ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

RPGの歴史を大きく変えた『イース』

パッケージは、ゲーム中に登場する「イースの書」をモチーフにしたデザインを採用しています。帯がないと、非常にシックな印象を受けるガワでした。
これは、初登場時の広告です。主人公らしき人物と魔物が戦っているシーンが描かれていますが、RPGという以外はどのようなゲームなのかがわかりづらいです(笑)。左のキャラはアドルに見えなかったり、イースの書らしきものも1冊しか描かれていないなど、非常に謎が多かったです。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、2022年に生誕35周年を迎えた今も最新作が発売され続けているシリーズ作品の1作目にして、それまでのRPGとは一線を画したコンセプトに基づいて制作された傑作『イース』です。

 1980年代中盤、ブームのジャンルがアドベンチャーゲームからRPGへ移り始めると、同ジャンルに特化した数多くの作品が登場します。しかし、それらのほとんどはアドベンチャーゲーム時代にあった“難しいほど長く遊べて良い”というコンセプトを受け継ぎ、複雑なマッピングを必要としたり、練り込みすぎたシステムでユーザーを悩ませることもありました。

発売後も、いくつかのパターンで広告が掲載されていました。下写真の、1987年10月号の雑誌『ログイン』に掲載されたものは、地色が文字と被って見づらかったためか、翌月も同じパターンで地色を変更したものが載っていました。

 この“難しいほど良い”というコンセプトをひっくり返し、“マニアではない一般の人々でも気軽にプレイ出来るような、取っつきやすいゲームを作ってみたい”というテーマのもとで生み出されたのが、アクションRPG『イース』でした。今回取り上げたPC-8801mkIISR対応版が発売されたのは、1987年の6月21日。今年2022年は、誕生から35周年という節目にあたります。

ゲーム開始直後はミネアの町から始まりますが、ここでいきなり外へ出て泉で金の台座を拾ったのちに町へ持ち帰って売り払い、その資金で装備一式を揃えてサラと会話を行うことで、労せずレベル2にアップさせることができます。

 プレイヤーはミネアの町にたどり着いた主人公のアドルとして、好奇心の赴くままに冒険へと出かけていきます。後に発売された『イース エターナル』などでは、アドルが最初に漂着したバルバドの町から始まりますが、オリジナル版ではミネアの町がスタート地点でした。

 マニュアルには「イースにはたくさんの冒険があります。これらを一つ一つ終わらせていくことで、本当の冒険の目的を知ることができるようになっているのです」と書かれていて、ゲーム開始直後は何をすれば良いのかわからない状態です。そこでまずは、町の人に体当たりをしまくると会話が成立し、様々な情報を得ることができるのでした。

 こうして小さな目的を集めては達成していくことで、次第にストーリーの核心に迫っていくという流れになっています。このようなタイプのRPGは当時としては非常に珍しく、しかも行き詰まるようなこともなくスイスイとプレイ出来たのが斬新でした。

 敵との戦闘方法は『ハイドライド』などでもおなじみの体当たりを採用していましたが、大きく違うのは敵と半キャラ分ずれてヒットさせることで、主人公がダメージを受けることなく相手だけに攻撃を加えることができる、いわゆる“半キャラずらし”が使えたことでしょう。ただし、敵のほうが強い場合は“キン”という高い効果音が出て、ダメージを与えることはできません。

 ゲームを進めていくと、要所要所で登場するのが“デカキャラ”といわれるボスクラスの敵です。同社が過去に発売した『ザナドゥ』にも登場していたデカキャラは、その名の通りアドルの何倍もあり、体全体を使った攻撃を仕掛けてきます。適当に動きながらアタックしているだけでは、いつまでたっても倒すことができません。1体ごとにコツがあるので、それを見つけられるかどうかが勝利のカギです。ゲームの進行上、中だるみが起きそうなタイミングでデカキャラが配置されているため、飽きずにプレイを続けることができたのも、本作の素晴らしい点だといえました。

神殿の奥へと進んでいくと、最初のボスとなるデカキャラ・ジェノクレスが待ち構えていました。このようなキャラが各所に登場して、プレイヤーの前に立ちふさがります。

 そして最大の特徴ともいえるのが、ゲーム全編を通して奏でられる美しいBGMでしょう。パッケージからフロッピーディスクを取り出して、ドライブに挿入し電源スイッチをオンにしたあと、ゲームが始まってスピーカーから流れてくるBGMを聞いて、あまりのすばらしさに全身が震えたものでした。

 多数の機種に移植された『イース』ですが、FM音源搭載機ではFM音源で、PSG音源を搭載したハードではPSG音源を駆使した、それぞれのシーンにマッチした楽曲が奏でられていたため、それを聞きながらゲームの世界に没入してプレイしていたのを今でもハッキリと思い出します。筆者は当時の初プレイ時、22時にゲームを始めて26時過ぎにエンディングを見た記憶がありますが、そこで流れたエンディング曲の「THE MORNING GROW」は、今なお名曲として心に残っています。

より強敵が出現する神殿地下の最深部でボスを倒せば、次は真っ暗な廃坑を探索してボスと戦うことになります。スポットライト処理のため、周りが見えづらく、本当に暗闇のなかを探検しているような雰囲気にさせてくれました。

 『イース』は機種ごとに若干異なるエンディングが採用されていましたが、当時は自分が所有するハードでしか見たことがなかったため、他機種でクリアしたユーザーと話すと微妙に会話がかみ合わないことがあったのも懐かしい思い出です。ちなみに発売日は、X1/X1turbo版が7月25日、PC-9801版が8月28日、FM-7用5インチ版と/FM77AV用3.5インチ版が10月6日、MSX2版が12月10日となっていました。

町の人に話を聞くと、様々な情報を提供してくれます。ただし、その内容は断片的なものにとどまっています。“コンソール機向けのRPGのように、直接的なヒントをこれでもかと出している訳ではないのがパソコンゲームらしい”と、当時の書籍にも書かれていました。

 『ロマンシア』からメディアミックスを強力に展開していた日本ファルコムは、本作でも音楽CDのほか小説、コミック、ゲームブックなどだけでなく、1989年11月21日からはOVA版『イース』も発売しています。

 本作が発売された翌年には、続編となる『イースII』が登場し再び大ヒットを飛ばすことになりますが、それはまたの機会に譲るとしましょう。

ダームの塔には、数々のワナが仕掛けられています。そのなかで、今後の旅でも何かと世話になるドギとの出会いも待っています。
電波新聞社から発売されている「CHALLENGE! Personal Computer A.V.G&R.P.G III」には、『イース』のプロトタイプ版の写真が掲載されていました。記事によると、当初は草原に魔物ではなく、ニワトリなどの家畜が配置されていたそうです。

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