ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

散々苦労させられた『サザンクロス』

パッケージにはオリオン座をはじめとしたさまざまな星座が描かれていて、その下に主人公と思われる寝ている人物が配置されています。イラストからは、どのようなアドベンチャーゲームか想像が付きづらいです。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、バンダイから1984年に発売されたアドベンチャーゲーム『サザンクロス』を取り上げました。

 アドベンチャーゲームがブームになった83年以降、さまざまなソフトハウスからタイトルがリリースされました。しかし、知名度の低いソフトハウスが発売した作品は内容がイマイチだったりするという面も、若干見受けられる部分がありました。今回取り上げた『サザンクロス』も、それまでアドベンチャーゲームを手がけていなかったバンダイの作品と言うことで、あまり注目されてはいませんでした。そんな『サザンクロス』のプロローグは、このようになっています。

 -時は西暦1999年。あなたはサザンクロスに行き、フェニックスにカプセルをもらって、地球に帰ってこなければなりません。そのために、まず合い言葉を探し出し宇宙船を呼び出してください。必要なものは、あなたの頭脳とキーボードを打つ指です。では、無事帰ってこられんことを……。

こちらがタイトル画面です。当時苦労させられた人ならば、何度も拝んだ画面かもしれません。

 こうしてプレイヤーの、南十字星・サザンクロスへの冒険が始まります。自室にはボタンの無いテレビが置かれているほか、小さなパソコンも見えます。今でこそ、ボタンが無いテレビなら声で操作するとすぐに思いつくのですが、当時であれば気がつかなかった人も多かったことでしょう。まずはこの部屋を探し回り、ヒントとなるものを見つけなければなりません。アドベンチャーゲームに手慣れている人でも最初から悩むかもしれませが、そこはタイトル通りに“さんざんくろう”してください(笑)。

最初の場面では、いきなり“宇宙船を呼べ”と言われます。方法は2通りあり、正面のテレビと手前に見える机が鍵を握っています。机についている引き出しは、簡単には開かないようです。

 そんな本作ですが、特筆すべきはエンディングにたどり着くための解法が1つではないというところです。合い言葉を探し出す方法は2通りが用意されているほか、道中もクリア方法が複数あるため、一度ゲームを終えても違うルートを探して再び遊ぶという楽しみがありました。

 ただし、アドベンチャーとしての難易度はなかなか高く、宇宙船を呼ぶことすらできずに挫折してしまったという人の話も聞いたことがあります。筆者も久しぶりにプレイしましたが、宇宙船を呼ぶまでに1日かかってしまったほどでした。

無事に宇宙船を呼び出すと、主人公は宇宙船内へと強制的に拉致されます(笑)。ところが、異常事態が発生して宇宙船は墜落してしまいます。どうすれば宇宙船の外へ出ることができるのでしょうか?

 ところで、プレイした人ならばロード方法やタイトル画面で“START”と入力する始め方、プレイ中にリターンキーを押すとグラフィック画面が一時的に消えて1画面分のログが見られる点などが、『デゼニランド』『サラダの国のトマト姫』などと似ていると感じたかもしれません。本作は、昔からハドソンソフトが関わっているのではと言われていましたが、それらタイトルを手がけた中本伸一氏に確認を取ったところ、『サザンクロス』の制作にも関わっていたとのことでした。「バンダイのソフトなのに良く出来ている」と当時は話題になりましたが、そんな経緯があったのであれば、その完成度も頷けるところです。

当時のバンダイの広告です。『キン肉マン』や『ガンダム』、『マジンガーZ』などの版権ものタイトルが目立つ中に、さりげなく『サザンクロス』が紹介されています。

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