ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

幾千通りものシナリオを体験できた『ティル・ナ・ノーグ <ダーナの末裔>』

装飾品が映された写真が1枚配置されただけのシンプルなパッケージですが、ロゴなどが特色と言われる特別なカラーで印刷されています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、システムソフトから1988年に発売された、シナリオジェネレータ機能搭載の『ティル・ナ・ノーグ』です。

 1980年代後半になると数多くのRPGタイトルが発売され、何らかの特長を持たせないと目立たなくなるほどでした。

 あるタイトルは世界観を、あるタイトルはシステムをと、各ソフトハウスが工夫を凝らしていくわけですが、シミュレーションゲームで有名だったシステムソフトがリリースしたのは、シナリオジェネレータ機能を搭載させジェネレーティング・ロールプレイングと銘打ったRPG『ティル・ナ・ノーグ』でした。本作は、ケルト神話に題材を求めたファンタジーRPGとなっています。

広告は毎月違うパターンが掲載されていました。2ページで掲載されたこのパターンでは、美しいイラストとシナリオが書かれています。

 特長はなんと言っても、国の名前や地形・迷宮の場所・登場人物・アイテム・ストーリーなどのシナリオを自動作成する、シナリオジェネレータの採用でしょう。これは「舞台は、私たちの知っている世界とは別の異次元にあり、そこで人は年もとらず、病気も苦しみも知らず、喜びにあふれて生きています。それゆえ、人々はそこを『常若の国(ティル・ナ・ノーグ)』と呼んでいます。それはまた異次元に、無数に存在していると考えられています」と、設定でもシナリオは無数に存在していると謳っています。このため、『ティル・ナ・ノーグ』には固定したストーリーがなく、プレイヤーが違えば旅をする世界も変わる、まさに世界で一つだけの物語を楽しむことができるようになっていました。

これが、シナリオジェネレート中の画面です。STARTから始まり文字が右へと移動していき、ENDまでたどり着けばジェネレート完了となります。ゲームを始めると、最初にシナリオが表示されます……が、国名や人名が、ちょっと発音しづらい名前になっている場合がほとんどです(笑)。

 初回プレイ時は、ゲームを起動させて主人公の名前を入力し、シナリオジェネレートすることになります。マニュアルによると、『ティル・ナ・ノーグ』が発売された時期にメインで活躍していたPC-9801VMを使用しても、シナリオジェネレートには平均15分、何かあると30分以上かかることもあったそうです。ちなみに、後に発売されたPC-9801R/D/Fシリーズなどでシナリオジェネレートすれば、もっと短時間で終了できました。

 シナリオジェネレートが終了すれば、あとは通常のRPGと同じく遊べます。固定されたストーリーはないものの、どのシナリオも王様が困っていることがほとんどなので、まずは城を訪ねて王様に謁見し、旅の援助をもらいます。その後に地上を探索して仲間を増やし、発見した洞窟を探索していくのがベースの流れとなっていました。洞窟は迷宮になっていて、一歩進むごとに自動的にマッピングされていくため、すべてを踏破しないと気が済まない人ならば一つのシナリオで長期間楽しめるのは間違いないでしょう。

地上は視界が開けているため、どこへでも移動出来てしまいます。ただし、いきなり強敵との戦闘になってしまうこともあるため、最初は素直に城の近辺をうろついて仲間を集めたいところです。道中で仲間と出会ったり、酒場で仲間を募ると“仲間にしますか?”と聞かれますので、仲間にするも断るも、プレイヤー次第です。

 また、美しいイラストで描かれた個性豊かな種族が登場し、戦闘で活躍する様を見ているのも楽しい部分でした。戦闘は基本オートで進みますが、個別に指令を出すこともできるため、的確な指示さえくだせれば格上の敵でも勝つことが出来る場合があるのも、魅力の一つだったと言えます。

オートで行われる戦闘は、PC-9801VM程度のスペックでもWAITを0にするとスピーディに展開します。あまり早すぎると命令を下す余裕すらなくなるので、設定はほどほどに。

 当時はオリジナルであるPC-9801版以外に、移植されたPC-8801mkIISR版やMSX2版、後に続編となる『ティル・ナ・ノーグ II』が発売されるなど、数多くのシリーズタイトルがリリースされています。それはつまり、シナリオジェネレータが好評だったことの証と言えるかもしれません。

 現在は、プロジェクトEGGにてPC-8801版を配信されていますので、シナリオジェネレータが気になった人はぜひ遊んでみてください。ちなみに、友人と同じシナリオをプレイしたいというときには、同一シナリオを生成させるコードを入力することで実現出来ました。

洞窟内は、最初は真っ暗になっています。踏破した部分は自動的にマップが描かれていきますが、一部に秘密の通路が隠されているため、壁だからと言って油断はできません。

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