ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

今でも続編が待たれる国産RPGの初期作品『ポイボス Part-I 脱出』

パッケージに描かれているのは、主人公のジョーグと長老ティタノアの孫娘リュキアです。裏には全体マップだけでなく、ゲームを進めていくうえで重要な敵種リストや武器リストなどが書かれていました。背表紙の「時代は今、ロールプレイング」のキャッチが、時代を感じさせます。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、RPGというジャンルがまだまだ物珍しかった1983年に、ZAT SOFTブランドからリリースされた作品『ポイボス』です。

雑誌広告を調べると、初めて情報が掲載されたのは1983年の月刊『I/O』7月号のようです。ZATNEWS内に「ロールプレイングゲームポイボス、7月末発売予定。乞御期待!」と書かれていて、翌号には画面写真も掲載され、同じく7月下旬発売と書かれていました。このあたりから鑑みると、『ポイボス』の発売日は1983年7月となりそうです。その後は、カラー版の広告も掲載されました。

 RPGは今でこそ当たり前になりましたが、約40年ほど前に国内で流通し始めたばかりの頃は、まだまだ海のものとも山のものともつかない謎多きジャンルでした。1983年に国内で発売されていたマイコン・パソコン雑誌を見てみると、主に取り上げられているタイトルはアクションやシミュレーションゲームで、アドベンチャーゲームが少しずつ目新しいジャンルとして紹介されるような時代です。RPGは、アドベンチャーゲームよりもさらに珍しく、この時期にRPGを謳っていた作品は光栄マイコンシステムの『クフ王の宝剣』など、数えるほどしかありませんでした。そんなタイミングに、RPGジャンルで華々しく登場したのが、大名マイコン学院から発売されたZAT SOFTブランドのソフト『ポイボス Part-I 脱出』です。そのストーリーは、以下のようになっていました。

 西部をクラーネ星、東部をプルトーン星が支配する、ケイオス星系。クラーネ星は絶大なる軍事力で暴政の限りを尽くしていたが、その体制に不満を持った西辺境星のポイボスの人々は、水面下で勢力を広げていく。しかし、ポイボスの台頭を恐れたクラーネ星のダーク大帝は大軍を送り込み、ポイボス星への全面攻撃を開始する。ところが、ポイボスを覆う強力な惑星バリアのために、侵攻を阻まれてしまう。ダーク大帝はポイボスと友好関係にあったギルガム星を巻き込み、その高い技術力を利用して最終兵器Hybrid-Photon-Laser(HPL)を開発、ポイボス星へ向けて射出する。HPLと惑星バリアが衝突した瞬間、惑星ポイボスは宇宙から消滅し、かろうじて脱出した人々も捕らえられてしまう。

 クラーネ星ジルダ=3収容所では、ポイボスの長老ティタノアが息を引き取ろうとしていた。長老は一人の若者ジョーグを呼び出し、手元の宝玉を託しながら「宇宙のどこかにいるポイボス七聖人が揃ったとき、この宝玉は美しく輝く。ポイボスを再建できる星を見つけ、この宝玉を置けば、宝玉と共に大地も明るく輝く。ジョーグよ、新たなるポイボスを目指すのだ」と、最後の言葉を伝える。ジョーグは、クラーネ星を脱出して七聖人の残り6人を見つけ出すだけでなく、第二のポイボスとなる惑星を探さなければならない。ポイボス新創世記の第一部は、ジョーグがクラーネ星を脱出するまでの物語。その手がかりは、すべてプログラムの中に隠されている。さあ、RUNするのだ……

『ポイボス』は多数の機種で発売されたため、一部のハードではCGでタイトル画面が描かれます。今回取り上げたPC-8001mkII版は残念ながら、グラフィックではなくアスキーキャラクターでのタイトル表示でした。ゲームは草原のまっただ中から始まるので、まずは仲間を見つけるべく近場の収容所へ向かいましょう。マップには表示されていませんが、プレイヤーの位置は常に画面中央になっています。

