ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

『SAVIOR(セイバー)』その滑らかなアニメーションは僕らの心を掴んで離さなかった……

パッケージに描かれているのは、主人公の“しんじ”と、オフェーリアです。裏には、マスカットの3人がカラーで掲載されています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、滑らかなアニメーションシーンが話題になったアドベンチャーゲーム『セイバー』を取り上げます。

 エニックスの広告で、美少女キャラクターが前面に押し出された作品といえば、『暗黒城』や『東京ナンパストリート』『ザース』『軽井沢誘拐案内』などがありますが、その中で最も有名だと思われるのが、今回取り上げた『セイバー』ではないでしょうか。

 マイコンフリークの高校生3人で結成したグループ・マスカットによって、1985年の10月にリリースされたアニメーションアドベンチャーゲーム『セイバー』は、ファンタジー世界を題材にしたアドベンチャーゲームです。当時は、グラフィック+テキストという定型アドベンチャーゲームのブームが徐々に去っていたこともあり、ソフトハウス側はアドベンチャーゲームの新たな形として、アニメーションを付加価値としてプッシュしていました。

 そんなタイミングで登場した『セイバー』は、広告によると「パソコンゲーム界初の快挙!完全(パーフェクト)アニメーションアドベンチャー誕生!」と謳われていて、その描画速度はなんと「瞬間描画速度0.075秒」!

当時掲載されたエニックスの広告では、一番大きなスペースを割いて取り上げられていました。紙媒体でアニメーションを伝えるべく、連続写真で表現している苦労がうかがえます。

 1985年といえば、まだまだPC-88シリーズ、X1シリーズ、FMシリーズが元気な時代でしたが、それらのハードではなく16ビットパソコンPC-9801シリーズを対応機種として発売された『セイバー』は、マシンパワーを活かして8ビットパソコンとの処理速度の違いを見せつけてくれたのでした。

 目パチや口パクなどのアニメーションが見られるアドベンチャーゲームとしては、スクウェアの『WILL』や『アルファ』、T&E SOFTの『ラブアドベンチャー プレイボーイ』などがありました。しかし、『セイバー』は“剣で切りつける”や“おばあさんがロッキングチェアで揺れる”など、かなり大きな範囲でアニメーションするのが大きく異なった部分です。

アニメーションシーンとしては、ロード中にしんじが走ったり、ロッキングチェアに座った老婆が揺れる(左の2枚)、神殿で出会ったアルクトルスが神父を切りつけるシーン(右の2枚)などがあります。どれも、初めて見た時は「こんなに滑らかに動くのか」と驚いたものでした。

 ストーリーのプロローグは、このようになっていました。

 私の名はオフェーリア。異次元の国、アルカス王国の少女です。国は数十年前まで戦乱の世でした。隣国の侵略による戦いでしたが、異国よりカストリウスという人物がやってきて戦乱を沈め、国を守り世界を統一しました。そこから生まれたのが、カストリウス伝説です。国に危機が訪れた時、勇者が鉄の馬に乗って異国から降り立ち、悪の侵略から守る。勇者は再び国に危機が訪れる時、意志の力が異国より若者を呼び寄せ、そのものに全てを託し勇者の魂を復活させる……もう二度と国に危機はやってこないと思われていたある日、妖術使いのザラスが現れて内乱を起こして兵士は死に、私は魂をペンダントに閉ざされ、この世界に飛ばされました。もう全てが終わり……そう思った時です、あなたが現れたのは。

 プレイヤーは主人公の“しんじ”となり、最終的には妖術使いのザラスを倒すべく物語を進めていくことになります。ゲームはコマンド入力式で進みますが、よく使われる動詞はファンクションキーに登録されているので、特定の場面で無い限りは、動詞を入力する手間が省けるのはありがたい仕様です。

コマンドは名詞+動詞という、オーソドックスなパターンを採用しています。一部、頭を悩ませる場面もありますが、答えが分かっていると40分ほどでクリア可能でした。ただしカナ入力のため、ローマ字入力に慣れてしまった今では、キーボードから文字を探すのに苦労します(笑)。

 ゲームスタート時からアニメーションがそこかしこに散りばめられているため、最初のうちはそれを見ているだけでも感心したものでした。当時は何となく“これが16ビットパワーか……”と思ったもので、そのときは8ビットパソコンでは真似が出来ないなと感じたものです。特に、広告でも使われているオフェーリア姫が涙を流すシーンはスムースに縦スクロールするため、初めて見た時は思わず「すごい!」と声が出てしまったほど。

主に使用する動詞はファンクションキーに登録されているので、活用すれば少しは楽になります。しかし、ペンダントからオフェーリアの魂を救い出すといった一部動詞は入っていませんので、頭を捻る必要があります。彼女の魂を体に戻してからが冒険の本番スタートです。

 35年が経過した今、改めてプレイしてみましたが、アニメーションシーンはやはり良く出来ている思います。とはいえ、あまり早い後期のPC-98シリーズ(R/D/Fシリーズなど)では情緒が味わえない(?)と思いますので、出来ればPC-9801FやPC-9801VF、または5インチ2DDのディスクが読める外付けドライブを接続したPC-9801EやPC-9801Mでのプレイをオススメしたいです。

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