ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

人気アーケードゲームの移植作、MSX2版『忍者くん 阿修羅の章』

コミカルなイラストが描かれた、目立つパッケージになっています。裏面には画面写真や簡単なストーリーと共に、ジョイスティックだけでなくジョイボールも使えることが書かれていたのが、いかにもハル研のゲームらしいところでした。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、1988年1月20日に発売された、アーケード版からMSX2へと移植されたタイトル『忍者くん 阿修羅の章』となります。

広告では、同時期に発売された『ずっこけやじきた隠密道中』とセットで宣伝されていました。

 1983年に初登場したMSXパソコンはその後、1985年に大幅に表現力が増すなどしたMSX2規格が打ち出されます。すると、それに則ったMSX2パソコンが発売されるようになり、アーケードからの移植タイトルも大幅に増えていきました。

 NEC、シャープ、富士通のいわゆる御三家ハードはRPG中心でしたが、MSX界隈はアクションやシューティングといったジャンルも元気で、それらの新作の1タイトルとして1988年1月20日にハル研究所からリリースされたのが、アーケード版はUPLから登場していた『忍者くん 阿修羅の章』です。MSX2版はアーケード版の『忍者くん 阿修羅“ノ”章』と違い、パッケージやマニュアル、広告に掲載されているのが『阿修羅“の”章』なので、本記事でもその表記にしました。マニュアルには、以下のようなストーリーが書かれています。

 時は江戸時代のことである。長く続いた太平の世の中に、密かにはびこる魔物たちがいた。普段は、人の目につかない山奥や、洞くつに住みついていたが、やがて迷いこんだ旅人や、山菜とりの村人を襲うようになり、ついには里へおりて村々の生活をおびやかすようにまでなった。これを憂いた殿様は、忍者くんに魔物たちを退治するよう、お命じになったのである。秀(すぐ)れた忍者になるために修行中だった忍者くんは、こうして魔物退治という、長い武者修行の旅に出発した。魔物と戦いながら新しい武器の使い方を覚え、さらに強い敵をめざして、忍者くんは行く!

パッケージと違い、タイトル画面は「ノ」となっていました。ゲームを始めるとアーケード版とは違い、3枚の花札から1枚を引くアクションは用意されてなく、アーケード版の1-Aが始まります。MSX2版は、武器を撃つときに忍者くんがほとんど止まらないので、ややプレイしやすくなっていました。

 本作は、『忍者くん 魔城の冒険』の続編という立ち位置となります。前作が左右2方向移動とジャンプ、手裏剣の各ボタンだったのに対して、『忍者くん 阿修羅の章』ではカーソルキーの左右で主人公の忍者くんの移動、下で伏せまたは下段に降りる、上で武器の切換、スペースキーでジャンプ、GRPHキーでSHOTとなっていました。

 基本的には、ステージ内に出現している敵をすべて倒すか、どこかにある出口に入るとシーンクリアとなります。道中にはさまざまな種類の敵が出現するだけでなく、時には忍者くんの数倍もあるようなデカキャラも登場して行く手を遮られるので、手持ちの武器で攻撃して倒さなければなりません。

アーケード版と比べると細かな違いはありますが、忍者くんがジャンプして武器を撃とうとすると、それに反応してジャンプ避けをしたり、もちろん大きな敵キャラも登場するなど、ゲーセンライクな感じでプレイ出来ます。クリア時には「ヤッターウキャキャ!」っぽく聞こえる効果音も鳴りました。

 忍者くんの武器は、最初は2連射できる手裏剣のみですが、ボーナス面をクリアすることで追尾手裏剣、爆弾、火炎の術を入手することができました。ただし、爆弾はアーケード版と違って1発しか発射できない他、一定距離を飛ぶと必ず爆発するような仕組みに変わっています。

 いくつかのシーンでは、忍者くんの周りに壁が出現して、そこを登っていく必要にかられます。壁に飛びついてジャンプボタンを連打すると、這いつくばりながら登るのですが、到着まで非常に時間がかかってしまいました。そんなときに有効なのが、三角飛びです。左右の壁を三角飛びで上っていけば、あっという間に上へと到着することができるのですが、途中で失敗すればそのまま落下して再びやり直すハメに……。

水中面は、アーケード版では武器ボタンで刀を出してジャンプボタンで泳ぐ速度がアップしましたが、MSX2版は武器ボタンを連打しても刀は連射されないほか、ジャンプボタンを押しても泳ぐ速度は変わりません。代わりに登場する敵の数が少ないので、あまり苦労せずに抜けられました。

 落下も、ある一定以上の高さからだと途中で忍者くんが足をばたつかせてしまいます。そのまま地面に落ちると一定時間気絶となるのですが、途中でジャンプボタンを押すと空中回転を初めて、タイミングが合えばピシッと着地できることがありました。もっとも、コケて転がってしまうことも多いので、使いどころの難しい技ではあります。

 これらのテクニックを駆使して、全30シーンを突破することができれば見事エンディングを迎えることに! とはいえ道中には、忍者くんの動きに対応して逃げたり攻撃してくる敵が多数待ち構えているため、一筋縄ではいきません。アーケード版をクリアした人でも、MSX2版には一苦労させられるかも!?

シーン3やシーン6など、壁を蹴って上へと登る三角飛びのテクニックが要求されるのはアーケード版と同じです。クリアした後の、あの派手な画面が少々もの寂しいのが惜しいところです。

 アーケード版からの移植ではありましたが、スペック的に難しいところもあるためか、いくつかの要素が削られたりしているのはしょうがないところでしょう。嬉しい違いとしては、アーケード版では敵を倒したときに巻物が全画面で1本しか表示されない(新たに敵を倒すと、そちらに巻物が表示され、現在出現している物は消える)のが、MSX2版では倒した数だけすべて表示されるところです。また、ミニドラゴンの追跡が緩かったり、水中ではボタンを押しても加速しないなど、簡単になっている部分がありました。それでも、『忍者くん 阿修羅ノ章』らしさはしっかりと再現されているので、このあたりはさすがといったところでしょうか。

マニュアルには敵キャラ紹介のほか、(忍)テクニックと称した忍者くんの基本アクションも掲載されていました

 オークションやフリマサイトでは頻繁には見かけないので、当時としての出回りはそれほど多くなかったのかもしれませんが、「忍者くん」ファンならば是非ともプレイしておきたいタイトルかと思います。

 最後に、コンティニュースタートのシーン4からシーン12までを動画で掲載します。これで、だいたいの雰囲気がつかめるのではないでしょうか。

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