ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

レベルアップがなかったRPG『夢幻の心臓』、シリーズ3部作の第1弾

主人公と思われる人物と、ゲーム中に登場するモンスターなどが描かれたパッケージになっています。難易度が記されているのも、この時期にはよくある体裁でした。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、クリスタルソフトよりリリースされていたRPG『夢幻の心臓』です。

 アドベンチャーブームが落ち着きを見せてきた頃、入れ替わるように盛り上がりを見せたジャンルがRPGです。『ブラックオニキス』や『ハイドライド』といったタイトルが登場する中で、クリスタルソフトが発売した作品が『夢幻の心臓』でした。

“ロールプレイングゲームの決定版”と銘打たれて発売された『夢幻の心臓』ですが、このときはあまり認知度が高くありませんでした。

 剣と魔法が支配する黄泉の世界、夢幻界。この世界のどこかには、読みの秘密を握る“夢幻の心臓”が隠されているという。地上での闘いに敗れて命を落としたあなたは、死ぬ間際に神々への呪いの言葉を発したことで天国でも地獄でも無い、この不思議な夢幻界へと落ちてしまった。“夢幻の心臓”を30,000日以内に見つけて蘇らなければ、あなたは再び死んでしまい、その魂は輪廻の輪から切り離され、永久に続く苦痛の中に封じ込められてしまうのだ……。

フィールドは2D、ダンジョン内は3Dで展開します。ダンジョンで視界を得るには特定のアイテムか、または魔法を習得する必要があるので、入れるのは主人公を十分育成してからになるでしょう。

 プレイヤーは主人公となり、30,000日以内に“夢幻の心臓”を見つけるのが目的ですが、この“30,000日”、実際の時間で換算すると約80年になります。ほぼ平均的な人生1回分という設定が、なんとも不思議な気持ちにさせてくれます。その期間をかけて旅する夢幻界は非常に広く、マッピングをしなければ即座に迷子になってしまうほど。フィールドをウロウロしているとエンカウントする戦士たちや、町などで話を聞けいて手掛かりを入手し、先へと進んでいきます。

 本作のフィールドは2D、ダンジョンは3Dという、『ウルティマ』と『ウィザードリィ』を足したシステムを採用していました。そのフィールドも広大で、通常画面では5×5のサイズしか見えないため、序盤はすぐに迷子になってしまうことも。途中、魔法を憶えてしまえば、広範囲を見渡したり毒を治すことなどができるようになるため、一気に行動範囲が広がります。

さまざまな敵が出現しますが、人間型であれば“話をする”ことで高確率で戦闘を回避できる可能性があるだけでなく、情報を得られることも。もちろん、躊躇なく戦っても問題なしです。

 とはいえ、軌道に乗るまでが『夢幻の心臓』の難しいところでした。序盤は主人公が弱く、敵を倒して経験値を得てもレベルという概念が無いためパラメータがアップしないので、いつまでたっても強くなれません。そこがユニークなところで、実は強化のためには城下町でお城へ行き、お金を払いパラメータを鍛えてアップさせる必要がありました。HPも、病院でお金を払えば1回に上限の1割ずつ最大値を増やすことが出来る(最初は100で、アップさせると110、次は121……)ので、とにかくお金を稼がないと話が始まりません。しかし、そのバランスがうまく取れているだけでなく、この時期のタイトルとしては話を聞くことでそれなりの手掛かりが得られたため、じっくりとプレイすれば必ず先へと進めるようになっていました。

フィールドマップは広大で、一度に見えるのはそのうちの主人公を中心とした5×5の区域だけです。とある魔法を使うと、13×12の広範囲を見渡すことが可能に。

 厳しいのは、ゲームオーバー時にネックレスを持っていないと、それまで育てたデータを消されてしまうことです。この当時は、そんなゲームもいくつかあったので決して酷いものではありませんが(いややっぱり酷いですけど(笑))、何があってもキャラを守りたい場合は、セーブする時以外はプロテクトシールを貼っておくに越したことはないでしょう。

町では、パラメータを上げるべく修行したり、敵を倒した際に拾ったアイテムを売ることができます。装備品も買えますが、希に壊れてしまうこともあるため、お金はアイテムを買うよりも鍛錬に回すのが得策です。

 現在プレイしても面白いのですが、若干厳しいのが描画速度や読み込み回数などシステム面での遅さでした。当時のログインにも「ディスクからのロード回数がやたら多すぎる(中略)プログラム構造をもっと考えて欲しかった」と書かれていたりするのですが、実際に実機で遊んでみると、確かに待たされる場面が多いです。筆者は手元のPC-8801mkIIFRをV1Sモードに設定して、当時と同じ早さでプレイしていましたが、タイトル画面の描画からゲーム中まで、すべてがのんびりでした。そこで、PC-8801FE2を取り出して“V1H”“8MHz”に設定すると、かなりサクサクと進むように!

 これならば、今でも十分に遊べる速度になると思いましたので、『夢幻の心臓』とPC-8801FE2やPC-8801MCを持っている人は試してみてください。

【夢幻の心臓の動作比較】
実際に、PC-8801FE2を使用して速度がどのくらい変わるのかを試してみました。スタートから4分40秒まではPC-8801/mkIIでの速度(V1Sモード)で、その後はV1Hモード8MHzHに設定してのプレイスピードを撮影しています。これだけ違えば、実機でもかなり快適に遊べるのでは無いかと思います。

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