ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

ハドソンの世紀末RPG + ちょっとアクション『ラミア・1999』

宇宙人の手によって破壊された新宿副都心の高層ビルを前に、武器を持った主人公ジョーの姿が描かれたイラストが採用されたパッケージとなっています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げるのは、1986年12月にハドソンから発売されたRPG『ラミア・1999』です。

広告では「1999年7月×日。東京。歴史が狂った。」とのキャッチコピーのもと、パッケージと同じイラストで宣伝されていました。ユニークなキャンペーンとして、「1999」をテーマにした作文募集も行われていました。ちなみに、最優秀作品を受賞した1名にはレーザーディスク(プレーヤーだと思われます)が贈られるとありました。

 1980年前後に大量のソフトを作り販売していたハドソンですが、徐々に“量より質”への転換を進めて少数精鋭を目指します。そして1983年に発売された『デゼニランド』は、10万本を超える大ヒットを記録。翌年1984年にリリースした『サラダの国のトマト姫』も、パソコン各機種に移植されてこれまたヒットを飛ばすこととなりました。ところが、次のタイトルとしてアナウンスされていた『デゼニワールド』の発売が遅れてしまい、このあたりからパソコンゲーム界隈ではあまりハドソンの名前を聞かなくなってしまいます。

 この時期からは、パソコン業界よりもコンソール機業界でめざましい活躍を見せていくハドソンですが、『デゼニワールド』以降も何本かの作品を登場させていました。そのうちの1本となるのが、1986年12月13日に発売されたRPG『ラミア・1999』です。広告では「ロールプレイングゲームの歴史が変わる。12月13日、「ラミア」新登場。」として、既存のRPGとは大きく違うとアピールしていました。そのストーリーは、以下のようになっています。

開始直後に武器防具を装備することが、まず最初に行うべき作業です。これに気づかないと、序盤の敵にすら勝てず毎回ゲームオーバーに。

 1999年7月に突然、東京上空に現れた巨大UFOは、他の太陽系より友好・科学技術の交流を目的にやって来たことを伝えた。一時は目的を果たしているかのように見えたが、その後に母艦から飛び立った中型UFOは札幌、仙台、佐世保など各地を攻撃。東京上空のUFOもまた、攻撃を開始する。日本政府も必死に反撃したが宇宙人サイドの攻撃は強力で、7日後に降伏。東京は、池袋サンシャインビル、新宿副都心、新都庁など少数の高層ビル(後に宇宙人の地区司令部となる)を残し、がれきの山と化してしまう。時を同じくして他の主要国も同様の状況を迎え、西暦2002年には世界はついに宇宙人の支配下におかれる。

 同年3月、東京に1人の青年ジョーが現れる。精神物理学を学びサイキックパワーの効率的解放方法についての研究をする彼は、1999年に宇宙人の攻撃で両親と妹を失っていた。さらには彼の恩師と、その娘で恋人ラミアの消息が不明になったため、各地のレジスタンスの力を借りて宇宙人との戦いを決意する。ここに、ジョーと宇宙人との戦いが始まった。その戦いにピリオドはあるのか? そのカギを握るのは、あなたである……。

フィールドは、このような感じで描かれていきます。瞬間表示ではないため描画速度は若干気になりますが、建物裏の通路まで見えるのが便利なところ。

 プレイヤーは主人公のジョーを操作し、宇宙人との戦いに挑むこととなります。マップ上をテンキーの2、4、6、8で移動しつつ、ドアの前に立って8を押せば建物の中に入れるほか、ステータスを確認したいときはS、アイテムなどを使用する場合はU、持ち物確認はI、そしてコンピュータの一種となるファルコンを使う場合はFを、それぞれ入力します。

 本作のユニークな部分として、独特の画面表示方法がありました。メイン画面は奥の背景と主要道路→建物→街路樹や柵などの飾り、という順番で描かれるのですが、その様がまるでアニメのセル画を1枚ずつ重ね合わせていくような手法に似ているという、セル画方式という技法を採用していました。実際にプレイすると、確かにセル画を重ね合わせるようにして画面が描画されていくので、建物の向こう側に通路があれば画像処理中に見えるという、マッピングする人にとってはありがたい仕様だったといえます。

