ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

麻雀漫画がゲームになった『ぎゅわんぶらあ自己中心派』

パッケージ内にはROMカートリッジ1本とマニュアルが収録されていますが、このROMカートリッジはMSX1に挿せばMSX1仕様で、MSX2で起動すればMSX2仕様で(キーコンビネーションでMSX1仕様でも)起動します。パッケージイラストには、漫画版に登場する主な面々が描かれていました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、登場キャラクターの性格を反映した思考ルーチンや、FM音源を利用した“しゃべる”ことなどが話題となった『ぎゅわんぶらあ自己中心派』のMSX版を取り上げます。

 麻雀ゲームは、マイコン時代からソフトが発売されているジャンルの一つです。初期の頃はオールBASICで作られた作品も多かったですが、次第に洗練されていくと思考ルーチンに工夫が見られるなど、着実な進化を遂げていきます。そんな流れの中で生まれた『ぎゅわんぶらあ自己中心派』は、片山まさゆきさん原作の漫画『ぎゅわんぶらあ自己中心派』を題材として、作中に登場するキャラクターの思考ルーチンを再現するべく、麻雀には欠かせない“ツキ”という要素を取り入れた意欲作として登場しました。最初にリリースされたのはPC-88シリーズ版で、その後にX1シリーズ版とFM-7シリーズ版が発売されていますが、今回取り上げたのはMSX版になります。

ゲームが起動すると、他機種とは違い持杉ドラ夫がフィーチャーされたタイトル画面が表示されます。ちなみに、左側の2枚はMSXで、右の2枚はMSX2のオープニングです。色味が若干違う以外は、ほぼ同じでした。

 本作は、MSX(1)で起動するとMSX専用画面で、MSX2以降ならMSX2用の画面でゲームを進めることができます。さらに、あらかじめカートリッジスロットにFMパナアミューズメントカートリッジを挿すか、または一部MSX2+やMSXturboRであれば“オリジナルミュージックや効果音がFMサウンドになり、さらに音声合成出力でキャラクタがしゃべります(マニュアルより)”と書かれていました。ちなみにMSX2以降の機種を使用する場合は、起動時にGRAPHキーを押しておくことでMSX仕様の画面でのプレイが可能です。なお、捨て牌が一定数以上になるとスクロールアウトしてしまうので、SELECTキーを押すかメニューから“ステハイ表示”を選択すれば見られるため問題はないでしょう。

サイを振るシーンは、発売前に雑誌記事で何度も掲載されていましたので、憶えている人も多いかもしれません。なお、プレイヤーの代わりにサイを振ってくれるのは、バニーガールのますみちゃんです。なお、左はMSX画面、右がMSX2画面となります。

 用意されたモードは“フリー対戦”と“勝ち抜き戦”の2種類で、フリー対戦の場合はプレイ中に次の手を指南してくれる指導者の有無や、各キャラクターの特徴を出すためにツモの操作を行っている“ツキ”のアリ・ナシを選ぶことができます。ここでツキをナシにすれば、純粋に実力のみでの対戦ができました。なお、本作における“ツキ”を大まかに説明すると、和がり続ければより太く、無駄に振り込んでしまうと離れていくという仕組みになっているそうです。

こちらは、MSXで稼働させた時の画面です。現役でMSXを使用しているプレイヤーの年齢層を考えれば、牌が大きく表示されるMSXモードのほうが遊びやすいかもしれません(笑)。捨て牌が画面外へスクロールアウトしてしまったときは、メニューから“ステハイ表示”を選ぶと見られます。

 勝ち抜き戦では自動で、フリー対戦ではプレイヤーが対戦相手を持杉ドラ夫をはじめとした12人の中から選び、それ以降は通常の4人打ち麻雀と同じようにプレイしていきます。途中、アクションを起こせる牌が捨てられると点滅するので、カーソルキーの↓またはジョイスティックを接続している場合はBボタンを押すと表示されるメニュー画面から“ポン”や“チー”、“ロン”などの行動を選びました。

 こうして対局を進めていき、半荘が終了すると得点計算となり、最終的な順位が表示されます。その後、指導者が付いていなければタコ度診断(雀力判定機能)が行われ、プレイヤーのタコ度が診断される仕組みでした。

MSX2で動かした時の画面です。MSX版と比べてフィールドが広く、見やすいレイアウトとなっています。捨て牌が2段で表示されるため、一度に大量の情報を受け取れます。FM-PACを挿すか、主なMSX2+機種以降であれば、一部セリフを喋ってくれます。

 原作を読んでからプレイすると、確かに各キャラクターの性格が反映されている思考ルーチンなのがわかるので、当時は非常に感心したものです。また、同社の『シルフィード』でお馴染みの“ゲーム中に喋る”が本作でも活かされていて、臨場感をより高めるのに一役買っていたのも特徴でしょう。MSX版は、ROMカートリッジのため起動が速いのはもちろん、他機種版ではタイトル画面表示後にキャラクター紹介という流れだった部分が、持杉ドラ夫を主役としたタイトル描画(文字表示部分で、ちょっとしたアニメーション付き)という仕様になっています。

MSX版の広告では、MSX・MSX2両用であることの他に、マニュアルが充実していることも書かれています。

 さらに、付属しているマニュアルは豪華64ページ仕様になっていて、操作方法などのゲーム解説は10ページちょっと、残りは持杉先生の『麻雀入門』+キャラクター紹介という構成でした。まあ雀解説ページでは、『片山まさゆきの麻雀教室』で使用されているマンガのコマがふんだんに使われていて、麻雀のルールを楽しく憶えることができます。もちろん、登場人物12人の紹介も書かれているので、御三家版にしかない雀士紹介デモの代わりをしっかりと果たしていました。

そのマニュアルが、こちらになります。ゲーム解説よりも麻雀解説のページに多くが割かれているのがユニークな部分かもしれません。

 この後、翌年にはMSX2用として2作目も発売され、こちらも好評を得ることとなります。

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