ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

ネコジャラ氏が手がけた歯ごたえあるデビュー作『不思議の森のアドベンチャー』

パッケージはこの時期としてはオーソドックスな、カセットテープケース大の外装に画面と説明が配置されているシンプルなものでした。ちなみに、A面にはMZ-700用カラー版が、B面にはMZ-80K/C/1200用のモノクロ版が保存されています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは1983年夏に発売された、アスキーキャラクターのみで画面を構成したアドベンチャーゲーム『不思議の森のアドベンチャー』です。

 1983年といえば、まさにアドベンチャーゲームブームが到来した時期で、エニックスから『ポートピア殺人事件』が、ハドソンからは『デゼニランド』、そしてシンキングラビットから『鍵穴殺人事件』が登場するなど、各ソフトハウスが創意工夫をこらしたタイトルがリリースされていました。

 そんな1983年夏にボンドソフトから発売されたのが、後に『タイムシークレット』や『タイムトンネル』で有名になるネコジャラ氏が手がけたデビュー作『不思議の森のアドベンチャー』です。対応機種はMZ-80K/C/1200/700などで、1本のテープにカラー版とモノクロ版の両方が収録されていました。今回は、MZ-700用カラー版を用いてプレイしています。

広告を調べると、『不思議の森のアドベンチャー』が初登場したのは1983年8月号でしたので、6月から7月に発売されたのではないかと思われます。ただし、月刊『ログイン』1983年11月号では新作ソフトとして発売リストに並んでいたので、発売時期としては1983年夏がしっくりきそうです。新登場時だけでなく、『タイムシークレット』や『タイムトンネル』の広告にも長らく掲載されていました。

 本作のストーリーですが、パッケージには「ミステリアスな森の中に迷い込んだあなたは、見事、使命を達成できるか?使命は、ここでお知らせ出来ません。ゲームの中で指示されます」としか書かれていません。そこでここでは、ゲーム開始直後に1歩南へと進んだ場所で出会う老人から教えてもらえるストーリーを記します。

 勇敢なる旅人よ、わしは、この村の村長じゃ。この村の北には「不思議の森」という森があってな、そこには世にも恐ろしい怪物が住んでおるのじゃ。村のものは昔からその怪物に苦しめられておるのじゃ。どうか、怪物の正体を暴いて、怪物を退治してもらいたいのじゃ。頼む

どのシーンも、ラインで描くグラフィック画面ではないにも関わらず、非常にうまく表現されています。これを下地として、MZ-700版の『タイムシークレット』や『タイムトンネル』が生まれたと言えるでしょう。

 プレイヤーは不思議の森に迷い込んだ旅人として、村長に頼まれた怪物退治を成し遂げるのが目的となります。用意されたのは41画面ですが、それぞれで4方向を向くことができるため、合計164のシーンを見ることができました。その中には、意味のある場面だけでなくダミーや純粋な背景画面も含まれていますが、それぞれの箇所で頭をひねって謎を解き、先に進むことが求められます。

コマンドは名詞→動詞と入力するほか、目的語が必要な時はもう一段階入力することになります。方向移動は一文字で済むほか、MZ-700やMZ-1500であればファンクションキーに“ヒガシ(F1)”、“ミナミ(F2)”、“ニシ(F3)”、“キタ(F4)”が登録されているので、キー一つで入力できました。

 システムは、この時代としては一般的なコマンド入力方式を採用しているのですが、英語ではなくカタカナでの入力となっていたほか、新しい場面に進むと画面には必ず“ナニヲ”と表示されているので、そこに名詞を、続けて“ドウスル”に動詞を入力することで、コマンドが実行されました。

 なお、移動の際は“ナニヲ”に対してCR、ドウスルに“ヒ(東)”、“ニ(西)”、“キ(北)”、“ミ(南)”のどれかを入力すると、自分が向いている方向と同じ時は移動し、違っているときは“入力した方向を向く”行動を起こします。

 実はこの、“入力した方向を向く”というのが『不思議の森のアドベンチャー』の特徴で、オーソドックスなアドベンチャーゲームとは違い、各地点で向いた方向によって画面に表示されるシーンが異なっていました。そのため、移動した先で東西南北すべてをチェックしないと、移動先を見落としたり大事なアイテムを見逃してしまうということも。また、これゆえにマッピングも少々面倒なことになるのですが、それをサボってしまうようでは怪物を倒すことはできません。

各所には、さまざまなアイテム(?)が落ちています。すべてを拾うと持ち物が一杯になってしまうので、厳選して集めるか、それとも使わないものは適宜置いていくか……。

 ちなみに、目的語が必要な場合は“ナニヲ”“ドウスル”の後に重ねて聞かれるので、そこで対象となる単語を入力します。例えば“ナニヲ”に“フクロウ”、“ドウスル”に“コロス”とすると、続いて“ナニデ”と聞かれるので、使用する道具の名前を打ち込む、といった具合でした(このコマンドは、ゲーム中では何も起きませんが)。

 こうして道中に登場するアイテムを回収して、それらを上手に使って難所をクリアし、最終目標である怪物退治を行うわけですが、本作を難しくしている要素の一つに、持ち物の個数制限がありました。主人公が持てるアイテムの総数は一度に8つまでのため、使用して用済みになったカギなどであれば、使った場所のその近くに置く(捨てる)といった工夫が求められます。

プレイヤーの行く手を阻む、敵や障害も現れます。巨大な蜘蛛の巣に引っかかっただけでゲームオーバーになるのは少々納得いきませんが(笑)、山猫のいる方向へ移動したら食べられたり、川に入ったら溺れてゲームオーバーなど、他にもこの時代らしい一発死が数多くあるので、危なそうな場面ではテープへのセーブを忘れずに。その際に使用するコマンドは“セーブスル”です。

 本作の対象機種となっているMZ-700やMZ-80Kなどは、いわゆるグラフィック画面を持っていません。そのため、絵はすべてアスキーキャラクターを用いて描かれているのですが、それ故に他機種ではお馴染みのライン&ペイントで表示されるのではなく、アスキーキャラクターが画面上部から下部に向かい“ズラリ”という感じで描かれました。このため、表示にかかる時間は一瞬とはいかないものの、わずかコンマ数秒といったところ。このスピーディさがあるので、あちこち移動しなければならないとしても描画で待たされる苦痛はほぼなく、非常に快適に楽しめました。

 今回撮影のためにプレイしましたが、全体的に不条理な謎は目立たず、何人か集まって頭をひねれば必ず答えが見つかるという難易度だと思われます。市場に出回った数が少ないので、オークションサイトやフリマサイトなどで見かけることは非常に稀ですが、割り切ったグラフィックや受け付ける単語の豊富さ、場面転換のスピーディさなど感心させられる部分が多いので、アドベンチャー好きであればぜひ機会を見つけてプレイしてみてください。

実際に、どのような感じでゲームが進むのかを実機を用いて撮影してみました。MZ-1500に外部データレコーダを接続して、そこからデータをロードしてプレイしているようです。コマンド入力がつたないのは、カナ入力+五十音順キーボードのためです。

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