ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

全国のパソコン・マイコンユーザーに衝撃を与えた『タイニーゼビウス』

ゼビウスの象徴でもある、アンドアジェネシスとソルバルウが大きく描かれたイラストが採用されたパッケージです。タイトルロゴの下に見える「全16面! ハードの限界に挑戦!!」というキャッチが誇らしげです。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、当時誰もが驚いたタイトル『タイニーゼビウス』です。

 1983年初頭にゲームセンターに登場したナムコの『ゼビウス』は、それまでになかった数々の要素を盛り込んだことなどもあり、一大ブームを巻き起こしました。そうなると、当時のパソコンユーザーとしては“あの『ゼビウス』を、自宅のパソコンでも遊びたい!”と考えます。しかし、アーケード版『ゼビウス』は、この頃発売されていた一般的なパソコンよりも強力なスペックで制作されていたため、“移植は困難だろう”と言われていました。ところが、その前提を覆して1983年12月にいち早く登場したのが、PC-6001版『タイニーゼビウス』でした。初めて広告を見かけた時には心底驚いたのを今でも憶えていますし、自宅にPC-6001が無いことを大いに嘆いたものでした。

1984年1月号の付録「スーパーソフトマガジン」の広告と、その数ヶ月後の裏表紙広告です。“ついに発売された「タイニー・ゼビウス」です(以下略)」とあり、リリース後は当時の「オールアバウトナムコ」によると“空前の大人気を呼び、お店では大パニック状態がおきてしまいました”とあったほど大ヒットしたとのことです。

 アーケード版と比べてマップが違ったり、『パックマン』のキャラクターが出現するなどのさまざまな異なる部分があったため、タイトルに“小さな”という意味の“タイニー(TINY)”が追加されましたが、誌面などに掲載されていた写真からは『ゼビウス』の持つ、独特の雰囲気を当時は感じとったものです。

空中の敵をザッパーで倒しつつ、地上の敵はブラスターで狙います。マップがアーケード版と違うので、逆に新鮮な気持ちで楽しめます。

 広告初登場は、1983年12月8日に発売された「マイコンBASICマガジン」1月号別冊付録の「スーパーソフトマガジン」です。ここでは『タイニーゼビウス』と合わせて、X1版の『マッピー』(価格3,500円ということで、テープ版かと思います)と、『パックマン』のPC-6001mkII版も掲載されていました。

海上エリアや川もあります。海では前方から飛来するバキュラをかわしながら、グロブダーを破壊して得点を稼ぎましょう。もちろん、バキュラは破壊不可能です。写真右に見える大きな黒い物体は、ガルザカートです。

 広告には“ハードの限界に挑戦!”“キャラクタ数19種!”“プロ・アマ・モード切替付き!”“ジョイスティック使用可!”“全16面”というキャッチが書かれていました。登場キャラクターとしては、パッケージの裏に描かれていた17種類と、画面写真で説明されていたザカート&アンドアジェネシスの他に、パックマンとアカベーが用意されています。

アンドアジェネシスが登場するだけでなく、地面に張り付かず浮遊します。ここまで再現されているとは思わなかっただけに、初めてプレイした時は“凄い!”と叫んだほどでした。

 実際にプレイして驚くのが、各キャラクターの再現度の高さでした。ソルバルウを始めグロブダーやバキュラ、アンドアジェネシスといったアーケード版でお馴染みのキャラが、見て即座に分かるようなレベルで出現します。これだけでも本作の意気込みが分かるというものですが、さらにアーケード版+αの要素として、ゲームの難易度を選べるようになっていました。アマチュア(A)は敵弾が前方にまっすぐしか飛んでこないですが、プロ(P)は斜めに向かってくるくるほか、敵の動きも若干速くなっているようです。弾が斜めに飛んでくるため非常に避けづらく、まさに“プロ”向け仕様でした。プロ難易度でプレイする場合は、ジョイスティックの助けが必要になるかもしれません。

時々、『パックマン』に登場するパックマンやアカベーが出現します。同じ画面内には、ソルの姿も……。

 遊んで感じた難易度は、アマチュアだと簡単でプロは難しすぎるという印象で、この中間があればほどよいかなと思いました。ちなみに、ザッパーはスペースキーを一度押すだけで3連射されるので、目くじらを立てて連打する必要がありません。キーボードを壊す心配が“あまりない”部分は、高ポイントといえるでしょう。

タイトル画面と、オプション設定画面です。オプション画面では、カーソルキーでパックマンとアカベーを動かして操作をジョイスティック・キーボードと、難易度のプロ・アマ選択を行います。

 作者である松島徹さんは、「RF接続して、テレビで見て欲しいです」と当時コメントしていますが、本作を手がけた時は中学生だったということで、『タイニーゼビウス』に関しては何から何まで驚かされっぱなしだった発売時でした。

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