ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

130万ドルの契約金が動いたビッグタイトル『バルダーダッシュ』

主人公のロックフォードが宝石をゲットして逃げる最中、敵であるバタフライが襲ってくる様子が描かれています。このパッケージはブックスタイルと呼ばれるもので、1984年10月以降はすべてこの形に変更されました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、アクションパズルゲームとして大ヒットを飛ばし、各機種へ移植されたタイトル『バルダーダッシュ』を取り上げます。発売は1984年。

 1980年代前半は、アクションゲームとパズルゲームを組み合わせたアクションパズルのジャンルが盛り上がりを見せた時期で、各社がさまざまなタイトルを発売していました。そんな最中、1984年にATARI社から発売されていたATARI800向け作品として、アメリカのFIRST STAR SOFTWARE社からリリースされたのが、本作のオリジナル版となった『バルダーダッシュ』です。これに対して、アメリカのMicro Fun社がApple Computer社(当時)のパソコン・Apple IIなどへの移植権利料として、130万ドルの契約金を提示したことが話題になりました。

パッケージ裏には、“予測のつかない面白さに、なんと130万ドルの契約金が動いた!”と、赤字で大きく書かれています。1ドル=110円で換算すると、約1億4300万円という大金に。“史上最大の巨額なライセンス料”ともありますので、それだけのビッグタイトルだったと言うことがうかがえます。

 この後、“Apple II用にリリースされていた良質なアクションゲームを国産パソコンに移植する”ソフトハウスとして誕生した株式会社コンプティークによって、Apple II版が移植され国産機各機種向けとして市場に送り出されます。今回取り上げたのは、そのうちのPC-8801版『バルダーダッシュ』です。マニュアルには、このような文言が書かれていました。「ものすごい興奮と戦慄、冒険とスリル。世記の超大スペクタクル---バルダーダッシュの主演大スターは我らがアイドル、ロックフォードだ。数あるパソコンゲームの中で、これほど人々を夢中にさせるゲームがあっただろうか、これこそゲームの王様だ」。

タイトル画面からは、テンキーの4と6でステージを、3と9でレベルを選ぶことができます。ただし選択出来るステージはA/C/E/Gで、B/D/F/Hをプレイしたい場合はそれぞれ前のステージをクリアしなければなりません。

 プレイヤーは主人公である穴掘りの名人ロックフォードを操作し、制限時間内に洞窟の中にある宝石を各面ごとに決められた数以上集めて、無事出口にたどり着ければクリアとなります。細かなストーリーはありませんが、「君の行く洞穴の中の一寸先は闇。その一歩が破滅を呼ぶのか、新たなチャレンジに進むのか!? ゴウ音と共に落下する直径5メートルの岩、そのスサマジさに憶することなく岩を避け、岩を止め、ダイヤモンドをあつめるMr.ロックフォード。容赦なく迫ってくるドロドロのアメーバーを君が光り輝くダイヤモンドに変えるその色調のあざやかさ……っても筆舌につくしがたい」と、おおよその背景が書かれていました。

今見ると、ステージカラーが少々キツいですが、それにめげず宝石を集めましょう。画面がスクロールした先に待つのは、出口かそれとも通せんぼの岩か……。

 用意されたステージは、ほら穴がA-Hまでの8種類+ボーナス2つで、レベルが1-3までの3段階と、都合30となります。ステージ構成はA-B-C-D-ボーナス/E-F-G-H-ボーナスとなっていて、タイトル画面ではレベルだけでなくほら穴も選ぶことができました。もちろん、Aが一番優しいので、まずはここから始めるのが無難です。

 岩に潰されないように移動してダイヤモンドを集めていくと、各面の規定数に到達した時点で“バシッ”と音がして、どこかに出口が出現! そこへ到達すればステージクリアとなりました。ほら穴によっては規定数以上にダイヤモンドがあるので、時間の許す限り取り回ればスコアアアップに。

各ステージで定められた規定数以上の宝石を回収すると、画面がフラッシュすると共にBEEP音が鳴り出口が出現します。残り時間がなくならないうちに出口へと辿り付ければクリアです。

 ロックフォードは500点で1人増え、最大で9人までストックすることが可能です。途中、岩に閉じ込められてしまったなどにっちもさっちもいかなくなった時は、Aキーを押すと即座にやり直すことが出来ますが、ロックフォードが残っていなければゲームオーバーに……。

岩や宝石は、下または左右に支えるものがなくなると、重力の法則に従って落下していきます。それを制限時間内に予測して動き、宝石を集めなければなりません。左右に何もなければ、岩は押すことも可能です。

 道中には、ロックフォードが触れると死んでしまうファイヤーフライやバタフライ、岩で囲んで窒息させるまでは増殖しまくるアメーバーなどが登場します。それらを上手に避けて、また時にはうまく利用してダイヤモンドを集めていきます。ただし、フィールドは固定画面ではなくスクロールするため、先にどのような仕掛けが施されているかはわかりません。見える範囲でうまく岩を落として宝石を取れたとしても、実はスクロールした先の宝石が取れなくなっていた……という事態になってしまうことも。

広告では、「ニュートンの法則的ゲーム考察」というキャッチコピーで紹介されています。“アクションゲームの常識は、このバルダーダッシュで完全に覆されてしまうといっても過言ではありません”との文言からは、本作が飛び抜けた面白さであることを謳っていました。

 何度も挑戦して宝石や岩の配置を憶え、敵のアルゴリズムを身体に叩き込み、そうしてすべての宝石を回収出来た時の快感は、得も言われないものです。答えは、一通りではなくプレイヤーの数だけあるため、何度プレイしても飽きが来ないというのも満足できる部分だったといえるでしょう。

 現在、Steamで最新版の『バルダーダッシュデラックス』が配信中ですが、そこには本作『バルダーダッシュ』もプレイしやすくなったバージョンが収録されていますので、興味を持った人はダウンロード購入して遊んでみてください。

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