ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

お馴染みの面々が登場するアドベンチャーゲーム『めぞん一刻』

パッケージを見るとわかりますが、ゲームのタイトルは『めぞん一刻』のみとなっていました。表面は横向きの響子さんが大きく描かれ、その右下に配置された他の登場キャラクターたちは、一刻館と共に背面でも登場しています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは1986年にマイクロキャビンから発売された、高橋留美子先生原作のマンガ『めぞん一刻』を題材にしたアドベンチャーゲーム『めぞん一刻』です。

広告では11月末発売と書かれていましたが、実際にリリースされたのは12月に入ってからのようです。

 パソコンソフト黎明期より『ミステリーハウス』シリーズをはじめ、『ドリームランド』や『英雄伝説サーガ』など数々の名作タイトルをリリースしてきたのが、アドベンチャーゲームで有名になったソフトハウス・マイクロキャビンです。そんな同社が1986年12月に登場させたタイトルが、高橋留美子先生原作のマンガ『めぞん一刻』を元にしたオリジナルストーリーアドベンチャーゲーム『めぞん一刻』でした。本作でのストーリーは、以下のようになっています。

発売直後の雑誌にはお正月っぽいイラストの広告が掲載されていて、小学館から発売されていた雑誌『ポプコム』の1987年1月号記事内では、このイラストを使用したポスターが読者プレゼントとして提供されていました。

 あなたが演じるのは五代裕作。ゲームは五代の部屋5号室から始まる。さてさて、何をすればいいのかな? まずは麗しの管理人さんに逢いに行こうじゃないか。できれば管理人室に入れてもらいたいな。そして……おっと妄想に浸っている場合ではなかった。原作同様、管理人さんはヤキモチ焼きで、機嫌を損ねると部屋に入れてくれないどころか、話もしてくれなくなる。おまけに一刻館住人に弱みを握られ、たかられるは、邪魔はされるは……。響子さんの機嫌を取り、住人達の妨害をはねのけ、やっと管理人室に入ることができた五代は、そこに管理人さんの秘密らしき、あるものを見る。お茶に立った管理人さんの隙を見て、それに手をかけると「こんにちは!三鷹です」と、突然現れる恋敵三鷹。

 何度か管理人室を訪れ、このゲームの要求するものを探り、どこかにあるそれを手に入れる。これがこのゲームの目的である。そしてそれを手にしたとき何が起こるのか!?それはまだ内緒。最後にヒントを一つ。このゲームが要求するものとは、ずばり「写真」である!

ゲームは、主に一刻館を中心に進んでいきます。五代君の部屋だけでなく、四谷さんの住む4号室や朱美さんの6号室、1階にある一ノ瀬のおばさんがいる1号室にも入れます。

 プレイヤーは、音無響子(管理人)さんに憧れる一刻館の住人・五代裕作として、管理人室にある写真を手にするために行動をしていきます。ゲーム内エピソードや、各キャラクターの性格などのベースとなっているのは原作単行本1巻から6巻までですが、登場キャラクターの着色などはアニメ版寄りとなっていました。

 アドベンチャーゲームですが、この時期は既にコマンド選択式が一般的だったため、本作でも同システムが採用されています。基本的には並んでいるコマンドを選んで決定するだけで、動詞を選択したときのみ、続けて表示される名詞から1つを決めることで反応が返ってきました。なお、操作方法はスペースキーで選択肢を次候補に移動させて、リターンキーで決定となっています。もし行き過ぎてしまった場合は、エスケープキーを押せばカーソルが最初の位置に戻りました。

進行途中でセーブがしたくなった場合は、一刻館のトイレへ入らなければなりません。ココ以外でデータのセーブロードはできませんので、面倒でもこまめにトイレに入りましょう。
一刻館名物の宴会は、本作でも健在です。“わめく”という宴会専用コマンドが用意されていますが、特に何かが起きるわけではありません(笑)。宴会を終了するには、眠るを選択すればOKです。

 カーソルキーでの操作にも対応していましたが、PC-88シリーズはこの時点での最新機種であるPC-88FH/MHならば新キーボードだったので遊びやすいものの、それ以前のPC-88シリーズではテンキー上部に横並びだったため、ちょっと操作しづらかったです。カーソルキーがわかりやすい配置になっていたFMシリーズのキーボードや、テンキーの左下にカーソルキーが並んでいたX1キーボードであればまだ操作しやすいのですが……そもそも、なぜテンキーの2468に対応しなかったのかは、今となっては謎のままに。

 ゲームは、一刻館の中を探索しながら住人をあしらいつつ、管理人室に入って置いてある写真立てに収納された写真の正体に迫るのですが、各住人にはご機嫌度と呼ばれる見えないパラメータが設定されていて、これが低いと五代君の行動がいろいろと制限されてしまいます。それを回避するためには、万年貧乏な五代君が持っているなけなしのお金を渡したり、相手がほしいものを買ってきてプレゼントするといった必要がありました。財布の中身が1,000円以下になって寂しくなったときには、実家や友人の坂本に電話をすると、仕送りを送ってもらえたりお金を借りることができますので、それを利用してストーリーを進めていきます。ただし、ご機嫌度は響子さんにも設定されているので、この時点でのガールフレンドだったこずえちゃんの自宅を訪ねると、とあるアイテムがタダでもらえる代わりに、響子さんのご機嫌がとても斜めに!?

システムはコマンド選択式を採用していて、動詞を選ぶと続けて名詞が表示されるので、続けて選択します。列挙されるコマンド数はかなり多いですが、いくつかにはユニークな返答が用意されているので、すべて試してみるのがいいでしょう。

 当時としては、登場するキャラクター達の会話は原作リスペクトがなされていて、いわゆる“良く分かってる”仕上がりになっていたので、その筋の方々でも十分満足できるシナリオになっていたのが感心できるところでした。グラフィックとBGMは、個人的にはもう少し頑張ってほしいところでしたが、マンガを原作としたソフトはマイクロキャビンとしては初だったことを考えると、及第点だったと言えるかもしれません。

管理人さんの部屋に入ったら、そのままではよく見えないフォトスタンドがありますので、手に取ってみましょう。すると、様々な人物の横やりが入り……これを繰り返していくことで、ストーリーが進んでいきます。

 ちなみに、ゲームに収録されているBGMはピカソの『シネマ』と斉藤由貴『悲しみよこんにちは』の2曲ですが、本作発売と同時期に放映されていたアニメでのオープニングが『悲しみよこんにちは』だったものの、エンディングはピカソの『シネマ』ではなく『ファンタジー』と、ちょっと惜しい感じに。発売がもう少し早ければ、オープニングとエンディング共々収録曲になっただけに当時の製作スタッフは悔しい思いをしたのかも?

マニュアルには登場人物紹介も書かれていますが、描かれていたのがオリジナルイラストだったため、当時は不満に思った記憶があります(笑)。

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