ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

カセットテープで発売されたPC-9801用本格シューティング『MARS マルス 戦争をもたらすもの』

コムパックお馴染みのパッケージに、マニュアルとカセットテープが入っていました。表面はゲームのイメージイラストが、裏面にはストーリーが書かれています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、PC-9801というハードを活かした、当時としては珍しい熱いシューティングゲーム『MARS マルス 戦争をもたらすもの』(発売元コムパック)を取り上げます。

1984年3月18日発売の月刊『I/O』4月号には発売済みとして広告が掲載されているので、そこから考えると登場したのは1984年3月のようです。ただし、マニュアルには「昭和59年4月10日発行」と書かれているので、4月10日発売という可能性もあります。なお、他にテープで発売された作品としては、インセクトの復讐などがありました。

 NECから1982年10月13日に発売された16ビットパソコンPC-9801は、当時としては非常にパワフルなCPUを搭載していたこともあり、8ビットパソコンがゲームなどの趣味を楽しむ用途だったのに対して、ビジネスソフトを活用するのが主な使い道になっていました。

タイトル画面では左上にロゴが、右側にはトップ5の名前と操作方法が表示されていました。

 とはいえ、そんなパワフルなCPUを搭載しているのであれば、8ビットパソコンでは難しいシューティングゲームもスムーズに動くのではないか? という考えを持つ人も出てくるわけで、それを形にしたソフトの1本が、今回取り上げる『MARS マルス 戦争をもたらすもの』です。本作にはバックグラウンドストーリーが設定されていて、それは以下のようになっていました。

 戦争をもたらすもの--それは生命体が進化を遂げる上で必要なものなのかもしれない。しかし、そのためには多くの悲劇が繰り返され、限りなく尊い生命と永い時間が培った文明が犠牲になっている。私たちはこのことを忘れてはならない……ナビデ率いる軍団マルスは、戦略兵器を駆使した力による帝国の拡大に燃えていた。その魔の手はアドロン星にも及んでいたが、ナビデに負けない科学力を持ち、優れた兵器と軍事コンピュータが推測した軍団マルスの戦力データを保有していた。敵の心臓部を探し一気に粉砕できれば無駄な命は失わなくても済むと考えたアドロン司令部は、超高速戦闘艇ベロナを発進させる。できる限り多くの敵データを入手し生還せよという、命を賭けた任務であった。

ゲームが始まると、敵が四方八方から襲いかかってくるうえ敵弾も自機をかなり正確に狙ってくるため、油断している隙はありません。

 本作は雑誌『I/O』にて行われたプログラム・コンテストに応募された作品ですが、後にI/O別冊『PROGRAM CONTEST作品集1』に掲載され、合わせてパッケージ化して販売されたため、PC-9801対応作品にもかかわらず、メディアがテープという所が珍しい部分でしょう。

 PC-9801には初代機から外部フロッピーディスクインタフェースが用意されていたり後の本体にはFDDが内蔵されていたため、またカセットテープのソフトを利用したい場合はPC-9801用のCMTインターフェースカードをわざわざ用意しなければならないということもあって、一般的なソフトはフロッピーディスクで販売されていました。そのため、カセットテープで発売するというタイトルは、当時としてもかなり珍しい部類となっています。

時には、自機の弾を跳ね返す敵シーラが登場します。ただし、出現後に撃破できないと画面下に張り付いて自機を狙い撃ちしてくる敵に対しては、シーラからの跳ね返り弾で倒すしかありません。

 本作もカセットテープでの供給だったため、プレイするにはまずBASICプログラム、続いてマシン語(機械語)プログラムをテープからロードする必要がありました。ロード時間は数分なので長くはありませんが、PC-9801というマシンにもかかわらずカセットテープからロードするというアクションは、発売から何年経っても物珍しいと感じるものです。ロードが終了すれば、お馴染みのF5キーでゲームが始まりました。

 プレイヤーは、重力波エンジン2基を搭載した自機の超高速戦闘艇ベロナをテンキーの2、4、6、8で操作し、2連装のバルカン・ミサイルをSHIFTキーで発射、敵を倒して軍団マルスの心臓部を目指します。ストーリーに書かれている“軍団マルスの戦力データ”というのは、マニュアルに書かれた“軍団マルスの兵器分析報告”という項目のことで、ここを見ると出現する敵の行動や性格などが読み取れました。

 出現する敵をショットで破壊し、ある程度まで進行すると画面内の敵が全滅し、1エリアクリアとなります。エリアが進めば軍団マルスの新たな兵器が出現してプレイヤーの行く手を阻むので、こちらもそれまで以上のスーパーテクニックが求められるようになるのでした。

エリアが進むと、より手強い敵が出現するようになります。それらを倒して、敵心臓部へとたどり着くことはできるでしょうか。

 自機のショットは3連射まで可能ですが、どんなにキーを早く押しても、一定以上のスピードでは弾が出ないため、ある程度は肩の力を抜いて叩く必要があります。それよりは、相手の攻撃を的確に避けるテンキー操作が求められるのですが、敵弾は思った以上に正確に自機を狙ってくるため、気つけば被弾していたなんてことも……。

 本作の難易度を上昇させている更なる要素が、自機のショットを跳ね返してくる敵・六角型回転板シーラです。ゲームを通じて頻繁に出現してくるのですが、シーラにショットを当てると弾が跳ね返るため、静止していると被弾してしまいミスになります。これを避けるには常に動き続けるか、余計なショットを撃たないようにするかしかないわけですが、そのさじ加減が本作をより難しくしていました。

マニュアルに掲載されている敵の種類はこれだけですが、ここには載っていない強敵が出現する可能性も!?

 1984年の作品としては完成度が高く、キャラクターの移動や画面スクロールなども非常にスムーズで、さすが16ビット機のシューティングゲームと唸ったものです。とはいえパワーアップ要素がないため、展開が少々地味に感じてしまうのが惜しいところではありました。プレイする機会はなかなかないかもしれませんが、シューティングゲームの腕に覚えのある人であれば、ぜひとも機会を見つけてチャレンジしてみてください。

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