ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

前作から大幅にパワーアップして舞台は全国に! 『信長の野望 全・国・版』

今作からプレイする大名が選べるようになったと言うことで、パッケージには顔の描かれていない鎧装備の人物が中央に鎮座しています。プロデューサーはもちろん、シブサワ・コウ氏です。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、光栄の名作シミュレーションゲーム「信長の野望」シリーズの第2弾『信長の野望 全・国・版』となります。発売は1986年。

 前作『信長の野望』は数多くの機種に移植されただけでなく、熊本県では“熊本県全小学校納入指定ソフト”になるなど、大人気を得ました。そんな、大ヒット作の2作目として登場したのが『信長の野望 全・国・版(以下全国版)』です。広告では“昭和62年前半堂々実売実績第1位を獲得”と謳われていました。

この頃は「シブサワ・コウ三部作」と題して、「信長の野望」シリーズの他に『三国志』『蒼き狼と白き牝鹿』が前面に打ち出されていました。ちらりと見える『タイムエンパイア』は、非常に難易度の高かった記憶があるRPGです。

 マニュアルには「“(前略)17カ国では物足りない。ぜひとも全国を統一してみたい”と思われた方も多いと思います。また『信長の野望』に対する改善案も考えられたと思います。そういったユーザーの方々の声を数多く取り入れ、よりおもしろいゲームにする為に、この『全国版』は色々な趣向を凝らしました」と書かれているように、前作から数多くのパワーアップが行われていました。

 1番の特徴は、支配すべき国が17カ国から50カ国へと増えたことです。前作は、織田信長の本拠地である尾張を中心とした17カ国が舞台でしたが、今作では北は蝦夷から南は九州までと範囲が拡大し、全部で50名の大名が登場します。プレイヤーはそのうちの1名を選び、そこから全国統一へ向けての道のりを歩き始めることとなります。以前と同じ17カ国モードでのプレイも可能ですが、当時はまったく遊びませんでした(笑)。

 ほかにも、『信長の野望』での同時プレイは2人まででしたが、『全国版』では一気に8人までが楽しめるようになっていたり、各大名に顔グラフィックがついたり、地図や戦争がより見やすくなったなど、さまざまな強化も行われました。

パッケージの中には、マニュアル「信長の野望 戦国兵法書」の他に、戦国時代の勢力図が描かれた「戦国地図」と、シブサワ・コウ著となる「戦国武将列伝」「覇者への道」が同梱されていました。これらは、どこにも“天下統一”という単語が用いられていないのがおもしろいところです。

 ゲームは、史実で桶狭間の戦いが行われた1560年からスタートです。プレイヤーは年に4回、季節ごとにランダムな順番で回ってくるターンにコマンドを入力し、17カ国または50カ国の統一を目指します。そのためには、民の忠誠心を上げつつ豊作になるよう国を整え、同時に兵を調達し万全の備えをしておく必要がありました。ある程度、国に地力がついたところで戦争を仕掛け、領土拡大を図っていきます。

プレイしていくと、季節の変わり目には一揆や謀反、戦争などで武将が入れ替わることもあります。すると、見たことも聞いたこともない名前に……。なお、コマンドは全部で21種類ありますが、最初は忠誠心をアップさせるべく民や兵に施しを行っていくのが良いでしょう。税率は、上げすぎると一揆が起きる危険が。

 ただし、その間も民や兵の忠誠心に気を配っておかないと、謀反や一揆が発生して大変な事態が起きることもあるので注意が必要です。こうして領土拡大に励みながらゲームを進めていき、見事に全国を統一できればエンディングを迎えることが出来ました。ちなみに、後のシリーズでも収録されることとなる歴史イベント「本能寺の変」は、本作で初登場となります。

戦争になると、各国独自の地形の元で戦うこととなります。なかには、山を挟んでグルグル回って移動し続けられる地形もあるため、そのような場所であれば兵糧攻めも可能です。

 各武将のグラフィックが、有名人以外はそれほど差別化されていなかったり、ゲームを始めるときの難易度選択で難しくすると、いきなり戦争を仕掛けられて負けてしまうなど、こなれていない部分はまだまだ多かったです。それでも、シミュレーションゲーム初心者でも理解出来るシンプルさと、前作には無かった豪華BGM(手がけたのは、菅野よう子さん)などが決め手となり、前作同様大ヒットを飛ばすこととなりました。

 そんな「信長の野望」シリーズは、2017年発売の最新作『信長の野望・大志』で、15作を重ねています。

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