ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

高橋名人がMSXにもやってきた!BEE CARD版『高橋名人の冒険島』

タイトルロゴの両脇にはヘルメットを被った高橋名人の顔写真が配置され、その下にはイラストレータの松島進さんの手によるイラストが描かれたパッケージとなっていました。“当たりか。ハズレか。ジャングル・ボード”と描かれている部分には、助け出すべき恋人ティナが描かれているのですが、水着姿なのでこのような形で隠されています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、MSXにてBEEカードという媒体で1986年11月下旬に発売された『高橋名人の冒険島』を取り上げます。

広告では「主役は誰だ。高橋だ。」とのキャッチコピーで、ゲーム画面よりも名人の顔の方が大きいデザインでインパクトを与えていました。なお、BEE CARDの広告も何度か掲載されていて、そこでは「Do you know BC?」というキャッチと共に「遊びに行くときは、忘れずに! クレジット・カードサイズで、パソコン・ゲームができるBEE CARD」という文言で宣伝されていました。

1980年代のハドソンは、各種パソコンへとさまざまな作品をリリースしていましたが、もちろんMSXも例外ではありませんでした。当初はカセットテープで供給していましたが、途中でICカードでの発売も行っています。それが「BEE CARD」と呼ばれる、薄くて堅い1枚のカードでした。1985年5月に東京・晴海で開催されたマイクロコンピュータショウ'85でも展示されたそれは、名刺サイズのカードを専用のコネクタカートリッジとなる「BEE PACK」に挿し込み、それをMSX本体のカートリッジスロットへ挿入することで、ゲームがプレイ出来るというものです。

 第1弾として登場したのは、1985年7月に発売された『野球狂』でした。他機種ではテープだったりフロッピーディスクでを使用していましたが、MSX版はBEE CARDでのリリースとなっています。今回取り上げた『高橋名人の冒険島』も同じで、こちらはBEE CARD第7弾タイトルでした。発売されたのは1986年11月下旬で、9月にデビューしたファミリーコンピュータ版よりも2ヶ月遅く、同時登場というわけではありません。そんな本作のマニュアルには、以下のようなストーリーが書かれていました。

BEE CARDとBEE PACKの大きさが分かりやすいように、フロッピーディスクと並べて撮影してみました。こうすると、その小ささが分かるかと思います。実際にプレイする際には、カートリッジスロットにこのような感じで挿し込みます。

 僕らのヒーロー・高橋名人が、南洋に浮かぶ謎の冒険島で大活躍。というのも、高橋名人の心の恋人ティナが、この島に潜む悪の大王キュラにさらわれてしまったからなのだ。島の中に森あり、山あり、洞くつあり……。オマケにいろいろな敵も隠れている。さあ、この難関をのり越えて、大王を倒し、無事にティナを救い出すことができるだろうか? ガンバレ名人!!

 プレイヤーは主人公の高橋名人を操作して、ブーメランを投げて大王の手下を倒しながら、道中に落ちているタマゴを蹴飛ばすかブーメランで割り、中から出てくる道具を使って先へと進んでいきます。カーソルキーの左右で名人の左右移動を、Zキーでジャンプ、Xキーでブーメランを投げるほか、Xキーを押しながらZキーで高いジャンプができました。ちなみに、カーソルキーの上を押しながらZでジャンプしても、同様の効果を得られます。

 名人の体力はバイタリティとして画面上部に表示されていて、これは時間経過で徐々に減っていくだけでなく、障害物に当たることでも一度に4メモリが減少してしまいました。バイタリティがゼロになればミスとなり残機が1減ってしまうのですが、道中で見つけるフルーツや、タマゴの中から出てくるミルクを取れば回復させることが可能です。ただし、ガケから落ちてしまうと、どれだけバイタリティがあっても1発でアウトでした。

タイトル画面でスペースキーを押すとゲームスタートです。ラウンド1は簡単なので、ここで操作感覚をつかみたいところです。

 タマゴの中からは、乗るとスピードアップするものの後ろに進めないし止まれないスケートボード、バイタリティを増やしてくれるミルク、名人に魔法をかけて無敵にしてくれる“ちから”、10000点加算+ラウンド終了後にボーナスが倍になるフィッシュの4つが入っています。これらを上手に利用して、キュラ大王の下へと突き進んでいきます。

 道中には、さまざまなキュラ大王の手下が登場し、名人の行く手を阻みます。ほとんどの敵はブーメランで倒すことができますが、中には突然画面後ろから出てくるドッグだったり、サインカーブを描きながら飛んでくるので攻撃が当たりづらい“ガ”など、手強い相手もいるので注意したいところ。

道中に出現するタマゴを割れば、中から便利な道具が飛び出します。特に“ちから”は取れば一定時間無敵になるので、何も考えずに突っ走れるのがありがたいです。ラウンド4の後半で出現すれば、難所の足場地帯も楽々抜けられます。

 ミスをすると再びラウンドの最初からとなるのですが、一度クリアしてしまえばゲームオーバーになってタイトル画面に戻っても同一ラウンドから再開できるので、そう簡単には心が折れないのが救いどころでした。逆に、最初からプレイしたいという場合は、一度電源を切るかリセットボタンを押す必要があります。

 用意されたステージは全8ラウンドで、4ラウンド目と8ラウンド目のラストにはキュラ大王との戦いが待っていました。弱点はマニュアルに「顔にブーメランを連投してやっつけよう」と丁寧に書かれているように、バウンドしながら飛んでくる弾を避けつつ顔にブーメランを撃ち込めばクリアとなるのですが、あまり避けることばかりに集中すると時間経過でバイタリティが減っていき、時間切れになって残機を減らしてしまうことも……。

ラウンド4最後に待つのは、名人の2倍もの身長を誇るキュラ大王。ただのジャンプではブーメランが当たらないので、かなりシビアな操作が要求されます。

 シンプルなルールながらも、ジャンプの場所を間違えるとガケから落ちてしまうマップになっていたり、敵の出現パターンを覚えていないと必ずミスしてバイタリティを失ってしまう場面もあるため、なかなか歯ごたえのあるアクションゲームに仕上がっています。サクサク進めれば、コンティニューしても最初のキュラ大王に会うまでは10分程度なので、お手軽に楽しめるのも良いところでしょう。

 なお、プレイするには前述のようにBEE PACKが必須となるのですが、こちらはフリマサイトなどで手ごろな価格にて手に入れることができると思いますので、ぜひ機会を見つけて遊んでみてください。

マニュアルには「冒険島のキャラクタ-」として、登場キャラが点数付きで描かれていたのですが、肝心の“何点で名人が増えるのか?”という情報はありませんでした。調べたところ、3万点で最初のエクステンドがありました。
MSX版『高橋名人の冒険島』の動画を撮影してみました。ミスした部分は省き、ラウンド4まで上手に進めたパートを繋いで編集しています。

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