ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

「女神転生」はここから始まった!『デジタル・デビル物語 女神転生』

パッケージは、OVA版『デジタル・デビル物語 女神転生』と同じで、描いたのはアニメーターの北爪宏幸さんです。その下には小さく権利表記が書かれていますが、最後に開発協力として“(株)アトラス”と記されてありました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、「女神転生」と名前がつくタイトルの中でも最初に発売された、日本テレネットの『デジタル・デビル物語(ストーリー) 女神転生』です。

当時雑誌に掲載されたOVAの広告ですが、これによるとパソコン版は6月10日発売と書かれていました。ほかにも、広告のパターンはいくつかありました。
パッケージには、これらのものが同梱されていました。操作マニュアルではなく、魔導書(USER'S MANUAL)となっているのがユニークです。

 日本テレネットと言えば、『ファイナルゾーン』や『夢幻戦士ヴァリス』などのタイトルでビジュアルシーンとゲームパートを合わせた作品作りを行い、大ヒットさせたソフトハウスとして有名ですが、そんな同社が1987年に発売したソフトが、今回取り上げた『デジタル・デビル物語 女神転生』です。

 当時の雑誌に掲載されたOVAの広告を見ると、パソコン版が1987年6月10日発売予定で、ファミコンソフト版が6月発売予定/発売元・価格が未定とありました。パソコン版は詳細が載っている事や、このほかの雑誌でも6月中旬発売という広告が掲載されていたことから察するに、ほぼこの予定通りに発売されたとみて問題無いかと思われます。

 なお、ファミコンソフト版は後にナムコ(当時)より、OVA広告記載の6月から3ヶ月遅れた同年9月に発売されましたが、世の中に最初に登場したのは間違いなくパソコン版なので、「最初の『女神転生』はパソコン版なんだよ!」と周りに言いふらしても問題無いでしょう(笑)。そんな本作のストーリーは、以下のようになっています。

マニュアルには記載されていませんが、オープニングデモ中に“C”キーと“D”キーを同時に押すとミュージックモードに入れます。本作でも、小川史生さんや恋瀬信人さんの手がけた素晴らしい名曲の数々を聞くことができます。

 天才プログラマの異名をとる好青年の中島朱実は、高校3年生の17歳。そんなある日、クラスに1人の少女が転校してくる。白鷺弓子と紹介された彼女は、なぜか中島に心引かれるものを感じるのだった。

 このとき、中島は既に悪魔を呼び出すプログラムを完成させ、プログラムによりコンピュータ内でデジタル化して魔界から降臨したデジタルデビル“魔神ロキ”の力と権力を得ていた。その代償として女の犠牲を要求していたロキは、次のターゲットとして弓子を選ぶ。

 しかし、悪魔に取り込まれる一瞬、彼女の体内に“もう一人の彼女”ともいえる前世の姿、女神イザナミが宿る。必死に抵抗するものの、弓子が我に戻った瞬間にロキは弓子をクリスタル化して鷲掴みにし、魔界へと消えてしまう。

 すべてを目の前で見ていた中島へ女神イザナギは、ロキによって人間界は地獄と化してしまうことと、それに対抗できるのは中島しかいないことを告げ、武器としてヒノカグツチをつかわし、消えてしまう。右手に神秘の光を放つ剣を握りしめた中島は苦悶の末に決意し、魔界へと旅立つ……

敵はいたるところに潜んでいますので、通路の陰から狙って撃つのが効果的です。相手の射線からずれた場所で斜め方向に攻撃すれば、ダメージを受けずに倒せることも多いです。

 原作となった小説での舞台は現実の世界でしたが、パソコン版は“飛鳥の石舞台古墳の地下から魔界に足を踏み入れる”という設定のため、登場するのは魔界そのものとなっていました。また、月刊マイコンBASICマガジン1987年9月号に掲載されたテレネットスタッフのコメントによると「アドベンチャーゲームにしたくなかったために、小説の内容を踏まえながらもゲーム性を高めるため、弓子には悪魔にさらわれてクリスタルの体にされてしまった少女の役を演じてもらっています」とのことで、このあたりも原作小説とは違っていました。

 本作ですが、プレイヤーは魔界へと降り立った中島として、生命の木になぞらえた全20ステージ160フロアにも及ぶマップを探索しながら、ロキを探し出して倒すのが目的となっています。各面は生命の木にあるようなつながり方をしているため、それを理解しなければ思うようには移動できません。先に進むにはある程度のマッピングが必要になりますが、今なら当時の攻略記事を探し出すのが早いでしょう。

迷宮内には随所にお金やアイテムが落ちています。それらをすべて回収しながら先へ進みましょう。取り忘れても、戻れば問題ありません。

 主人公はテンキーまたはカーソルキーで4方向に移動できますが、攻撃時は2つのキーを組み合わせることで斜め方向へも撃つことができます。これを上手に利用して、障害物の陰から狙うのが攻略方法の一つです。攻撃時は、キーを押しっぱなしにしておけば連射もしてくれますので、連打する必要がないのはありがたい限りです。敵は“攻撃に思考・論理パターンを持つ”と広告に書かれてるように、何もせずにぼーっとしているものもいれば、主人公を見つけると執拗に追いかけてくる相手もいます。どんなタイプの敵かを見分けられるようになれば、被ダメージも減るでしょう。

一部のフロアには、祭壇が設置されています。そこに移動すると、女神イザナミが登場してヒントを教えてくれるので、忘れずに立ち寄りましょう。

 主人公が最初に持っている武器はヒノカグツチですが、無限に使える代わりに射程が短いという特徴があります。ステージ内ではほかの武器を見つけられるのですが、剣以外の武器には残量が設定されているので、むやみやたらに使えばあっという間に無くなってしまうのが悩み所。なお、様々な情報を提供してくれるハンドヘルド・コンピュータもフロアのどこかに落ちているので、最初はそれを見つけることを目標にして動くのが良いでしょう。また、途中で捕らえられたケルベロスや弓子を救出できれば、追加戦力として一緒に戦ってくれます。

 改めてプレイしてみると、自キャラが4方向にしか動けないのに敵は8方向移動ができるため、追いかけてくる敵に対しては避けるのが難しかったり、マニュアルに書かれている情報があまりにも少なく雑誌の攻略記事などで補完しないと意味がわからない、というのが気になりました。回復薬をゲットすべく歩き回っているうちに、回復量より多くダメージを受けてしまうというのも痛い部分です。いろいろわかってから遊んでみれば面白いのですが、体力回復の手段がもう少しあれば当時の評判も変わったのでは? と今更ながら思いました。

 現在プレイするのはなかなか難しいですが、当時遊んで良く分からなかった、という人はぜひこの機会に再び挑戦してみてほしいものです。

床が黒くなっている部分は、そこへ移動するとワープします。フロアの中には壁に囲まれて入れない場所がありますが、そこへはワープでしか移動できないので、隅から隅まで探索する必要があります。
オープニングデモをPC-8801mkIISR実機にて稼働させ、それを録画した動画を掲載しておきました。現在ネット上で見られる動画はタイミングが合っていないものが多いですが、オープニングで“女神転生”の文字が1文字ずつ、曲のリズムに合わせて表示されるのが高解像度(24khz)の4MHzで稼働させた実機版となります。ちなみに低解像度(15KHz)では映像が若干早く進んでしまうほか、8MHzでは“TELENET”や“デジタルデビル物語”の文字表示処理がスピーディになり、“女神転生”の文字が現れるタイミングがリズムからずれます。

ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち 連載一覧