ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

描画速度の速さに驚いた日本ファルコムの『デーモンズリング』

パッケージの傷みが激しいですが、プラスチックではなく紙製のため、それも致し方の無いところです

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、日本ファルコムから1984年に発売されたホラーアドベンチャーゲーム『デーモンズリング』です。

 1980年代前半に、『ミステリーハウス』などのソフトが巻き起こしたアドベンチャーゲームブーム。それは瞬く間に大きなうねりとなり、数多くの名作タイトルが生まれました。

当時の広告を見ると「驚異のスピードで、画面表示を実現!」「CLSでの画面消去より速い!」「ファルコムが送るわが国発の瞬間画面表示アドベンチャー」など、描画速度の速さを前面に押し出しているのがわかります。同じ時期には、システムソフトから瞬間画面表示『ミコとアケミのジャングルアドベンチャー』も登場しています。

 初期作品は文字のみでしたが、やがて簡易なグラフィックが表示されるようになり、さらにはライン&ペイントでカラーの絵が描かれ、視覚的にも華やかなタイトルが増えていきます。そこで起きたのが、グラフィックを描く描画速度争いでした。ラインで輪郭を描き、その中をペイント文で塗っていく方法では速度が遅いため、各社が知恵と工夫を凝らしてスピードアップに励みます。そのような時代に、瞬間画面表示をウリに登場したのが『デーモンズリング』でした。

 PC-8801版とFM-7版は約1秒半、PC-9801版やFM-77版に至っては1秒かからずに描画してしまうと広告では謳っていますが、当時はあまりの速さに本当に驚きました。同じ年に発売された、ハドソンソフトの『サラダの国のトマト姫』が早いと言われていた中、それを上回る速度でグラフィックが描かれてしまった衝撃は、今でも忘れられません。グラフィックのタッチも、どこかAppleっぽい感じを思い起こさせる仕上がりになっていて、それを売り出すためのキャッチが「欧州絵画調電子小説」でした。

ディスクから起動すると、左の写真にある水色の迷宮シーンがアニメーション風に高速表示されます。その後にタイトル画面が描画されるのですが、そのスピードは当時としては驚くべきものでした。右の写真に表示されている炎もアニメーションします

 さらに、当時の日本ファルコムとしてはお得意のオカルティックさを混ぜ合わせたシナリオは、その手の人たちでも楽しめる仕上がりとなっていました。『ホラーハウス』『モンスターハウス』『バードランド』『狂気の館』といったタイトルと似た路線を取ることで、確実にファンの心をつかんだと言えるでしょう。

 反対に、あまりオカルトに精通していないユーザーがプレイすると、少々不気味すぎて抵抗を感じるかもしれません。その傾向はマニュアルからも顕著で、のっけから「(前略)冒険を始める時には、このマニュアルの裏側に描かれている魔法のシンボルを切り取るなどして、肌身離さずに持っていて下さい……これは万一、悪霊たちが貴方に襲いかかろうとした時、唯一貴方を守ってくれるものであるからです。(深夜1人で冒険に旅立つのは、絶対におやめ下さい。)(後略)」と書かれていたことからも分かると思います。

ゲームはプレイヤーが謎の家の前にたたずむところから始まります。国王クロウリーの子である主人公のデュムリンの目的は、国を滅ぼした魔王サローンを探し、倒すこと。どうやら、この家の中から魔王サローンの気配がするようです

 本作は、当時としてはオーソドックスなコマンド入力式のアドベンチャーですが、入力に際しては英単語ではなくカタカナを使用します。そのため、言葉探しで苦労することは少ないのですが、仮名文字での入力は当時もあまり慣れてなかったため、そこで苦労した記憶があります。また用意された謎も難解で、今回久しぶりにプレイしたのですが、肝心の家の中に入ることすらできませんでした……。

見たことがある人も多いと思われるシーン。ここでは3コマンド以内に立ち去るか、または工夫して乗り越えないと、すぐゲームオーバーに……

 筆者のように、創刊して間もない頃から雑誌『ムー』などを読んでいる人ならば、その世界観にきっと共感出来るのではないでしょうか? 今ならばプロジェクトEGGでも配信中ですので、気になった人はぜひプレイしてみてください。なお、日本ファルコムはこの後も、『異次元からの脱出』『アステカ』などの画面瞬間表示アドベンチャーをリリースしていくこととなります。

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