ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

中村光一氏のアクションパズル第2弾『ニュートロン』

パッケージには、ゲームの舞台となる巨大なニュートンの木と主人公のロンくん、そして彼を邪魔する虫たちがコミカルに描かれていました。ゲームのアイデアは「高校時代、ぼけっと眺めていた木がヒントになっているんです」と、ログイン1984年3月号でのインタビューで語っています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、『ドアドア』を大ヒットさせた中村光一氏のタイトル第2弾となった『ニュートロン』です。

当初、1983年7月に発売された8月号各雑誌に“ENIX NEW GAME”として、『ニュートン』の名前で6月発売予定と紹介されました。そこから半年以上が経過した、1984年4月に発売された5月号各雑誌にて、ようやく発売中との広告が掲載されています。それらから考えると、パソコンソフト市場に登場したのは1984年4月のようです。

 1980年代前半は、様々なソフトハウスがプログラムコンテストを開催していました。優秀な作品の場合、コンテストによっては賞金100万円がもらえたりしたほか、大ヒットすれば売り上げの印税でウハウハ(笑)になることもあったため、文字通りジャパニーズドリームを目指して数多くの人々がコンテストに挑戦します。

 その中の一人で、エニックスの「第1回ゲームホビープログラムコンテスト」に応募し、見事『ドアドア』で優秀プログラム賞を受賞したのが中村光一氏でした。その彼が、2作品目としてエニックスより発売したタイトルが『ニュートロン』です。本作のストーリーは、以下のようになっていました。

 主人公のロンくんは、フルーツ王国の小さなニュートン村で、おじいさんと二人で暮らしていました。おじいさんはリンゴやミカンを収穫し、ロンくんがそれを木の下で受け取る役目です。ロンくんは早く収穫役をやりたいのですが、おじいさんはロンくんを王国一の農家にするために、それを許してくれません。ところがある日、ささいなことでおじいさんとケンカしてしまったロンくんは家を飛び出し、村はずれにある大きなニュートンの木の下で眠りについてしまいます。

こちらが、テープ版でのロード画面と途中画面です。画面が崩れていますが、この状態で正常に読み込めばゲームが始まります。なお、ディップスイッチの2-7をオフにしておかないと、ロードが終わっても起動に失敗しますので注意してください。また、ディスク版にはオリジナルキャラクターが作れるコンストラクションが付いていました。

 目が覚めると、彼の周りには神様と大勢の虫たちがいて、口々に言いました。「おじいさんの気持ちも知らないで、不孝もの!」「神様、こいつは木の養分にしちゃいましょう」そのとき、神様が立ち上がって言います。「こやつがどれだけフルーツを注意深く採ることができるか試してみてはどうかのう」それに対して虫たちは「僕たちが邪魔をしてもいいでしょうか?」と意見すると神様は頷き、「うまく採れたら、王国のお姫様との仲も取り持ってやろう」と、ロンくんに伝えます。

デモ画面では、操作方法などを教えてくれます。斜め移動はテンキーの1379を使用するので、なかなか難しいです。
1面では、足の遅い芋虫が敵として登場します。まずは、ここでゲームに慣れておきましょう。ラウンドが進むごとに朝から昼、夕方と変わっていきます。

 それからどのくらいがたったでしょうか。再び眠っていたロンくんが起きると、彼は神様によって竹かごにされてしまったのです!気を取り直して見渡すと、あの虫たちがニュートンの木の枝にいるではありませんか。あの夢は本当だったんだ……ということは、フルーツを集めればお姫様とも!? さあ、ロンくんのフルーツ採取が始まりました。

 プレイヤーは竹かご坊やのロンくんを操作して、ニュートンの木になるフルーツなどを各ラウンドで決められた数だけ採取するのが目的です。フルーツは、最初はつぼみですが、時間経過と共に徐々に膨らんでいき、花が咲いた後にフルーツの実になります。そのときにロンくんを真下に移動させてZキーを押すと、採取完了! 実になった直後に採れれば高得点ですが、時間が経つと点数が下がっていき、最後には落ちてしまいます。そうなるとミスになり、ロンくんの残機を失ってしまうことに。

花が咲き終わりフルーツになったら、真下に移動してZキーで採取します。実になる直前から待機してZキーを連打しておけば、確実に最高得点をゲット出来ます。ロンくんの笑顔が、とてもかわいらしい! 各ラウンドごとに回収すべきフルーツの数は、画面右下に表示されています。

 ロンくんはXキーで弾を投げることができるので、邪魔をしてくる虫はそれで撃退します。ただし、弾はニュートンの法則に従って飛ぶため、上に向かって投げれば一定距離上に移動した後に真下へ落ちてくるし、Xキーと4または6キーを押せば左右に弧を描いて飛んでいきます。画面の左右端に弾が当たったときは跳ね返ってくるので、それら特製を上手に利用することがコツでした。

 枝を移動するときは前作『ドアドア』と同じく、あらかじめ行きたい方向のキーも押しておくのが重要になります。その枝は、上下左右だけではなく斜めに生えているものもあって、そこには敵が移動してこないため比較的安全です。とはいえ、フルーツが落ちてしまえばミスになるので、ずっとそこにいるわけにもいかず……。このあたりのバランスが上手にとれているため、飽きずに長く遊べる作品となっていました。

2カ所ある、ニュートンの木で斜めに生えている枝は、敵が侵入してきません。序盤は、ここで虫を倒しながら花が実を付けるのを待つのが得策です。ただし、先のラウンドに進むと飛ぶ虫が登場したりするので、そう上手くはいきませんが。

 当時は、『ドアドア』と違って曲がり角がわかりづらいため、思ったように移動できず敵に触ってミスになるという事故が多く、そのおかげでなかなか先に進めず止めてしまったという人がいたという話を聞いたのですが、今プレイしてみるとそれ以上に敵の動きに翻弄されてミスすることが多かったです。虫はプレイヤーが想像するよりも賢い動きをするので、いかにしてフェイントをかけて攻撃するかが攻略のカギを握るでしょう。

 ちなみに、テープ版とディスク版では内容は同じですが、テープ版はシンプルなロード画面が表示されるところ、ディスク版では謎の少女が描かれるCGが用意されているので、気になった人はぜひディスク版でプレイしてみてください。

先のラウンドに進むと、様々な虫が出現します。毛虫は糸を出して枝からぶら下がってきたり、カマキリはせっかくなったフルーツを切り落とすなど、どの相手も油断ならないです。

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