ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

月刊アスキー編集部に侵入して破壊工作を行うゲーム『表参道アドベンチャー』

この当時にアスキーから発売されていた他のパッケージと同じく、グレーと白のツートンカラーという渋いカラーリングになっています。この中に、カセットテープ1本とマニュアルが入っていました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、アスキーが1982年3月に発売した「月刊アスキー」4月号に掲載され、後にパッケージソフトとしても発売された『表参道アドベンチャー』を取り上げました。

 アドベンチャーゲームは、画面に表示されたテキストを読みながらナゾを解いていくというスタイルが最初にあり、その後に画像をテキストを見ながら進行するタイプが登場しました。打ち込むコマンドも、当初は英単語を入力する方式が主流でしたが、カナ文字と英語が混ざっても受け付けるようになり、それはやがてコマンドを選択するという方式に進化しました。今回取り上げた『表参道アドベンチャー』は、画面にグラフィックが描かれない、表示されたテキスト文を読み進めながらクリアを目指すアドベンチャーゲームです。元々は、雑誌「月刊アスキー」1982年4月号に設けられたパロディページ「年刊ア・スキー」の特集“アドベンチャーゲーム”内の記事として掲載されたタイトルでした。特集内には“「表参道アドベンチャー」のあそびかた”と題して、ストーリーも書かれています。

『表参道アドベンチャー』が掲載されている「月刊アスキー」1982年4月号表紙と、ページをめくって表示される「年刊ア・スキー」の扉絵です。

 あなたは、ある斜陽のマイコン雑誌の編集スタッフです。今や飛ぶ鳥を落とす勢いの月刊アスキーをその座から引きずり下ろすために、その本拠地へ単身潜入し、何らかの破壊工作を行う任務を帯びて、悲壮な決意の元に出撃します。うまくやり遂げて帰れれば、無能な某を蹴落として副編集長に昇進できる可能性が高く、失敗するとしばらくの間、さるところで臭いメシを喰わなければならなくなるかもしれません。何らかの破壊工作によって、とにかく月刊アスキーの活動を停止もしくは大幅に遅延させることが出来れば、一応の目標は達成されることになります。要はその方法を考え出すことと、捕まったり足がついたりしないこと、それが問題です。

 という若干物騒な物語となっていて(笑)、プレイヤーは日曜日の白昼に月刊アスキーの編集部へと忍び込み、何らかの破壊工作を行い脱出するのが目的となります。

記事は6ページにわたり掲載されていて、うちプログラム(機械語のダンプリスト)が4ページを占めています。容量としては、約13kbytesでした。マニュアルにも、「年刊ア・スキー」部分が丸ごと掲載されていました。

 掲載されている「月刊アスキー」1982年4月号ですが、天地をひっくり返して表4(裏表紙)をめくると、「年刊ア・スキー」の表紙が現れるという仕掛けでした。そのため、ページ上の左右を見るとノンブル(ページ数)が、逆さに書かれているのが分かると思います。さらに、同ページ内にはダンプリストの間違いも書かれている親切さ(?)。このプログラムを入力しなくても、PC-8001版は3,500円で発売されましたので、苦労をしたくない・確実に遊びたいという人は、そちらを買えば問題ありませんでした。また、記事内にはMZ-80K/Cと、MZ-80Bで動かすためのプログラムも掲載されていましたので、同機種を使用している人は雑誌があればプレイできます。

情報はすべて文字なので、あちこちを調べまくって多くの手掛かりを得る必要があります。説明で表示される英語は、記事によると中学生レベルだそうなので、この記事を読む“大きなおともだち”なら問題なし?

 PC-8001版は、カセットテープからのロードが終了すると画面にはタイトル画面が表示されることもなく、文字だけで「Adventure #1 Version 1.0」との表記後、プレイヤーが置かれた現状が英語で表示されます。日本でアドベンチャーというジャンルをメジャーにしたタイトルの1つ、『ミステリーハウス』では説明は日本語でしたが、本作ではそれらを含めすべて英語。隣に辞書を置き、単語を逐一調べながらコマンドを入力していくというのが当時のプレイスタイルでした。

当時のアスキー編集部があった住所は青山瀬川ビル4Fなので、これを知っているとゲームでも迷わずに編集部へとたどり着けます。カギがないと入れないのであちこち探すことになりますが、ドアを開けるだけでいきなりゲームオーバーになる場面も(笑)。

 プレイヤーは月刊アスキー編集部へ何らかの破壊工作を行い、バレないようにビルを立ち去る必要があるのですが、日曜昼間なので当然ながら(珍しく?)編集部への入口にはカギがかかっています。まずは、このカギをどうにかする方法を見つけなければならないのですが、本作は持てる数が5つに制限されているため、かなり難しいです。

 今となっては製品版を手に入れるのは困難を極めますが、実機や「PasocomMin PC-8001」を所有していて当時の書籍を持っているという人はダンプリストを入力すれば遊べますので、ぜひ体験してみてください。

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