ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

コミカルタッチに仕上げられた秀逸なアドベンチャー『冒険者達 賢者の遺言』

アスキー共通の正方形のプラスチックパッケージに、マニュアルとディスクが収められています。パッケージイラストは、『エルフ・17』や『SABER CATS』などでお馴染みの漫画家・山本貴嗣さんの手によるものです。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、アスキーから1986年に発売されたアドベンチャーゲーム『冒険者達 賢者の遺言』を取り上げました。

 1986年といえば、パソコンゲームの主流はRPGに移っていたため、その他のジャンルの作品はそう多くありませんでした。そんな時代にアスキーから発売されたアドベンチャーゲームが『冒険者達 賢者の遺言』です。マニュアルには、ストーリーがマンガ形式で描かれていましたが、かいつまんで記すとこのような感じでした。

不条理のないストーリーや、言葉探しがいらないことなどが謳われていました。また、PC-8801やPC-8801mkIIにサウンドボードPC-8801-11を搭載すれば、PC-8801mkIISR以降と同じくBGMも鳴ることも記載されています。

 中国の奥地にある星吹(ほしふき)と呼ばれる町から、さらに離れた山中。そこで暮らす球(きゅう)少年は、瀕死の老人から金の鍵を手渡されます。「この鍵を、どうか城へと届けてくれ……」老人の遺言を聞いた、少年の師匠である三流風水家の駆雲先制は、この機会に彼を修行させるべく、星吹城へと向かわせました。果たして、彼の行く手に待つものは? ※なお、この作品は現実の中国とはまったく関係ありません。

通常は、“L”で始まる単語が表示されていますが、ROLL DOWNキーやカーソルキーの↑、または直接“M”を押すと“M”で始まる単語に変わり、以降ROLL DOWNキーまたはカーソルキーの↑で“O”で始まる単語……(Nで始まる単語は使用されないため)というように、ファンクションキーの内容が変化します。なお、Nキーを押しながら起動すればオープニングをスキップして、またMキーを押しながらであればマウスが使用可能になります。

 ということで、プレイヤーは金の鍵を城へと届けるべく、中国のとある謎の地域を旅することになります。この時代のアドベンチャーゲームはコマンド選択式がほとんどですが、本作はさらにユニークなシステムを採用していました。ファンクションキーにはあらかじめ動詞が登録されているのですが、ROLL UPまたはROLL DOWN(またはカーソルキーなど)を操作すると、その動詞がアルファベット順に入れ替わるようになっています。選びたい単語が出てきた所でファンクションキーから選択後、同じようにファンクションキーから名詞を入力する仕組みでした。

画面右下には、主人公が向いている方向が矢印で示されるほか、移動可能な方向は緑で表示されます。写真右の場面なら、表示されている画面は前方が西で、移動できるのは東のみ、となります。ここでテンキーの6を押すと、東へ進みます。

 このシステムの長所は、総当たりをしようとしても数が膨大すぎて、その気にならないというところでしょう。通常のコマンド選択式アドベンチャーゲームの場合は選べるコマンド数がそれほど多くないため、総当たりで何とかなるものもありますが、本作は動詞だけで60種類弱から選択可能なだけでなく名詞も多数あるので、その組み合わせは膨大に。結果として、マジメに考えた方がスムーズに進みました(笑)。

 描画方式は、時期を考えると時代遅れとも言えるライン&ペイント方式なのですが、プレイしてみると驚くほど快適です。グラフィックは1秒から2秒程度で描かれることと、東西南北をテンキーで移動できるため、サクサクと進みました。せっかくなので、実際にどれだけ早いのかを録画してみたので、その目で確かめてみてください。使用した機種はPC-8801FE2ですが、設定画面でCPUの速度を4MHz、V2モードを選択し、起動からオープニング、そして序盤のシーンを移動するところまでを記録しています。

かなり無茶苦茶な世界観で話が進みますが、ギャグやお色気シーンが各所に散りばめられているので、なかなか楽しいです。

 場面数が多いので、肝心なシーンで特定コマンドをきちんと選べば、それほど難しくなく先へと進むことができます。しかし、中には1980年代前半のアドベンチャーゲームにありがちな、移動した途端にゲームオーバーという面白場面(?)も用意されていますので、ちょっと怪しいかな? と思ったらxキーを押してファンクションキーの2を選び、セーブするのが安全でしょう。

 本作は、「予告---これが売れたらの話」と題して、マニュアルに次回作の予告が書かれていました。タイトルは『冒険者達II「やさしい世界の救い方」』。「The Adventure 2,"HOW TO SAVE THE WORLD" COMING SOON!?」とありましたが、リリースされなかったところを見ると、残念ながら……ということだったと思われます。

【冒険者達 賢者の遺言 オープニング動画】

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