ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

サブリナ姫を救うホラーアドベンチャー『トランシルバニア』

1983年には通常パッケージ版が発売されましたが、その後に廉価版パッケージが登場しています。今回撮影したのは廉価版で、通常パッケージ版は9,800円でしたが廉価版は2,800円と、非常にお手頃な価格になりました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、1982年にペンギンソフトウェアからApple II版が発売され、その翌年にスタークラフトの手で国産機種へと移植されたホラーアドベンチャー『トランシルバニア』を取り上げました。

広告では、いかにも冒険しています、というビジュアルを全面に押し出したバージョンと、ゲーム画面を並べたビジュアル重視のバージョンなどがありました。どちらも1984年掲載ですが、ここまでは通常版の価格が書かれています。1985年12月上旬に電波新聞社から発売された「チャレンジ!!パソコンアドベンチャー・ゲーム」に取り上げられた時は、既に価格表記が2,800円になっていましたので、廉価版が登場したのは85年中頃かと思われます。

 1980年代初頭、日本よりも先にアドベンチャーブームが到来したアメリカでは、さまざまなアドベンチャーゲームが生まれました。その中でも評判となった作品は、少しのタイムラグを経てローカライズされ日本でも発売されたりしたのですが、そのうちの1本が今回取り上げた『トランシルバニア』となります。Apple II版はペンギンソフトウェアからリリースされましたが、日本語版はスタークラフトが移植を行い発売されました。

 1983年中頃に発売された当初は、広告にもあるように通常パッケージ版が販売されていましたが、1985年中頃にはプラスチックのケースに入った簡易パッケージの廉価版が売られるようになります。定価も改定され、一部ソフトに至っては従来の約1/4のお値段で買えるようになったことで、より手を出しやすくなりました。本記事で使用しているのは、その廉価版となります。ちなみに、通常パッケージ版時にはディスク2枚組でしたが、簡易パッケージ版ではディスク1枚へと変更されました。

ゲーム中はカタカナで、名詞+助詞+動詞の順番でコマンドを入力して進めていきます。ただし助詞は省略可能で、アドベンチャーゲームの入力方法としてオーソドックスな名詞+動詞のみでも受け付けてくれます。

 『トランシルバニア』は当時、電波新聞社から発売されていた月刊誌『マイコンBASICマガジン』の付録「スーパーソフトマガジン」にて連載されていた山下章先生の「チャレンジ!アドベンチャーゲーム」のコーナーで取り上げられたこともあるので、この時期のスタークラフトが移植したアドベンチャーゲームの中では比較的知名度が高いと言えます。そんな本作のストーリーは、以下のようになっていました。

 ある夜、美しい貴婦人が枕元に現れ「わたくしは、トランシルバニアの王女でサブリナと申します。領内に住むドラキュラ伯爵にかどわかされ、今は捕われの身となって深い眠りの世界をさ迷っているのでございますが、このはかない命も次の明月の晩には消え失せるものと知らされておりまする。わたくしはいまだ十七。この若さで死にたくはございません。どうか数ならぬ身をあわれと思し召して、我が身をお救い下さい」とあなたに告げた。

 あなたがトランシルバニアに到着したのは、青白い月の光が不気味な森林を皓々と照らしている満月の夜であった。一歩この国に足を踏み入れた途端、遠くで十二時を告げる鐘の音が聞こえ、ものの怪の気配があなたのまわりを包む。こうもりが飛び交い、ふくろうが啼き、囁く影、巨きな鷲、そしてオオカミ男があなたにつきまとう。

 あなたの勇気はこれら恐怖の連続に果たして耐え得るであろうか。果して幾多の不思議を乗り越えて、見事サブリナ姫を救い出せるであろうか……サブリナ姫の命は、全てあなたの明晰な判断と推理力にかかっている。

道中は不気味な場所ばかりですが、役に立ちそうなアイテムも見つかりますので積極的に回収したいところ。ただし、持てる数の上限は5つなのが悩ましいです。

 プレイヤーはサブリナ姫の命を救うべく、トランシルバニアの夜の町を探索し、先へと進んでいきます。この時代なので、システムはコマンド入力方式を採用していました。入力は「名詞」+「ヘ・ニ・ヲ」+「動詞」で行いますが、移動に関しては「キタ」「ミナミ」「ニシ」「ヒガシ」の動詞のみでOKです。また、「,」で区切ってコマンドを入力することで、一気にアクションを起こすことも可能でした。

 落ちているアイテムを拾うときは「×× ヲ トル」と入力しますが、一度に持てる数は5つと限りがありますので、むやみやたらに拾ってばかりはいられません。しかも、本作はクリアまでに時間(コマンドの入力回数)制限があるので、それを考慮しながら先へ進む必要もありました。そのため、最初のプレイでクリアするのは難しいのですが、何度かちゃんレンジしていくうちに効率の良い進め方が判明するので、諦めずにトライしたいところです。

こちらが歩いていると、突如として現れるオオカミ男。コイツは、逃げるか、または先にヤるかしか手がありません。相手を殺すには、それなりの武器が必要となるので、先に見つけておかなければなりません。この写真に写っているアイテムは、アイツに使えそうです。

 この時期のアドベンチャーゲームとしては描画速度がそこそこ速いことと、グラフィックが美しいことが特徴としてあげられるでしょう。これは、オリジナル版を手がけたペンギンソフトウェア社が、グラフィックツールを制作・販売していたことも無関係ではないと思われます。

 総画面数はそれほど多くはありませんが、ほとんどの場面には何らかの仕掛けが用意されているので、それらを解いていかないとサブリナ姫の命を救うことはできません。とはいえ、ごく一部にはダミーのシーンもあるため、あまりムキになってコマンドを入力するのも考え物です。

 ノーヒントでクリアできれば万々歳なのですが、それは無理だという人のために、パッケージ内にはコマンド・リスト付きガイド・マップも同梱されていました。しかし、『トランシルバニア』は単語探しよりも思考で解決できることの方が多いので、出来ればガイド・マップのお世話にならずにクリアしたいところです。

道の繋がりが複雑で脳内地図では難しいので、マッピング作業は必須です。紙に書き出すことで、意外な発見があるかもしれません。コマンドを「,」で区切って一度に入力すれば、間違えていなければきちんと行動を起こしてくれるので楽でした。

 今プレイするのはなかなか難しいかもしれませんが、持っている人がいたらぜひとも遊ばせてもらって下さい。

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