ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

現在も続く「大戦略」シリーズの始まり『現代大戦略』

渋いイラストが描かれたパッケージです。元になっているのは田宮模型がリリースしていた資料写真集で、「田宮模型の協力を得て、TAMIYA NEWS資料写真集-8の表紙写真を元にカバーデザインを構成しました。」と、裏面に記されています

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回はシステムソフトが1985年に発売した「大戦略」シリーズの1作目『現代大戦略』を取り上げます。

 1980年代前半のウォーシミュレーションゲームというと、『珊瑚海海戦』や『真珠湾沖航空戦』などの現実に起きた出来事をパソコン上に再現し、プレイヤーが采配を振るうものがほとんどでした。そんな時代に登場した新たなシミュレーションゲームが、1985年11月19日に発売された『現代大戦略』です。プログラマは藤本淳一氏で、氏が当時のシステムソフトに持ち込んだソフト『COMBAT AREA98』が元になっています。

発売月だった11月(雑誌では12月号)には、見開きで広告が掲載されていました。発売に先立ち、1万本の受注が取れたとのことです

 ゲームはプレイヤーとコンピュータが各国を操作し(最大4カ国)、相手の首都を占領すれば勝利となります。マップは60×60のヘックス(六角形)で表示され、各マスには10種類の地形いずれかが描かれています。そこを舞台に、プレイヤーとコンピュータが知恵を絞りながら戦いを繰り広げていくゲームでした。

 プログラムはBASICで記述されているので、当時の機種ではあちこちでもたつくのが気になりましたが、今ならばPC-9801Rシリーズと言った新しめのハードでプレイすれば、かなり快適に遊ぶことができます。

ゲームを起動すると、デモンストレーション画面が表示されます。各ユニットのディテールの細かさは、当時としては目を見張るものでした。この後にプレイマップを選択するのですが、シリーズを代表するマップと言えるアイランドキャンペーンは、この時から収録されています。

 ゲーム中に登場するユニットは、この当時の現代兵器を代表するものばかりで、爆撃機ならA-10、戦車はレオパルド、対空用戦車にゲパルト、戦闘ヘリならヒューイコブラなどが用意されていました。よく考えれば国を問わないごちゃ混ぜの編成ですが、それでも現代兵器を運用して戦えるということに、当時はかなりワクワクしたものです。

 ゲームはターン制で進み、1ターン目はユニットの生産を、2ターン目以降はユニットを移動させたり敵ユニットとの戦闘を行いつつ、相手の首都を目指して進軍していきます。マップの所々にはどこの国にも属していない中立都市や中立空港などが配置されていて、そこへ歩兵ユニットを移動させると占領となり、自軍のものとして使えるようになります。

こちらがゲーム画面です。上段左側に拡大マップ、右に全体マップが配置され、下段にはユニットを選択したときの情報や戦闘画面が表示されます

 こうして勢力を拡大しつつ相手の兵力を削ぎ、敵首都に歩兵を移動させて占領すればプレイヤーの勝ちでした。ちなみに、ユニットにはジャンケンのような力関係があります。爆撃機や攻撃ヘリは対空兵器に弱いが、対空兵器は戦車や装甲車に弱い、しかし戦車や装甲車は爆撃機や攻撃ヘリに弱い、攻撃機はヘリや爆撃機などには強いが高価で簡単に生産できない、などです。

 各国とも中立都市を占領して自軍のもとすることで資金が増加し、強力なユニットも作れるようになるので、まずは中立都市をどれだけ確保できるかが序盤での重要なポイントでした。

 そんな本作の特長と言えば、なんと言ってもアニメーションする戦闘シーンでしょう。本来、交戦を選択した時点で内部的には結果が既に出ているのですが、それを“砲弾を撃つ”や“爆弾で爆撃する”というアニメーションで逐一見せてくれるため、それまでのシミュレーションゲームと比べて臨場感が大幅にアップしていました。また、敵を倒すことでユニットが経験値を得て、一定数値を超えるとレベルアップするという考え方も盛り込まれています。このシステムは、後のシミュレーションRPGの先駆けだったとも言えるでしょう。

これがアニメーションする戦闘シーンです。静止画ではその臨場感が分かりづらいですが、実際にプレイすると思った以上に興奮してしまいます

 現在では、多数のシリーズが登場している「大戦略」シリーズですが、シンプルにして熱中できる『現代大戦略』をプレイしてみれば、シミュレーションゲームが苦手という人の考え方も変わるかもしれません。

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