ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

シリーズ屈指の高難易度で登場した『ウィザードリィ・シナリオ#4 ザ・リターン・オブ・ワードナ』

黒地に、タイトル以外はワードナのイラストのみが描かれた、シンプルなパッケージになっています。裏面には「警告!! これは上級者用のシナリオです!」との注意書きも記されていました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは1988年12月16日に発売された、「ウィザードリィ」シリーズの4作目に当たる作品『ウィザードリィ・シナリオ#4 ザ・リターン・オブ・ワードナ』となります。

広告では「ロールプレイングゲームのエキスパートプレイヤーを自称する諸君! これは、君達への挑戦だ!」とのキャッチコピーと共に紹介されていました。

 国内では1985年11月15日に発売されたのを皮切りに、さまざまな機種で発売され一大旋風を巻き起こしたRPG『ウィザードリィ #1 PROVING GROUNDS OF THE MAD OVERLORD』はその後、『#1』で育てたキャラクターを転送して新たな舞台で冒険する『ウィザードリィ #2 KNIGHT OF DIAMONDS』、『#1』の子孫が戦う『ウィザードリィ #3 THE LEGACY OF LLYLGAMYN』が登場しました。ここまでは、『#1』のキャラクターを転送して使用するシリーズとなっていましたが、その次に発売された『ウィザードリィ・シナリオ#4 ザ・リターン・オブ・ワードナ』では、ついに『#1』のキャラクターは必要無くなることになります。なぜならば、今作での主人公は『#1』で各プレイヤー達が散々倒してきたラスボス、ワードナになったからでした。

 『#4』のパッケージ裏には“逆転の発想による斬新なストーリー”や“緊迫感のある戦闘シーケンス”などと合わせて、“上級プレイヤーのために徹底的に練り抜かれたシナリオ”と書かれており、初心者お断りの内容となっています。そんな本作のストーリーは、同梱されているプレイヤーズガイドに数ページにわたり書かれているのですが、ここではパッケージ裏に記された簡易バージョンを掲載しましょう。

これが、今作に同梱されているセットです。プレイヤーズガイドの他、購入した機種にあわせたスターティングガイド、そして封筒などが入っていました。

 あなたは、一度は世界の征服を夢見たこともある邪悪な魔法使い、ワードナ。仇敵トレボーから手に入れた神秘のアミュレットの秘密を解き明かそうとしていたとき、乱入してきた冒険者一団によって倒されてしまう。しかし、ワードナを滅ぼすことは不可能だった。それを知った者どもは、警備の者と守衛、数知れないワナでワードナの棺を取り囲み、古の地下廃墟を脱出不可能の牢獄へと変えた。

 目覚めたワードナは、体力は生まれたばかりの赤子同然、魔法の力もほぼ失われている。この牢獄から抜け出すことはほぼ不可能に近いが、挫けるわけにはいかない。復讐を遂げ、アミュレットを奪い返さなければならないのだ。ワードナの牢獄を守るのは、400人以上のウィザードリィプレイヤーが作った冒険者達。奴らに慈悲をかけることなく倒し、目的を果たせ!

オープニングデモではカラフルなCGと共にちょっとした演出が入るので、新鮮に感じるかもしれません。ゲームスタート後、召喚サークルにたどり着く前にエンカウントしてしまったら、ほぼやり直しに……最初の2×2から出るには、隠し扉を見つけなければなりません。プレイヤー側の時は、隠し扉であっても突き進めば通れましたが、本作では確実に出現させなければ通ることは不可能です。『#1』プレイヤーであれば、隠し扉を見つける呪文を唱えられるモンスターを召喚する必要がある、と思いつけるでしょう(その思考にたどり着くのも一苦労ですが)。

 プレイヤーは“あの”ワードナとして行動し、地下10階の牢獄から抜け出して、奪われたアミュレットを取り戻すのが目的となります。各フロアには1つ以上の召喚サークルが用意されていて、ここに移動することでモンスターの召喚が可能となりました。その際、画面には呼び出せるモンスター一覧が表示されるので、プレイヤーはそこから最大で3種類までを召喚してパーティを編成します。

 また、召喚サークルへたどり着ければワードナのHPとMPの全回復、そして各階ごとに設定されたレベルへのアップも行われました。逆に、それ以外の方法ではワードナのレベルを上げることはできず、しかも現れる敵を倒しても経験値を得られないので、ある意味ではアドベンチャーゲームやパズルゲームのように感じる部分もあるかもしれません。

