ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

T&E SOFTのシューティング『レイドック』 ~ 魅せてあげよう1ドットのエクスタシー ~

パッケージには、敵陣で戦う自機・ストーミーガンナーのCGが描かれています。このイラストは容量の都合上、本編ディスクには入れることができず、別途添付のカセットテープからロードすることで見られました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、1985年末にT&E SOFTから発売された、MSX2用ムービースペースシューティングゲーム『レイドック』を取り上げます。

 1985年にMSX2規格が発表され同年にMSX2パソコンが登場すると、さまざまなソフトハウスがMSX2専用のゲームをリリースしていきます。今回取り上げた『レイドック』も、そんなMSX2専用タイトルの1本でした。本作には、以下のようなバックグラウンドストーリーがありました。

“魅せてあげよう1ドットのエクスタシー”のキャッチコピーは、今でも心に残っています。キャラクターデータなどは、同時に開発されていたMSX2用グラフィックソフト『Pixel 2』で作成されていました。当時の東京ラジオ会館(秋葉原)で開催されたATTACK'86にて、『ハイドライドII』と共に初お披露目されたのも分かります。

 惑星ベイムーントがギルセン軍におとされて以来、惑星の奪還作戦は幾度となく繰り返されていたが、いずれも失敗に終わっていた。そこで宇宙軍司令部は作戦を見直し、航空宇宙技術局が独自に開発を進めていた新型二連動独立型戦闘機・ストーミーガンナーの開発を援助。今回の作戦に使用を決定した。この二機はドッキング時の重火器の破壊力が大きく、くわえて単騎での運動性能の良さも目を見張る。二機はプロトタイプであるものの、戦術用レーザー・ATMを装備。パイロットの技量と経験次第で、使用を可能とした。しかし、予想以上に連邦宇宙軍の疲弊は酷く、パイロットは満足な教育もなされないまま惑星ベイムーント奪還作戦(オペレーション・レイドック)は始まってしまう……。

左は、起動直後の“DATA DISPLAY(データディスプレイ画面)”です。登録したパイロットのレベルや、使用可能なオプション兵器などが表示されています。次レベルまでの経験値が記載されていればモチベーションも上がるのに……と思いました(笑)。右は、出撃時の画面です。「チャレンジ!!パソコンアドベンチャーゲーム&ロールプレイングゲーム(山下章著)」に掲載されていた記事“RPGはこうして創られる”によると、この画面がパソコン初の“本当の”マルチ・ウインドウとのことです。

 プレイヤーは連邦宇宙軍の新米パイロットとしてストーミーガンナーを駆り、オペレーション・レイドックを成功させるのが目的です。しかし、本作にはエンディングというものは用意されていません。ゲームとして目指すところはハイスコア獲得と、パイロットレベル100への到達でした。

 初プレイ時にパイロット名を登録すると、レベル1からのスタートとなります。その後にプレイを重ねていくと少しずつパイロットとしての練度がアップしていき、最終的にレベル60以上でT&E SOFTへ階級申込用紙を送れば、宙軍少佐(レベル60以上)、宙軍中佐(レベル80以上)、宙軍大佐(レベル100)の階級章がもらえるという仕組みでした。現代であれば、敵を倒して経験値を得てレベルがアップしていくという仕組みから、シューティングRPGと表現したかもしれません。

各ステージは、長さが約4分ほどあります。シューティングゲームとしては長丁場ですが、プレイしていると意外にあっという間に過ぎ去ってしまいます。

 プレイ開始直後は新米パイロットということで、使えるのはストーミーガンナーに搭載されている武器のうち、ツインバルカン砲“ツイン”のみです。しかし、レベルが4に達するとツインがレーザービーム砲“トラ”へと変わり、レベル10になれば空対地ミサイル“ブルパップ”が同時に使用可能に! 自機はシールドを備えていますが、被弾や敵機の体当たりなどで減少し、0になるとゲームオーバーです。

奇数ステージは、宇宙での戦いになります。レベルが低い最初のうちは武器がツインなので、スペースキーを連打して攻撃します。途中には小惑星も登場しますが、これには自機だけでなく敵機も当たり判定がありますので、うまく利用しましょう。ラストには、自機の数倍もある巨大戦艦が待ち受けています。

 本作で驚かされたのは、初期ロード終了時にいきなりしゃべり始めることと、ゲーム中の滑らかな1ドットスクロール、そして美しいレーザーでした。ゲームセンターでは見慣れていた1ドットスクロールですが、まさかパソコン用ゲームでそれが見られるとは、当時は思っていなかっただけに、衝撃が大きかったです。

偶数ステージは、地上エリアが舞台となります。自機めがけて弾を撃ってくる地上物もありますが、単機で戦う場合はレベル10にならないと攻撃する手段がないため、逃げ回るしかありません。2人プレイならレベル5になれば、合体時に2P側が地上攻撃ミサイル“ブルドッグ”を撃てます。1人で遊んでいる場合は、ジョイパッドのボタンに重しなどを載せて押しっぱなしにしておくしかありません……。

 また、レーザービーム砲“トラ”はレベルが上がるほどに長くなっていくという特徴があり、レベル100では画面の3/4にも及ぶ距離になりました。トラは癖があり、自機が左右に移動するのに合わせて付いてくる(俗に言うワインドする)ため、慣れるまでは使いこなすのが難しいです。それでも、ツインからトラになったときの感動はひとしおで、その美しさにアーケード版『グラディウス』のレーザーを重ねていた人もいたのではないでしょうか。

 本作はその後、他機種にも移植されたり、パワーアップした『スーパーレイドック』として発売されるなど、人気を博すことになります。

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