マイコン初期時代に流行した野球拳の1本、九十九電機の『美少女ひっぱがしゲーム』

カセットテープのケースに収められているパッケージが、いかにも当時という雰囲気を醸し出しています。

　当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、九十九電機から1983年に発売された『美少女ひっぱがしゲーム』を紹介します。

　マイコンやパソコンが少しずつ流行し出した1980年代前半は、流通しているソフトも比較的シンプルなものが多かったです。中でも、必ずと言って良いほどリリースされていたのが「野球拳」に類するタイトルでした。そんな中から今回取り上げたのは、九十九電機のブランド・ツクモオリジナルソフトから発売されていた『美少女ひっぱがしゲーム』です。

『美少女ひっぱがしゲーム』が掲載されていた時代の、ツクモオリジナルソフトの広告です。他にも、懐かしいタイトルが数多く発売されていました。

　同作は当時っぽいCGで描かれた女子高校生(?)と思われるキャラクターとジャンケン勝負するのですが、若干凝っているのが左手の動きです。プレイヤーはグー・チョキ・パーに対応したテンキーの1/2/3を押すのですが、そのタイミングに合わせて相手の左手がちょっぴり上下に揺れ、その後にグーチョキパーの手の形になる芸の細かさ。この、少しだけでもアニメーションするというのは、当時としてはかなり驚かされる演出でした。

最初に、対戦する女の子をMidoriとMayumiの二人から選ぶことになります。

よく見ると、手の形が微妙に異なっているのが分かるかと思います。なお、勝つと当然ながら脱ぐわけですが、どのようなCGが描かれるのかは想像で我慢してください(笑)。

　プログラムも、ゲームの説明に関してはBASICが担当していますが、メインとなるジャンケンやCGを描くといった作業はマシン語で行われているため、俗に言うライン&ペイントとは違い処理が早いのも特筆すべき点でしょう。コンピュータの思考ルーチンがどのようになっているのかが気になるところですが、プレイした限りではプレイヤーと五分五分くらいの勝率になるような感じでした。

選んだ女の子によって顔のグラフィックが若干異なりますが、セーラー服を着ているのと中の服装は同じです。ゲームタイトルも画面左に書かれているのですが、パッケージとは異なり『美少女引っ張しゲーム』となっています。

　もう一つの特長が、なぜか3人での戦いが繰り広げられているという部分です。ゲームスタート時に対戦相手を“Midori”と“Mayumi”から選ぶのですが、さらにプレイヤーの彼女(?)のユカリも自動的に参戦することになっているらしく、ジャンケンでユカリが負けるとCGでは描かれませんが彼女も脱いでしまい、彼女の残り枚数が0になると対戦相手とプレイヤーが服を着ていてもゲームオーバーになりました。何度かプレイしたものの、詳細が今ひとつ分からず……マニュアルが付属していれば良かったのですが、本作の説明文はカセットケースのレーベル裏に書かれたロード方法のみなので、真相を確かめるすべはありませんでした(笑)。

　ちなみに、同タイトルで一人の相手と対戦するバージョンも発売されていて、そちらは対象機種がPC-8801とPC-8001mkIIとなっていました。