言ってくれるのも助かる部分です。今ではローマ字入力に慣れてしまいカナ入力がツライという人もいるかもしれませんが、ファンクションキーにはよく使う単語が登録されているので、それらを活用すればある程度楽に進めることができるでしょう。

この場面では、お墓を“あばく”でも“ほる”でも対応してくれます。一時期のアドベンチャーゲームのように、決まった単語しか受け付けないというシーンが少ないため、悩む頻度も従来よりは少なかったです。
家の中に入ると、壁にロープがかけられているのがわかります。どこで活躍するのかは不明ですが、“つかう”すると……?

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