ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

キャリーラボのレースゲーム『F2グランプリ』

パッケージに描かれているのは、ドライバーのコクピット視点の風景です。前方にはライバルのフォーミュラカーが走っているという、ゲーム中のレースシーンを再現していました。「今、君のレーシングスピリッツは、完全燃焼」というキャッチも目を惹きます。記事中の写真はPC-88版を使用しているのですが、パッケージ撮影に際してビニール部分の汚れが取れなかったため、ここでの写真はFM-7版にしました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。

 今回取り上げたのは、1984年末から1985年春にかけて順次発売されたキャリーラボの“高速3Dグラフィックス+レーシングキットゲーム”『F2グランプリ』です。

 アーケードゲーム初期の頃にリリースされたレースゲームと言えば、『モナコGP』など真上から見たアングルのタイトルがほとんどでした。そこに変化をもたらしたのは、1982年登場のナムコ『ポールポジション』になるかと思います。疑似3D視点で展開されるレースシーンに熱くなった人も多いと思いますが、パソコンの世界では1984年に発売された雑誌『PiO』10月号に掲載された『走れ!スカイライン』が、似たようなアングルのレースゲームとなっていました。

『F2グランプリ』と近い時期に他の新作ソフトも発売されるということで、“キャリーソフトのTHE NEW 3”や“キャリーソフトのTHE NEW 5”という形での宣伝を行っていました。88版やX1版、MZ版は84年中に発売されたようで、FM版は翌年の1月から2月にかけて、98版などは3月にリリースされています。

 そして、同じ年の12月に発売されたのが、キャリーラボからリリースされた『F2グランプリ』です。マニュアルには明記されていませんが、プレイヤーはフォーミュラ2マシンのドライバーとしてコースを走り、完走を目指すのが目的でした。

 用意されたモードは5つで、1つ目はライバルカートのバトルを繰り広げながら完走を目指す“Race”。2つ目は、コースをプレイヤーカーのみが走る、練習走行モードの“Practice”。3つ目が、各コース別の記録が確認できる“Record”で、4つ目は使用キーモードの変更と一覧を見られる“Key function”。そして最後の5つ目が、ユーザーコースの作成やハイスコアの記録ができる“Editor”です。

タイトル画面やモード選択画面、各コースごとのタイム表示などは、黒地に緑の文字のみと非常にシンプル。そのぶん、サクサクと進みます。

 メインとなる“Race”および“Practice”モードでは、全部で9つのサーキットから選ぶことができました。うち1つはユーザーが作成したコースで、あらかじめ用意されているのは8コースとなります。

 1コースは、モナコ公国にある仮設サーキット。2コースは中華人民共和国の桂林自動車競技場で、3コースは日本の熊本サーキット。4コースはスペインのハラマ・サーキット、5コースがアメリカ合衆国のロングビーチ・サーキット、6コースがソビエト連邦のシベリア・サーキット、7コースは南アフリカ共和国のキャラミ・サーキット。そして8コースには、エジプト連邦の王家の谷サーキットとなっています。国名は、エジプト連邦以外は実在するものになっていましたが、サーキット場は一部を除き架空の名称を採用していました。もっとも、名称の使用許諾を取っていたかどうかは、今となっては謎ですが……

コース選択モードでは、走りたいサーキットを選ぶとコースの俯瞰図が見られます。あらかじめどのようなコースなのかを頭に叩き込んでおくことが、完走への近道となります。

 『F2グランプリ』には、レースゲーム初心者でも簡単に操作ができる“モード1”と、使用するキーは多いものの慣れると運転がしやすい“モード2”の2種類の操作方法が用意されていました。これは、メインメニューのモード選択画面でKey functionを選ぶごとに切り替わります。

 まずは練習走行で、操作方法を学ぶことから始めます。5周走り切ることができれば完走なのですが、速い速度でコースから飛び出したり、Raceモードに出現するライバルカーに衝突すると、即座に爆発炎上してゲームオーバーでした。

練習モードではコース上を走るのはプレイヤーの車のみですが、レースモードではライバルカーが前方を走っているだけでなく、時には後方から追い越しもかけてきます。余裕があれば、景色に目を向けるのも楽しいです。エジプトでは、スフィンクスとピラミッドもお出迎え。

 ただし、そこまでの大事故にならなかった場合は、画面右に“ACCIDENT”の文字が点滅表示されます。これは、“プレイヤーの操作する車はいつ爆発してもおかしくない状態です”というお知らせなのですが、幸いにして自車に最高速度が落ちたりステアリングが効かなくなるといった性能劣化は発生しません。こうなってしまったらテクニックを駆使して走り抜き、ゴールが近づいてきたら速度を時速60km/hまで落とし、その状態でゴールラインを通過すると、ピットインしたものとして車は修理されアクシデント状態は解消されます。代わりに、ペナルティとして50秒が加算されてしまいますので、かなりのタイムロスとなってしまうのでした。

高速でコース外に飛び出したり敵車とクラッシュすると、マイカーは爆発してゲームオーバーに。アクセル全開でブッ飛ばすのではなく、常に慎重な走りが要求されます。

 この時期のゲームには、いわゆるエディットモードと呼ばれるコンストラクション機能が搭載されているのは珍しくないことでしたが、本作のそれは、自分だけのオリジナルコースを作ることができるようになっていました。メニュー画面でEditorを選択すると、単純な初期設定コースが表示されるので、それをベースにコーナーを作成したり移動させたりします。ここで、練習用の簡単なコースを作るもヨシ、実際にあるサーキットそっくりのレイアウトを作成するのも、楽しみ方の一つ。完成したコースは、テープ版ならテープのある限り書き出すことが可能なので、“オモシロコース”を大量に作って遊ぶことができました。

ちょっとした操作ミスやライバルカーにこすったりすると、画面右に“ACCIDENT”の表示がでます。これが表示されている間は、いつ爆発してもおかしくない状態。なんとか上手にこらえて、ピットインするほかありません。

 実際にプレイしてみると、ハンドルの操作感が思った以上にピーキーで、しかもスピードを出した状態でコースアウトしてしまうと即座に爆発炎上して、あっという間にゲームオーバーになるのが厳しいところでした。ハンドルを小刻みに(テンキーをチョン、チョン、と押す感じで)動かしながら、コーナーの手前ではシッカリ減速することを心がけないと、完走どころか1周目のゴールラインを見ることすら叶わないかもしれません。レースゲームが得意という人は、ぜひ本作にチャレンジして完走してほしいものです。

コースエディットは簡単で、コース上のポイントを移動させながらコーナーを作っていくだけです。ただし、作れるコーナーの数や角度、コースの全長には限りがあるので、その制約内で作成する必要がありました。

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