ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

飛んでいくボールに合わせてスクロールする画面が斬新だった『アルバトロス』

ティグラウンドで、ティにボールが置かれた状態をボールの目線の高さから見ているという、珍しいイラストが描かれていました。中央に大きく描かれたボールが、見る人の目を引くパッケージです。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、日本テレネットが1985年末にリリースしたゴルフゲーム『アルバトロス』です。

 ゴルフゲームは、パソコンが市場に出回ったときからあったジャンルの一つでした。初期の頃で有名なものと言えば、ハドソンの『スーパーゴルフ』などがありますが、『スーパーゴルフ』は画面上半分に描かれたコースでプレイするため、見やすくなく臨場感もあまりありませんでした。

 代わりに、コース図を描き直すことがほとんど無いため、プログラムがBASICながらも進行は遅くないという特徴を持っています。暫くすると、T&E SOFTの『3Dゴルフシミュレーション』やハドソンソフトの『ゴルフ狂』といった3Dゴルフゲームが登場します。こちらは、3Dのため臨場感は抜群だったものの、大量の計算が発生することでゲーム進行のテンポが早くないという難しい部分を抱えていました。

上が発売前となる1985年12月号に掲載されたバージョン、下が発売後の1986年1月号の広告です。どちらも年内発売の雑誌に掲載されたものですが、『アルバトロス』はロゴの色が製品版と違っています。ちなみに、一緒に載っている『ファイナルゾーン』もロゴが製品版と異なります

 そんな中、1985年末に発売された『アルバトロス』は、画面右側にボールがある場所の拡大画面が表示され、ショットすると飛んでいくボールに合わせて画面がスクロールするというダイナミックな演出と、ハーフ&ラウンド終了時にビジュアルとBGMが挿入されるという“いかにも日本テレネット”なシーンが盛り込まれるなど、従来のゴルフゲームにはない斬新な仕組みがいくつも設けられていました。

 特に、ゲームを起動すると静かなBGMと共に現れたボールが、曲がアップテンポになるタイミングに合わせてショットされるという展開はインパクト大で、今でもそのオープニングデモをはっきりと憶えているほどです。

パッケージイラストとほぼ同じタイトル画面(左)ですが、ボールが打たれて飛んでいくという展開の後にタイトルが描画されます(右)

 基本的なゲームシステムはシンプルで、タイミングに合わせてスペースキーを押すというものです。最初に打つ方向を決めるのは従来のゴルフゲームと同じですが、次にボールの上中下どこを狙うかを選ぶことになるのが新しい部分でした。これにより、上を打てば弾道の低い転がるショットを、下であればバックスピンをかけるといった打ち分けが出来るようになっています。

 この後は、ボールの左右どの位置に当てるのかを決定し、飛ばしたいパワーに合わせてタイミング良くキーを押すのみ。ボールが飛んでいくと、それに合わせて右画面が真上からの視点でボールを追いかけながらスクロールしていく様が表示されます。

 慣れると当たり前のように思うのですが、最初に見たときは本当に驚いたものです。ただし、本作ではコースの長さはわかるものの残りの距離数やショット時の飛距離が表示されないため、憶えるまではマニュアルに書かれたクラブごとの飛距離を参考に自分で計算する必要があります。

ショットは、狙うべきボールの上下位置、左右位置、そしてショットの強さと3回スペースキーを押すのみでした。打つと、ボールが飛んでいくのに合わせて右画面がスクロールします。

 グリーンにオンすると右側の画面がグリーンの拡大図になり、クラブはパター固定、ボールも打つ強さのみをタイミングで選ぶようになります。

 芝目はコース全体図の右下に表示されていて、緑ならば芝は弱く、赤なら強いとなっているのを参考にパッティングし、カップインさせれば1ホール終了です。18ホール回るとクラブハウスが表示され、素敵なBGMと共にエンディングが流れるのは、さすがビジュアルのテレネットといったところでした。

ボールがグリーンにオンすると、右画面がグリーンの拡大図になります。芝目は画面左側のコース全体図右下に表示されているものの、距離感は何度もプレイして憶える必要があります。

 難解な操作方法などは特になく、この時期のゴルフゲームとしてはかなり完成度が高いことと、テレネットらしい耳に心地よいBGMが、本作を有名にしたのではないかと考えています。

9ホール終えたときとラウンド終了時期にはBGMと共にビジュアル画面が表示され、プレイヤーを労ってくれます。エンディングのCGは最後に、クラブハウスの灯りが消えるという洒落た演出も。

 この後、追加コースのみが数種類発売されていますが、それを考えると『アルバトロス』がいかに当時のゴルフゲームとしては人気があったのかが窺えます。とはいえ、以後はほぼ同時期に発売された『ファイナルゾーン』や『夢幻戦士ヴァリス』といったアクション寄りのタイトルをリリースし、日本テレネットとしてさらなるヒットを飛ばしていきます。

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