ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち
超大作映画をアドベンチャーゲーム化した『アリオン』
2022年3月15日 00:00
当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、1986年に公開された映画『アリオン』を元にしたアドベンチャーゲーム『アリオン』です。
1980年代も半ばとなると、アドベンチャーゲームのブームは落ち着いてRPGが多数を占めることになりますが、そんな時代でも85年には美しいCGで話題となった『ルパン三世 カリオストロの城』が登場していました。その翌年となる86年にリリースされたのが、こちらも映画のセル画をデジタイザで取り込み本編で使用している『アリオン』です。今回使用したPC-8801シリーズ対応版では、PC-8801mkIISR以降の機種で起動するとオープニングBGMが流れる仕組みでした。マニュアルには、美しいセル絵と共にプロローグ部分が以下のように記されています。
トラキアの荒野にたたずむ一軒家に、少年アリオンは盲目の波はデメテルと暮らしていたが、ある時この地を訪れた伯父のハデスにだまされ、冥府の世界へと連れ去られてしまった。闇の洞窟でとらわれの身となったアリオンに、ハデスは怪物をけしかけ、その見事な戦いぶりから少年がティターンの血族であることを確信した。ハデスはアリオンに血族の呪われた因果を語った。父王クロノスの死後、ティターン王家の三兄弟は支配権を3人で分割した。長男ハデスは地底の王、次男ポセイドンは海の王、三男ゼウスは地上の王の地位を獲得したのである。そして、アリオンの母は呪いが原因で盲目となり、その源はオリンポス城で権威を振るうゼウスなのだとハデスは教えた。アリオンは母を呪いから救うべく戦いを決意し、獣人ギドを従え旅立つのだった。
プレイヤーは主人公のアリオンとして、母を救うべく行動することになります。アドベンチャーゲームではありますが、単語探しに悩まされる面倒なコマンド入力方式ではなく、画面右側に表示された枠内のコマンドからテンキーで動詞を選びリターンまたはスペースキーで決定するコマンド選択式を採用していました。この方式の場合、すべての選択肢を試せば必然的にクリア出来てしまうという作品もありましたが、『アリオン』では意外な手で総当たり方式を回避しています。それは“コマンド選択後に一定時間が経過すると別のメッセージが表示される”というものでした。
例えばこの場面、コマンドから“さがす”を選んでも“なにもありません”と返ってくるのですが、そのまま数秒放置しておくと“よくさがすと、いわかげに、オノがあるのをみつけました。”というメッセージが表示されるのです。このような仕掛けが何カ所かに設定されているため、ただ単に全コマンドを実行しても先へと進めないようになっていたのでした。
ちなみに、この手のゲームは原作や映画を経験していないと理解するのが大変だったり、仕掛けられた罠をクリア出来なかったりすることが多いのですが、幸いにして本作はそのようなことはありません。むしろ上記のような仕掛けさえ分かれば、あとは通常のアドベンチャーゲームと同じく知恵と工夫で何とかなるようになっていました。
ある程度プレイを進めていくと、敵が行く手を塞ぐシーンが登場します。すると、これまでとうって変わり、以前に紹介した『タイムシークレット』や『タイムトンネル』のようなコマンド選択式の戦闘シーンが展開! 相手の体力は表示されないもののアリオンのHPは■のゲージ数で残りが分かる仕組みで、こちらが0になる前に敵を倒せれば勝利となりました。負けそうになった時は、一度戦闘を中止してから再び“たたかう”コマンドを選ぶことで、アリオンの体力が完全な状態から始めることができます。これを利用すれば、戦闘で敗北を味わうことはまずありませんでした。アリオンの攻撃が当たるか、敵からのダメージを受けるかも乱数に寄った部分があったため、戦闘シーン自体がある意味スパイスのような感じだったと言えるかもしれません。
デジタイザで取り込まれ、黒・青・赤・紫・緑・水色・黄色・白というわずか8色で描かれたとは思えない美しいグラフィックで再現されたセル絵は50シーン以上が用意されていたので、映画を鑑賞したユーザーであればパソコン上で思い出を追体験することもできたのではないでしょうか。難易度自体もそれほど高くはないので、マッピングとメモをこまめに取れば無事にエンディングを迎えることができると思います。その後、20分弱ほど放置したままにするとレスフィーナのCGが描かれますので、クリアした人はぜひ見てみてください。
ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち 連載一覧
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- RPGが一気に身近なものに感じられた「ハイドライド」
- “スペースキーに重し”がキーワード!? 「夢幻の心臓II」
- PC-8801mkIISRの人気を不動のものにした「テグザー」
- ボクたちの堀井雄二さん作品といえば、コレ!「ポートピア連続殺人事件」
- 誰もが知っている“ボンバーマン”の元となった「爆弾男」
- “ボンドソフト”の名前を一躍有名にした名作「タイムシークレット」
- 日本での初期RPGの代名詞とも言える「ザ・ブラックオニキス」
- MSX用のベストゲームとして挙げる人も多い「グラディウス2」
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- 光栄の歴史シミュレーションシリーズ、その柱となる1本にして今も新作が続く「三國志」
- ザインソフトの名前を広く知らしめた「トリトーン」
- 数多くの機種にハイクオリティな移植を実現したマイコンソフトの「パックマン」
- スクウェアとサンライズがタッグを組んだ「クルーズチェイサー ブラスティー」
- 可愛らしい絵柄とは裏腹に歯ごたえあるアクションゲームだった「メルヘン・ヴェール」
- 全世界で大ヒットを記録した歯ごたえあるアクションパズルゲーム「ロードランナー」
- テレネットの底力がいかんなく発揮されたアクションゲーム「夢幻戦士ヴァリス」
- これぞハードボイルドゲームの傑作といえる1本「マンハッタン・レクイエム ~闇に翔ぶ天使たち~」
- X68000の機能を活かしたアーケードクオリティのアクションゲーム「GENOCIDE」
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- 今も続く「A列車で行こう」シリーズの元祖がここにある
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- 初期アドベンチャーゲームの傑作にして、今も語り継がれる「デゼニランド」
- 巨大なスケールと隠された謎の多さに驚かされた名作第2弾「ハイドライド2」
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