ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

ロード時間の長さに驚くハチャメチャアドベンチャー『ななこSOS』

パッケージに使用されているのは、1本目のテープA面をロードし終えた直後の画面写真です。マニュアルの表紙は、パッケージのオモテ面をそのまま縮小したものになっていました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、テクノポリスソフトより1984年に発売されたハチャメチャアドベンチャー『ななこSOS』を取り上げました。

広告にあるように一気に5タイトルが発売されましたが、テープ版3,200円に対してディスク版は6,800円と倍以上の価格設定に。予算の都合上、テープ版を買う人がまだまだ多かった時代でした。

 アドベンチャーゲームというジャンルが勢いを増してくる1983年くらいになると、ソフトハウスなどが行っていたコンテストや雑誌投稿作品にも、様々な特色を持ったアドベンチャータイトルが見られるようになります。例えば、ストラットフォードコンピュータが募集したコンテストに応募された『ムー大陸の謎』や『ピラミッドの謎』などや、雑誌『I/O』に掲載された『魔女モヘカの館』といったタイトルが、そのような作品でしょう。

 1983年には雑誌『テクノポリス』も5月号にて賞金総額300万円のコンテスト募集を行い、同年8月末〆切12月発表というスケジュールが予定されていました。これは若干の延期になり、最終的には翌84年の4月号にて受賞作品が公開されます。その中で、アドベンチャー部門優秀作となったのが、今回取り上げた『ななこSOS』でした。他部門の作品としては、キャラクター部門優秀作としてPC-6001mkII/PC-6601用『ナウシカ危機一髪』が、シュミレーション(当時ママ)部門優秀作にはPC-8801用『TREKY'S DEMISE』、優秀作としてFM-7/PC-8801用『MISS MACROSS』、そしてテクノポリス大賞に輝いたのがPC-8801用『風の谷のナウシカ』です。これら5作品は、1984年3月21日に同時発売となりました。

スタート直後の場面です。プレイヤーが入力したコマンドは、会話が成立するときは吹き出しの部分に表示されます。かなりわかりやすく、漫画を読んでいる雰囲気を醸し出してくれました。

 『ななこSOS』のストーリーは、以下のようになっています。

 世界征服をたくらむDr.イシカワは、動物を巨大化させる薬、デカクナールを発明した。実験のため動物園をおとずれたDr.イシカワは、とりあえずそばにいたモグラさんに薬を飲ませてみた……。巨大化したモグラさんはDr.イシカワを連れ、地底深く消えてしまった。あとに残った薬ビンを見つけたのは、あの、ななこ、四谷、飯田橋の3人組だった……

ロード中はこのような感じで3段階に分かれて読み込みが行われていって、描画終了後にもう一度ロードが入り、それが終わると文字入力が可能になりました。

 プレイヤーはななことして、動物園でデカクナールを飲んで巨大化してしまったネコを元に戻すべく奮闘します。今回使用したのはFM-7用テープ版なのですが、最初に驚いたのは、そのロード時間の長さです。

 当時のソフトは、その大部分が10分もあればゲームが遊べるようになるのですが、本作は50分弱のテープ(が2本!)を採用しているようで、1本目のA面をロードし終えて実際にプレイ可能になるまで約21分かかりました。とはいえ、その間に何も行われないというわけではなく、最初にBASICで書かれたスタートプログラムが実行されてメッセージが表示されます。その後も自動的に読み込みが行われ、ロード一区切りごとに画面に青→赤→緑の順番でグラフィックが表示されていき、約10分ほどでタイトル画面が描画されました。

 ただし、そこで進行が止まるのではなく、またもオートでデータを読み込んでいきます。これまでと同じように青・赤・緑で画面を書いた後、ようやくスタート地点のグラフィックが描かれて文字入力ができるようになるのでした。この点に関してはマニュアルに「このプログラムはBASICとマシン語に分かれています。また、画面をたくさん持っているので、テープ2本、目いっぱい使ってます」とあるのですが、実際に表示される画面数は実は全部で10枚もありませんでした。

1本目のテープB面をロードすると、そこはウパウパ島。チョウチョしか見当たらないなかで、適切なコマンドを入力しないと先に進めません。

 本作はアドベンチャーなので、入力待ちの時にコマンドを入力するのですが、そこで使える単語が通常のアドベンチャーゲームとはまったく違います。一般的な“ミル”や“シラベル”などは受け付けず、いわゆる(?)ななこ語と呼ばれる“コマッタワァ”や“イヤーン”などを打ち込む必要がありました。まともにプレイするのであれば、漫画『ななこSOS』の履修が欠かせません(笑)。ほかにも、“トブ”や“ヘンシンスル”、“ナク”、“ヌグ”、“トウシスル”などの超能力を駆使したり、会話では“コンニチワ(コンニチハは不正解)”を使用するなど、思った以上にクセがあるため手強いです。

ハレホレ山のナハナ怪人に「迷路を通って行け」と言われたら、もちろん「ナナコ、ヤリマース」と!迷路は、上から見た図を描画したあとに3D画面に切り替わるので、その直前で地図を覚えておけば簡単。
野球拳では、負けると服を脱がされてしまいます。チャンスは5回あるので、その間に何とかしましょう。「全部脱いだトコロを見たい!」なんて言ってる人はいませんよね?

 『ななこSOS』にはアドベンチャーゲームだけでなく、進行上プレイしなければならないミニゲームも収録されていました。1本目のテープB面をロードした最後は3次元迷路、2本目のテープA面途中では野球拳、2本目のテープB面最後には40パズルをクリアしなければ先へは進めません。最初の3次元迷路は、迷路作成中に上から見た図を描画してくれるので、今なら完成直前に写真を撮影しておけば簡単です(ズルですが……)。野球拳は運が絡むため難しいですが、5回負けるまではゲームオーバーになりませんので、その前に勝ち数を稼いでヒントを聞き出し、それを元に相手の大好きなものへと“ヘンシンスル”できればクリアできます。

 本作の場合、内容もさることながら収録テープの分数が長いため、早めにデータをPCに録音して保存しておくなどの対策をとらないと、後々テープが伸びてロードできなくなる可能性があったり、データレコーダによっては勢いがつきすぎてリールを破損してしまう可能性があるのが怖いところです。持っているよという人は、テープに問題がないかをチェックしておくと良いかもしれません。

これが、ゲーム中最大の難関と思われる40パズルです。ここまでゴチャゴチャにされてしまうと、もはや元に戻せないのでは……

ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち 連載一覧