 ゲーム開始時には、ワードナは2×2の部屋に閉じ込められていて、HPは1でMPは0。しかも仲間もいないため、冒険者と遭遇してしまえば戦闘では確実に負けて、再び封じ込められてしまうことに……。必死の思いで最初の召喚サークルにたどり着くことができればHPは10までアップし、モンスターを召喚できるだけでなくレベル1魔法使いの呪文がすべて使えるようになります。

召喚サークルでモンスターを召喚したら、戦闘は彼らが頑張ってくれます。最初は、麻痺を使えるゾンビやKATINOを唱えてくれるガスクラウドがオススメ。とはいえ、プレイヤーはワードナの行動を選ぶ以外は何もできません。2×2の空間を抜け出すためのプリースト呪文“MILWA”を唱えてくれるかどうかは、すべてモンスターのご機嫌次第。

 ところが、いざモンスターとのパーティを組んでも、2×2の狭い空間から外に出るのが非常にハードルの高い謎解きとなっていました。製作者側もここで挫折する人が多いと思ったようで、パッケージ内には「最初の難関で、もうお先真っ暗かな?」と書かれた封筒が同梱されていて、その文言を見れば、『#1』プレイヤーならピンときたことでしょう。それでも分からなければ、封筒を開けると答えが書かれていました。

戦闘終了後は、“死体あさり”をすることができます。敵の持ち物を持ち帰れるのですが、この画面では不確定名称でも、キャンプウィンドウを開いて見れば鑑定済みになっているため楽です。最初のうちは、回復薬と攻撃魔法の巻物だけを拾っておけば問題ありません。

 しかし『#4』が難しいのは、謎解きの難易度が高いということ以外にも、いくつかあります。なかでも、召喚したモンスターは自分で操作することができないため、戦闘では祈りながら見ているしかないというのがじれったいところでした。攻撃するのか、それとも魔法を使うのか……すべては、モンスター達の気分(?)次第です。とはいえ、敵全員を麻痺や睡眠状態にしてしまえば、例えHPを0にしなくても勝利になるのが救い。序盤では、それを狙えるようなゾンビなどのモンスターを召喚するのがコツでした。

 それ以上にプレイヤーを悩ませるのが、意地悪のレベルを超えた製作者の怨念(笑)が感じられるマップです。床のほとんどが歩くとダメージを受ける設定だったり、回転床が鬼のように設置されていたり、はたまた西や東に移動しただけなのに南に落ちるフロアなど、挙げるとキリがありません。よほどの人でなければ、途中で心が折れてしまったことでしょう。

敵は、単独で現れることもあれば、パーティで襲ってくることも。特に魔法使いは魔法で一足飛びにワードナを狙ってくることもあるので、あっという間にやられてしまうことも。味方のモンスターが頑張ってくれるのを、ドキドキしながら見つめることになります。

 謎かけやマッピングは難しいものの、場数を踏んでいくと冒険者達を倒すのが快感に変わっていくのが味わえるシリーズ4作目。どんな強敵でも麻痺させてしまえばレベル1冒険者と変わらないし、KATINOで眠ってくれれば呪文を封じることができるうえに通常の倍のダメージを与えられるなど、モンスター側に立つのもなかなか悪くない……。そんな事を思いながらプレイしていると、敵にプリーストが現れてディスペルの恐怖におののいたり、冒険者側の魔法使いがMAHALITOのようなグループ攻撃魔法を唱えたばかりにモンスター1グループがあっという間に全滅するなど、嫌な恐ろしさも堪能できました。

要所には守衛が配置されていて、ワードナを再び眠らせようと襲ってきます。特にMAHALITOを使ってくる敵は厄介で、唱えられたら確実に1グループのモンスターが死んでしまいます。ワードナ自身が狙われないことを祈りながら、地味に戦うしかありません。直前でのセーブも忘れずに。このピラミッドガーディアンを倒すことができれば、9階への道が見えてきます。

 現在ではプレイするのが困難なシリーズ作品となってしまいましたが、遊んでみると実は面白い部分も多いので、コンソール機版やWindows版を差し置いてでも是非オリジナル版を体験して欲しいです。

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