 プレイヤーは主人公のジョーグとして仲間を集めつつ、最終的にはクラーネ星からの脱出を目指します。画面構成はシンプルで、右上に5×5の部分マップ、最下段にパーティメンバーのステータスが表示されていました。ユーザーは画面左上のコマンドエリアと呼ばれる場所に表示されるコマンドをテンキーで選び、ゲームを進めていきます。とはいえ、開始直後はジョーグ一人なので戦力的に問題があるため、まずは仲間を探すべくピンク色で表示されている収容所を巡っていくことに。道中では、何者かに出会うこともあります。そこで戦うことを選択したり、または敵に襲われると戦闘シーンへ突入しました。

 『ポイボス』の戦闘シーンはRPG黎明期ならではの珍しいもので、最初に表示される戦闘配置画面で“誰が敵の攻撃を引き受け”て、“どの敵へ戦力を割くか”の割合を決めるようになっています。例えば味方パーティが3人いれば、体力のあるキャラクターが敵の攻撃の50%を受け、他の2人は25%にするといった感じでした。攻撃も同じで、敵が2人ならばパーティの戦力を50%ずつ割くか、それとも確実に倒すよう1人の相手に100%配分するか、ということを案分します。その配分が終わった後に戦いを始めると、自動的にバトルが進行しました。

パーティが1人のうちはほぼ勝てないので、敵に出会っても戦わずに逃げるしかありません。乱数によってはしつこく追いかけられ、そのままゲームオーバーになることも……そんなときは素直に最初からやり直すのも手です。

 上記にもあるように、味方パーティが一人では戦いにならないため、最初はとにかく頭数を増やすことが重要です。そのことに気づかず1人で探索しつつ敵から逃げているだけだと、“なんてしょっぱいバランスなんだ”と間違いなく感じたことでしょう。この状態で放り投げてしまった人もいるかもしれませんが、最初にスタート地点から南へと移動したところにあるジルダ=8収容所にたどり着き、出たり入ったりを繰り返していると仲間が現れます。彼女をパーティに加えることができて、ようやく本当の旅の始まりといえるかもしれません。

 マップもプレイヤーキャラが表示されているわけではないため、“自分はマップ中央部にいる”という前提で動く必要があります。移動するにも、コマンドエリアに“ナニヲシマスカ”と表示されているときに移動の1を選び、次に方向を選択という2ステップが必要でした。現代であれば、何もなければテンキーで東西南北に1歩ずつ移動ができて、敵と出会うとエンカウントメッセージが表示され自動で戦闘シーンに突入というのが自然な流れですが、この当時はまだ作法が固まっていなかったこともあり、各ソフトハウスとも様々な工夫を凝らしています。

仲間が二人以上になれば、同じ数の民間人や監察官などなら戦えるレベルに。戦闘は、戦闘配置画面で戦力配分を決めると戦況報告画面に変わり、戦うなどのコマンドを入力するとバトル開始です。敵味方それぞれの行動が終了すると再び戦況報告画面になるので、これを味方または相手が全滅するか逃げるまで繰り返します。

 プレイしてみると、マニュアルに書かれたヒントやパッケージ裏のマップ、列挙された敵リストや武器リストが手元にないと、プレイ難易度がかなり高くなるのがわかります。カセットテープだけを借りたり、ダビングして遊んでいた人などは、情報不足ですぐに挫折したのではないでしょうか(笑)。ある意味、パッケージやマニュアルがプロテクトのような役目を果たしていたのかもしれません。もっとも、一部情報は広告ページに掲載されていましたが……。また、仲間を集めるまでが大変ですが、味方パーティが二人以上になれば一気に中盤まで進むため、俄然面白くなってきます。

 本作は残念ながら、続編がリリースされないままに現在に至っていますが、有志の方がWindowsプラットフォームに移植した『ポイボス』がリリースされているとのことなので、興味を惹かれた方はぜひ調べてみてください。

敵を倒すと、武器を落とすことがあります。本作にはお金やショップという概念はなく、武器は敵が落としたものを拾うしかありません。武器は種類によって体力のあるものだったり、ESP能力の高いキャラに最適なモノになっているので、間違わずに装備する必要があります。

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