フィールドマップは、通路で北を向いている時と南を見ているときとでは、画面に描画されるものが変わります。北向き時と南を向いた時では画面が反転するので、マッピングする際には紙を180度ひっくり返す必要がありました。試しに、1cm×1cmのマス目を1ブロックとして、1画面を横5ブロック×縦2ブロックでマッピングしてみました。1枚目の写真はスタート地点から左に1ブロック移動したところで、それを書き込んだのが2枚目の方眼紙写真です。左側の5ブロック×2ブロック分が、写真の位置に対応しています。主人公を画面下に移動させると、3枚目の写真の場面に。ここで方眼紙を反転させて書き込むと、写真4枚目のようになる、という感じでした。

 そのフィールド画面ですが、実はマップが非常に理解しづらいという難点がありました。通常のRPGなどであれば、通路を上に進んで次の画面に切り替わったとしても、再び下に移動すれば元いた通路の場面に戻る、というのが一般的かと思います。しかし『ラミア・1999』の場合は、通路から見える景色が北を向いている時と南を向いている時では、違うグラフィックが描かれるという仕組みになっていました。

 言葉で説明するとかなり分かりづらいのですが、実際にプレイしても慣れるまでは簡単に迷子になるほど。一方向からのマップを書いていき、反対を向いたときは紙をくるりと180度回転させて見る、ということに気がつければ、ある程度は迷わず進めるようになるのですが……それでも、マッピングが必須なのは変わりません。

フィールド上には敵がうろついていますので、戦いたくなければ通路の上下移動をうまく使って回避することが可能でした。もちろん、新たな場所へ移動すれば敵も手強くなります。

 戦闘システムですが、フィールドには敵がうろうろしていて、それに触れると戦闘シーンに切り替わるというシンボルエンカウント方式を採用しています。ただし、プレイヤーから接触しなければ敵から戦闘を仕掛けてくることはありませんでした。

 敵とエンカウントすると戦闘開始となり画面中央にウィンドウがオープン、サイドビューでのバトルが繰り広げられます。プレイヤー側はXでジャンプ、Zで攻撃の他、4、6で左右移動、2でしゃがむことができました。ただし、それほどアクション要素は要求されないので、アクションゲームが苦手という人でも敵に突撃してZキーを連打すれば何とか勝てます。

戦闘シーンはアクション風味になっていますが、装備さえ整っていれば接敵して攻撃ボタンを叩きまくれば勝てます。遠距離攻撃をゲットすれば、威力は弱いものの離れた場所から撃つのが安全。ただし、そればかりを繰り返すと防具の熟練度が上がらないというデメリットも。

 が、ゲーム開始直後はどんな戦い方をしても即ゲームオーバーに。後から気づいたのですが、主人公は装備品を持っているだけで身につけていないため、始まったらメニューを開いて防具を装備する必要がありました。これさえ行えば楽勝なのですが、敵を倒してももらえるのは経験値だけで、お金は入手できません。所持金を増やすには、敵を倒して手に入れたアイテムを武器屋で売り払う必要がありました。なお、減ったHPは食料を持っていれば自動的に回復するので、食べ物には常に気を配っておきましょう。

 本作もう一つの特徴としては、ファルコムの名作RPG『ザナドゥ』のように武器や防具には熟練度が設定されていて、使い込むほどに威力を発揮してくれるようになる点です。そのため、威力の強い新しい武器を調達したとしても、即座に大ダメージを与えられるようになるわけではないのが歯がゆいところ。使い慣れた武器なら敵を一撃で倒せていたのに、新しい武器では何度もダメージを与えないとダメというジレンマがあるのも、本作の面白いところでした。

廃墟となった街には、わずかに残った人類相手に商売をしている商魂逞しいキャラクターたちがいます。装備品は使い込むほどに壊れていくため、新調できないうちはリペア屋で直して使うことになります。他にも、情報を提供する怪しい人物と出会うことも。

 さまざまな工夫が凝らされている『ラミア・1999』でしたが、イメージ広告の印象が強くて肝心の中身が今ひとつ分からなかったことや、アドベンチャーゲーム全盛時代とは違い“ハドソンだから買う”という雰囲気も薄くなったためか、現在見かける頻度から考えるとあまり出回らなかったようです。ディスクアクセスで少々もたつく感じもありますが、分かると楽しめるタイトルではありますので、RPG好きであれば機会を見つけてプレイしてみてください。

マニュアルの最終ページには、本作を手がけたスタッフのクレジットが掲載されていました。

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